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白い獣は立ち上がる。

 


「てか、忘れてないか?」


 俺は一旦精神を落ち着けてから口を開いた。

 流石になんでもしますからと言われてセクハラを強要するほど精神が強いわけじゃない。


 そんなんだったら年齢イコール彼女いない歴なんて更新してないわ!


「何をですか?」


 不思議そうに首をひねったトモ。


「召喚した兎が戦って殺されることもあるんだぞ?」


「うっ」


 トモの勢いが収まる。


「俺の最初に召喚したギギだって盗賊のボスに殺されたんだ」


「そうなんですか……」


 しょんぼりと落ち込むトモ。


「流石に殺されるのを見るのは嫌ですね……」


 なんか予想以上に落ち込んでしまった。


「うぐっ。兎……兎ちゃん……」


「ああもうそんな顔するなよ! 涙ぐむな! 分かった! 分かったから! 交換するよ! 兎にすればいいんだろ!」


 涙ぐむのは卑怯だろ!


 もうウサギでもなんでもいいよ!

 鳥にしろ蜥蜴にしろハズレの可能性もあるし……。

 それならハズレた場合でもちゃんと役割がある兎でもいいだろう。


 いいのか?


 もう深く考えるのはよそう。


 トモは今日いい仕事したしな。

 こいつのおかげで戦力が倍くらいになった。

 1回くらいいうことを聞いてやってもいいだろう。


「ほ、ほんとですか!?」


 トモがパァーっと音が鳴りそうな程に明るい笑顔になる。


「ほら、これでいいんだろ!」


 俺は瞬足兎の購入画面を見せる。


「はい! センパイは最高です! 愛してます!」


「そんな安い愛はいらんっ」


 100ゴールドかよ、お前の愛。


 俺はスマホを操作し瞬足兎を購入した。


 《スキル【瞬足兎召喚】を取得しました》


 スマホの画面に表示されたメニューを消し、アイテムボックスから魔石を取り出す。


 ちなみに俺が水浴びをしている間にズズたちは3匹のゴブリンを倒している。

 なんだか効率が上がっていた。

 良いことだ。


「それなんですか?」


 俺が手に持った魔石が珍しいのかトモが問いかけてきた。


「魔石だよ。召喚するのにこいつを使わないといけないんだ」


「へー。ゲームみたいですね」


「だな。今更だけど」


 スマホの画面からすでにソシャゲみたいだったしな。


「じゃあ召喚するぞ」


 俺はそう言って魔石を握った右手を前に出した。


「可愛いやつ! できれば白色がいいです!」


 選べねーよ。なんて思いながらスキル名を唱える。


「瞬足兎召喚」


 握った魔石が消え、魔法陣が現れた。


「おおおー!」


 魔法陣から輝く魔力に彩られながら現れるシルエットにトモが喜びの声を上げる。


 光はだんだんと収まり、シルエットが完全な魔物の姿になった。


「これが……瞬足兎ですか……」


 目の前に現れたのは全長50センチほどの兎。


 でかい。


 予想していたサイズの倍くらいある。


 全身真っ白な雪色で長い両耳がまっすぐ伸びている。


「ちょーもふもふじゃないですか!」


 トモが我慢しきれないとばかりに抱きついた。


 確かにもふいな。

 抱きついたトモの体が毛に沈んでる。


 最高の抱き心地だろう。


「名前はそうだなぁ……」


 俺が呟くと、


「フラフィーちゃんです!」


「ふ、フラフィー?」


「だってめっちゃもふもふじゃないですか!」


 だっての意味がわからない。

 もふもふだとフラフィーになるのか?


「ま、うん。それでいいや」


 俺が考えるとロクなものにならないしな。

 自覚してるよこの野郎。


 俺はなぜか心にダメージを受けながらステータスを確認した。




 名前:フラフィー

 種族:ラピッドラビット

 属性:水

 所属:ケイ

 称号:召喚獣


 戦闘:41

 支配:0


 総合:129




 戦闘能力はあまり高くないが総合値が高いな。


 高くないと言ってもヒートの次に強いわけで、100ゴールドモンスターなだけあるのか。


「よし、お楽しみだ。ちょっとフラフィーから離れてくれないか」


「えー」


 フラフィーに抱きついて離れようとしないトモ。


「試したいことがあるんだ」


「なにするんですか?」


「ポイントを割り振るんだよ」


 俺はニヤッと笑ってそう言った。


「ポイントですか?」


「ああ。魔物を倒すともらえるんだ。それでスキルを強化できる。多分お前にもあると思うぞ」


「知らなかったです」


「だろうな」


 こいつ、魔物を倒したことないって言ってたし。

 そもそもスキル取得したのがついさっきだ。


「それをやるとどうなるんですか?」


「成長する」


「お、大きくなるんですか!?」


「場合によるかな? ヒートの場合はあまり大きさは変わらなかったな」


 少しだけ大きいくらいだ。


「ヒートってあの熱いスライムさんのことですか?」


「そうだ。最初は他のスライムと同じだったんだが、赤のポイントを振り割ったらああなった」


「へー」


 スライムのことはそれほど興味ないらしい。


「つまり私のフラフィーちゃんが大きくなってさらにもふもふになるわけですね?」


「そういうことだな」


「あ、赤くなるのは嫌です! せめてピンクとかにしてください!」


「今回振り分けるのは白ポイントだからたぶん心配ないと思うぞ」


 その言葉を聞くとトモがフラフィーから離れた。それを見て、スマホを操作する。


 まずは白を10ポイント。


 さて……どうなるか。


 ヒートの時と同じようにポイントを振ると光に包まれたフラフィー。


 光り続けるフラフィーは体がだんだんと大きく……ならずに、前足を地面から離した。


「立った! フラフィーちゃんが立ちましたよ!」


 そう、立ち上がったのである。



感がいい方はもう気づいてますかね……?

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