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人は神の子であり光注がれ育ちゆく。

 


 成長したフラフィーは二本足で立っている。

 姿はあまり変わっていないが、身長は少し高くなったその立ち姿はどこか人間のようだった。


「立った?」


「立ちましたね」


 俺の言葉にトモが返す。


「きゅい?」


 クリっとした目が特徴のフラフィーは立ち尽くした俺たちを見て首をかしげた。


「せ、センパイ」


「どうかしたか?」


「や……」


「や?」


「ヤバくないですか!? めっちゃ可愛いんですけど!」


 トモがフラフィーに再度抱きついた。


「きゅいー」


 フラフィーが苦しそうな声を出す。


「ああもう鳴き声もめっちゃ可愛いじゃないですか!」


「よ、良かったな」


 完全に人形のように扱われてるフラフィーに同情する。


「センパイセンパイ。これってまだまだあげられるんですか?」


「あ、ああ。あと70ポイントある」


「なら全部この子に振っちゃいましょう!」


「え? 全部?」


「絶対、絶対、ぜーったいに可愛くなりますから!」


「お、おう」


 グイッと顔を近づけて力説するトモに気圧されて、つい頷いてしまう。


「ありがとうございますセンパイっ!」


 俺が頷いたのを見て、トモが抱きついてきた。


「うおっ! は、離れろ!」


「へへー。良いじゃないですかちょっとくらい。嬉しさのお裾分けですよ」


 鼻元をくすぐる彼女の黒髪からいい匂いがする。俺の胸板には彼女の柔らかい感触も当たって理性がーーっ!


「ほらあげるぞ!!」


 俺は精一杯の理性を振り絞ってトモを引き剥がした。


 あ、危ない。


 もう後先考えずに押し倒しそうになってしまった。


「早くしてくださいセンパイ!」


 トモはトモですでに切り替えてポイントを振り割るのを今か今かと待ちわびていた。


 なんだか意識してる俺が馬鹿みたいだ。


 でもだからってあんなの押し当てられたら健全な男子はまともに思考できなくなる。


 俺は正常だ。


 自己正当化したところでフラフィーのステータスを開く。




 名前:フラフィー

 種族:ラピッドラビットセリオン

 属性:水、光

 所属:ケイ

 称号:召喚獣


 戦闘:48

 支配:0


 総合:141




 種族にセリオンが足された。

 戦闘力はあまり上がっていない。


 属性に光が追加されている。

 白は光属性ということだ。


 つまり人間は光属性?


 対極な気がするけど……。


「センパイ?」


 ステータスを見ていたらトモが不思議そうにしていた。


「あ、ごめん。ステータス見てた」


「何かあったんですか?」


「いや、特には。じゃあ上げるぞ」


 適当に誤魔化してから俺はフラフィーにポイントを振り割った。


 11から19は相変わらず変化なし。

 ヒートと同じく20で再びフラフィーの身体が光り出した。


「おー!」


 トモが楽器屋に置かれた楽器を欲しがる子供のような顔で歓声を上げた。


「じゅう……じん?」


 光が収まりフラフィーの姿が露わになると、俺はそう言うしかなかった。


 二本足で立っていたフラフィーは人間に少しだけ近づいた。身長も幼稚園児並みにある。


「ふぁぁぁ! めっちゃ可愛いです! こんなペット欲しかったです!」


 全身白い毛に包まれたウサギの姿に変わりはないが、体格が人のようになっている。


 ケモ度70%って感じ。


「きゅい?」


 抱きつかれたフラフィーが不思議そうに赤い鼻を動かす。


「めっちゃヤバいですって!」


 トモ、大興奮である。


「そ、そうだな」


 俺は新しい人形を得た子供のようなトモから目をそらしてステータスを開いた。




 名前:フラフィー

 種族:ラピッドラビットセレマ

 属性:水、光

 所属:ケイ

 称号:召喚獣


 戦闘:63

 支配:0


 総合:151




 戦闘力がかなり上がってるな。

 大器晩成型なのか?

 それならさらに上げればもっと高く上がるかもしれない。


 セレマの意味はわからん。


 よし、もっと振るか。


「トモ、もう一回振るぞ」


「まだ可愛くなるんですか!?」


「ああ。多分あと何回かは」


 このあと30ポイントで成長するか、40ポイントになるかはわからないけど、どちらにせよ80ポイントもあるんだ。


 少なくとも二回は成長できる。


「離れました!」


 嬉しそうにフラフィーから離れたトモを確認したあと、さらにポイントを割り振った。


 21ポイントから始め1ポイントずつステータスを見ていく。

 30ポイントまで振っても変化なし。


 40ポイントかな?


