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上目遣いで「なんでもします」なんて言われたら。

 


「それで……これからのことなんだけど」


 水浴びを終えてさっぱりした俺はボスの部屋で早めの昼食を食べながら口を開いた。


「ほれはられふか?」


「だから飲み込んでからしゃべろ」


「ふぁーい」


 パンを頬張ったまま返事をするトモ。ダメだ、言葉が通じてない気がする。


 それにしても一日三食も食べれるってのは良いな。人として大事なことなのだと実感する。

 日本で暮らしていた時は腹が減ったら何かを食べて、空腹に耐えるなんて機会はあまりないからな。


「うん、まあ、話を戻すけどさ、これから俺は南東に行こうと思ってる」


「あの盗賊が言ってた街ですね。アルゼッドって街でしたっけ?」


「聞いてたのか」


「そりゃあもう。センパイが赦さねぇよって殴った時はそれはもう惚れそうになりました」


「やめてくれっ」


 昨夜のことを思い出してなんだか恥ずかしくなる。


「なんですかー? 私に惚れられそうになったのが嬉しいんですかー?」


「ちげーよっ! 人に決め台詞を言われたのが恥ずかしいんだよ!」


 なにを言っているんだこいつは。


「あいつの言うことを信じるなら南東に向かうのが一番早く街に着くルートらしいからな」


 俺は無理やり話を戻す。

 この手の話で勝ち目がないのは先ほど学んだ。


「悪くないと思いますよ」


「一応だが、北のほうに渓谷があって、盗賊たちはそこへいく馬車を襲ってたんだ」


「それがどうかしたんですか?」


「いや、馬車が行くってことはそっちにも街があるってことだろ」


「あーなるほど」


「なるほどじゃねぇよ」


 そのくらい気づけよ。


「でも下手したら何日も歩かないといけないんですよね?」


「何週間かもしれないぞ」


「なら無難に南東行きましょう」


「そうだな」


 俺は頷いてから最後の一口のパンを齧る。

 うーん、パサパサしててスープが欲しくなるな。

 あんな不味いスープでも恋しくなることがあるなんて。パンが不味いからか?


「そうだ、トモ」


 手を合わせて食べ終わったことを示してから名前を呼んだ。


「なんですか?」


 小さな笑みを作りながら小首を傾げるトモ。


「鳥と蜥蜴ならどっちがいい?」


「鳥です!」


 トモが即答した。


「即答だな……。なんで鳥なんだ?」


「私……爬虫類系苦手なんですよ……。あの鱗がダメで……目玉とかクリクリしてるじゃないですかぁ」


「あーなるほど」


 俺からしてみればあの眼がクリっとしてるのが可愛いんだけどな。


「だから鳥です!」


 フンスっとトモが鼻息荒く力説する。


「うーん、鳥かー。じゃあ鳥にするかなー」


「あっ! もしかして次のスキルですか?」


「そうそう」


「取れるスキルが鳥か蜥蜴なんですか?」


「いや、他にも色々あるけど気になったのがその二つなんだ」


「いいですねーセンパイは。選べるだけ羨ましいですよ」


「トモも見てみるか?」


 そう言ってスマホを出す。


「いいんですか!?」


 凄い食いついた。

 俺は見られても気にしないけど、他人のスマホを見せてって言うの案外ハードル高かったりするんだよな。

 実はずっと見たかったのかも。


「見るだけだぞ。勝手に取得するなよ」


 俺は釘を刺してスマホを渡した。


「分かってますってー」


 調子良さげにトモはスマホを受け取ってスキルを見始めた。


「うわー、本当にたくさんありますね」


「迷うだろ?」


「確かに迷いますね。うわっ! 一番下のドラゴンなんて一万ゴールドですよ!」


「らしいな」


「一万ゴールドもあればショップで買いたい放題じゃないですか!」


 そっちかよ。


「あー、猫ちゃんとかいいですねー」


 スマホの画面を見ながらあれこれ呟くトモ。


「あっ! センパイこれがいいですよ! これ!」


 そんなトモが突然スマホをこちらにかざして来た。


「……瞬足兎?」


 トモが見つけたのは100ゴールドの魔物。


「そう! 兎ですよ! 兎! 自分、日本にいる時も飼ってたんですよ! 名前はデコ助っていうんですけどね、めっちゃ可愛いんです!」


 机越しにぐっと近寄ってきたトモが言葉をまくし立てる。


「兎……兎かぁ……」


 あまり強そうではない。


 どうなんだ、兎って。


 年中発情期ってことしか知らない。

 確かに警戒能力は高そう。

 瞬足っていうくらいだから速そうだが、それってグレイウルフでいいよね。


「絶対この子にしたほうがいいですよ! ねっ! ねっ!」


「近い近い!」


「うひゃ!」


 俺が声に出すとなぜか近づいてきた本人であるトモが驚いていた。


「す、すみませんセンパイ」


「いや……気にしてないけどさ」


「でも兎が欲しいんですよぉ〜」


「そんなにか……」


 机にダラっと倒れるトモに苦笑する。


「私、動物の中では兎が一番好きなんです。歩く姿とかめっちゃ可愛いんですよ。耳とかもいいですし」


「ふーん」


 歩く姿とかはどうでもいい。


「お願いします! なんでもしますからっ!」


「っ!」


 なんでも……だとっ!?



本日三話目です! これからもブックマーク登録待ってます! 貰えるとめっちゃうれしいです。

実は前の話しで第一章で区切る予定でしたが予定変更。あと数話ほど第一章が続きます。

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