届かぬ声は聞こえない。
盗賊アジト内のボスの部屋で俺は現在のステータスを確かめた。
名前:ケイ
種族:人間
職業:召喚師
所属:
加護:
字名:一夜の盗賊殺し
称号:転生者
戦闘:1403
資金:111ゴールド
支配:234
総合:1838
戦闘力がぐっとあがっている。
絆刻印の上昇値2かけるの19匹で戦闘力が38も上がる。
それの19匹分だから722も戦闘力に加算されている計算だ。
それと変な字名が付いているな。
確かに一夜で殺したけど、物騒だ。
これじゃあ人殺しみたいじゃないか。
いや、人殺しだったな……。
ただあまり罪の意識はない。
やらなきゃやられてた。
それに彼奴らは人というよりも平和を脅かす魔物といったほうが俺にとっては正しい。
しかし、こんなに戦闘力が上がったのにランキングが30位よりも上に行かなかった。
トップのアキラさんとか4000超えてますよ。閃光の劔なんてパーティー組んでるみたいだし。
パーティーメンバーも戦闘力3000越えのトップランカー。恵まれすぎだろ。
「はぁ……」
俺はため息をつく。
でも初日ほど落ち込んではいない。
俺は強くなれると知っているから。
ステータスを閉じてからショップを開いた。
現在の所持金は111ゴールド。
今回は奮発して100ゴールドの召喚スキルを取ろうと思ってる。
魔石は現在ズズとテテとヒートがゴブリンを探しているので、狩れたのならそれを。狩れなかったらポイントで交換するつもりだ。
なぜ100ゴールド級の召喚スキルを取るのかというと、どのくらいのステータスなのかを知りたかったのもあるし、上空からの偵察などをできる魔物が欲しいと思ったから。
魔石を10個出してグレイウルフを増やしてみるのも考えたが、白ポイントを使う先に基礎能力が高い魔物を出そうと結論に至った。
現在の候補はいくつかある。
まずは黒狼。
ただこいつは前にも言ったけどグレイウルフと役割が被ってしまうのだ。
上位互換が欲しい気もするけど、茶色ポイントを振り割れば黒狼になる可能性を考えるとあまり気は進まない。強くしたいだけならば茶色に限らず他の色を割り振ってもいいのだ。
次に血鳥。
名前に血がついてるから赤い鳥なのか、血に関連する能力を持っているのかはわからないが、空を飛べる魔物が仲間になるのは心強いと思う。
他に空を飛べる系の魔物は睡眠梟、肉刺蝙蝠。
梟は夜しか行動できなさそうで却下。隠密性はたかそうなんだけどね。
蝙蝠は肉刺ってのがどんなのかいまいちピンとこないからダメ。
あとは闇蜥蜴。
出てくるのは十中八九で黒い蜥蜴だ。闇というくらいなのだから隠密性が高く移動性能は高そう。
ただスライムと仕事が被ってしまいそうで怖いのだ。
蜥蜴なだけに主な攻撃手段は噛みつきや引っ掻きになるだろうし、スライムのように敵に闇討ちしたとして、返り討ちにあいそう。
毒なんかを持っている可能性もあるが、今取る必要はあまりない。
ゴーレム系やアンデット系も居たけど却下。どうせなら可愛いのがいい。
純粋なパワー系モンスターとかも居たらいいけど、熊や虎は300ポイント以上はする。
100ポイントで火猫ってのがいるけどポイントで虎に進化したりしないかな。
うーん、決まらない。
「ふぁー」
俺は背もたれに深く背を預けて力を抜く。
別に急いで新しい子を増やさなくてもいいかなぁ。
そんなことを思い始めた時に部屋の扉が開いた。
「センパーイ。水浴び終わりました!」
「結構長かったな……」
「そりゃそうですよ! 1週間ですよ! 1週間! その間ずぅーーーっとお風呂も体も拭いてなかたってなに言わせるんですか!」
「お前が勝手に言ったんだろ!」
黒髪ショートヘアーを揺らして勝手に怒るトモに言い返す。
俺がボスの部屋で1人寂しくステータスを見ていたのは、外の井戸でトモが水浴びをしていたからだ。ついでに洗濯物も。
トモは制服姿ではなく外套を被っている。つまり今あの下は裸?
裸コートとは興味深い。
「タオル、どもっす」
「ああ。じゃあ俺も入ってくるわ」
ドアの前から歩いてきた裸コートのトモをジロジロ見ないように気をつけながら立ち上がる。
タオルはポイントで交換した。3ポイントだ。
盗賊たちの持っていたタオルは安っぽくガサガサでしかも臭い。獣の皮のような奴だった。
こんなもの使いたくないとトモの意見でしょうがなくショップで購入。トモの後に俺も使うということで了承した。
そう、トモの後で使うと言ったのだ。
「ほいっ」
トモがいつもの調子でタオルを渡してきた。
手に取ったタオルはそこそこ湿っている。
ついじっと眺めてしまった。
別に湿ったタオルが嫌とかなわけじゃない。むしろこのタオルは湿ってるからこその価値があるのだろう。
リアルJKの使用済みタオル……。
「あーっ。センパーイ、今、エッチなこと考えてませんでした?」
「んなっ」
トモの声に前を見るとニヤニヤとした顔がそこにはあった。
「流石に人が使ったタオルに興奮するのはどうなんですかねー?」
「そんなわけないだろっ!」
「ほんとですかー?」
「ほんとだっ! ただ湿ってるなって思っただけだ!」
「ふーん」
ドヤ顔がムカつく。
「気になる女の子のタオルだからしょうがないですよねー。分かってます分かってますよ、私は」
「何にも分かってねーじゃねーか!」
「まあまあそう怒らずに。私はセンパイが戻ってくるまでこの部屋にいますから。タオルでナニをしていようと気にしませんし、関知しません」
「ナニもしねーよ!」
オヤジか!
「センパイも年頃の男の子ですからね。意識しちゃいますよ。私は理解ある女です。どうぞごゆっくり水浴びをしてきてください」
「意識とかしてないから!」
恥ずかしさを隠しながらそのまま部屋を出ていった。
「全く……別にナニもしねーよ」
ボスの部屋の扉を閉めながら呟く。
水浴びをした後に使ったタオルは女の子の香りがしました。
***
「少しは意識……してくださいよ」