 そう思いながら40ポイントまで振ると、フラフィーの身体が光り出した。


 成長のポイントは倍々で増えるらしい。

 次はおそらく80ポイントか。


 そんなことを考えていると光が収まり、ケモ度50%ほどのフラフィーがそこには立っていた。


 ここまで来ると獣というよりも人と言っても良さそうなほどだ。


 爪のあった前足後ろ足は人の手の形で爪も伸びていない。

 全身雪色の毛むくじゃらなのは変わらないけど、胸やお尻が女の子のように主張している。


 メスだったのか。


「ケモ娘! センパイ! ケモ娘ですよ!」


「だな。ケモ娘だ」


 興奮しながらフラフィーの体をジロジロと観察するトモ。

 フラフィーは不思議そうに自分の体を動かした後、俺を見た。


「ますたー?」


 小首を傾げてそう言ったのは俺でもトモでもない。


「せ、せ、せ、せせせセンパイっ」


「あ、ああ」


 口を開けたままフラフィーを指差すトモ。


「ますたー」


 幼い声を出してフラフィーが抱きついてきた。


「喋ってる……」


 光属性は人化の属性なのか。


 まさか喋るとは。


「センパイ……」


「ど、どうかしたか?」


 トモが突然真剣な声を出す。

 あまりの真剣さについ真面目に答えてしまった。


「自分、一人っ子じゃないですか」


「いや知らんけど」


「一人っ子なんです」


「そうなんですか」


「ずっと憧れだったんですよ」


「な、なにに?」


「妹に決まってるじゃないですか!!」


 俺に抱きついていたフラフィーをトモが抱きあげた。


「めっちゃやばいですこれ可愛すぎますって!」


 トモちゃん、大興奮のご様子。


「センパイ! まだあげられるんですか!?」


「あ、ああ。あと1回できるけど……」


 これ、次の80ポイントまでいくと人間度の方が上回るんじゃないか?


 20から30%のケモ度か?


「やりましょう!」


 フラフィーを抱きながらグイッと親指を立てて来るトモ。


「いいのか?」


「なにがですか?」


 質問を質問で返された。


「次に成長したら多分ケモくないと思うぞ?」


「それがいいんじゃないですか!」


「お、おおう」


 笑顔で言い切ったトモに返す言葉が思い浮かばない。


「それにですね、モフモフケモノが欲しいならばセンパイが追加でラピッドラビットを出してくれればいいと思うんですよ」


「まあ……確かに……」


 戦闘力的にはグレイウルフやスライムよりも強いし。

 実際に戦わせたことがないから、どのくらい強いのかわからないけど。


「やりましょう! センパイ!」


 フラフィーを抱きかかえながらグイッと迫って来るトモ。


 俺の人生に女子高生から迫られる時が来るなんて思ってもみなかった。


 こんな攻められ方は望んでなかったけど。

 攻められるならもっとエッチな感じのがいいですってなに言わせるんだ。


 閑話休題。


「分かった、分かった。あげるよ。残りのポイント全部振り割ってみる」


 俺は割り振ることにした。


 俺自身フラフィーのこの先を見たい気持ちもあったが、決め手はステータスだ。




 名前:フラフィー

 種族:ラピッドラビットスロープ

 属性:水、光

 所属:ケイ

 称号:召喚獣


 戦闘:93

 支配:0


 総合:205




 戦闘力が格段と上がったのだ。


 この上がり方なら次は150を超えるかもしれない。

 そう思ったからあげることにした。


「よし、いくぞ」


「はい! 準備完璧です!」


 すでにフラフィーを下ろしているトモが敬礼をする。


 俺はボタンを80ポイントまで振った。

 案の定79ポイントまではなにも起こらず、80でフラフィーの身体が光り始める。


 光に包まれた体は少しずつ大きくなり、小学生低学年ほどの体格で魔力が消え始めた。


「マスター?」


 先ほどよりも滑舌のいい女の子の声。

 高めの動物のような声。って元々兎だから当たり前か。


「フラフィーちゃん……」


 トモがワナワナと両手を前に出した。


 うん、彼女がなにを言いたいのかだいたいわかる。


「服着ようよ!!」


 フラフィーはほとんど人間の女の子だった。しかし元が動物だけに洋服なんて着ていない。


 胸は成長期になったばかりの膨らみ始め、体にメリハリはあまりなく未だ幼さを残すロリ体系。

 肌は体毛を思い出させるほどに透き通った白。雪色の髪は肩まである。

 頭からは彼女の象徴とも言える兎耳が伸びて、お尻には丸い兎尻尾。

 鼻と頬は兎の頃の名残か少し赤い。

 長いヒゲが口を動かすたびに揺れている。

 手先と脚半分ほどは人の形をしているが兎の体毛に覆われていた。


 それでもほとんど人間だ。


 そんなフラフィーは裸だった。


「センパイはこっち見ないでください!」


 なんで俺が叩かれないといけないんだ……。

 フラフィーの裸を見てただけじゃないか。



人を殺せば獣娘が……。つまり、分かるな?

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