女子高生は無限の可能性を持っている。
「トモ、今って何ゴールド持ってる?」
俺はトモが作った芋と干し肉の炒め物をパンに乗せながら聞いた。
現在、朝食をボスの部屋でたべている。
食堂は死体があって食欲がわかない。一応布は被せてるけど。
「えーっほでふね……。ほんじゅーほふごーふほでふ」
もぐもぐとパンを咥えて口を動かしながら器用に片手でスマホをいじるトモ。
「飲み込んでからしゃべろ……」
それに口いっぱいに頬張るな。
「36ゴールドです」
んくっと可愛くパンを飲み込んだトモが答える。
「じゃあ70ゴールドでいいな」
「何がですか?」
「お前のスキルを買うのにだよ」
「くれるんですか!?」
「貸すだけだ」
「ありがとうございます!」
「スキルを取らないと役立たずだからな」
「す、スキルさえあればバリバリ役に立ちますから!」
俺はスマホを操作してコミュニティからトレードを選ぶ。
「ほ、本当にいいんですか?」
「ちゃんと役に立てよ」
「そりゃあもうバリバリと!」
両手でガッツポーズをして嬉しさを表現するトモの胸が揺れた。
「メシ食い終わったら早速使ってみろ」
「了解です!」
嬉しそうに敬礼するトモ。
なんか……誰かと話せるっていいな。
***
「ではでは、まずはテテさんからやってみますね」
洞窟の入り口あたりでトモはテテの頭を撫でながら言った。
「おう」
俺の横にはズズとゼゼ。その後ろにヒートとスライム15匹が並んでいる。
「それにしてもそんなに仲間がいたんですね」
「ああ。これでもあいつらを倒せるかは賭けだったんだがな」
俺は賭けに勝った。
しかも被害もなしにだ。
あんな奴らのために俺の仲間を犠牲になんかさせない。
「それでは行きますねー」
お座りをしたテテの前に立ち、手をかざしたトモ。
「頼む」
俺がそう言うと、トモが一度だけ深呼吸をした。
そして真っ直ぐとテテを見て、口を開く。
「絆刻印!」
俺の召喚術と同じように魔法陣が現れた。
テテの真下から淡い魔力の光が迸る。
不思議とテテは落ち着いていた。じっとトモの目を見つめている。
次第に魔力が収まっていく。
魔法陣が薄くなっていき、消えた。
「成功……ですか?」
しばらくしてトモが口を開く。
「どっかに刻印がないか?」
俺はそう言いながらテテのステータスを開くためにスマホを取り出した。
「あっ。ありました! 背中に刻印があります!」
「おー、どれどれ」
テテに近寄って背中を見ると確かに刻印が刻まれていた。
赤色の魔法文字的なやつ。
「確かにあるな」
そう言ってテテのステータスを確認する。
戦闘力が32。総合力は54になっていた。
元々の戦闘力は30、総合力は51だったことから、戦闘力2と総合力3上がったことになる。
「あんまり上がってないな」
「えっ! マジですか!?」
俺がポツリと呟くと、トモが隣からスマホを覗き込んでくる。
近い近い。
数日風呂に入ってないはずなのに汗の匂いに混じって仄かにいい香りがするのは女の子だからかっ!?
「どのくらい上がったんです?」
「2くらいかな?」
「たったそれだけですか!?」
「たったそれだけだ」
驚いてから落ち込むトモ。
「で、でもこれからですよ! 数を増やすごとに強くなるって書かれてましたから!」
「そうだな」
俺も同じことを考えていた。
だからこそ彼女と俺は相性がいいと思うのだ。
無限に数を増やせる能力と、数が増えれば増えるほど無限に強くする能力。
はっきり言って最強だ。
「じゃあズズとゼゼも頼む」
「任せてください!」
笑顔で了承するトモのもとへズズとゼゼが俺の意を汲んで近寄る。
「そこにお座りです!」
なぜか偉そうに命令するトモ。ズズとゼゼはちょこんと座る。
「まずはお前からだっ」
トモが屈んでズズの頭を両手でもふる。
「よーしよしよしよしよーし、絆刻印!」
耳裏から首元までワサワサと撫でまくられ、気持ちよさそうに喉を見せるズズにトモがスキルを唱える。
先ほど同じように魔法陣が出て、消えた。
「できたかな?」
トモが満足げに背中を見るも首をかしげた。
「あれ? センパイ、刻印ないですよ」
「ん? ちゃんと探せよ」
「テテちゃんは背中にあったんですけど、あっ、首元にありました!」
「刻印の場所はランダムみたいだな」
「ですねー」
刻印の形は同じだった。
俺は首元の刻印を自分の目で確認してからズズのステータスを見る。
戦闘力33、総合力55。
どっちも4あがったな。
次にテテを見るとこちらも上昇値が4になっていた。
絆一つごとに2ずつ上昇していくのだろう。
「よし。その調子でガンガンやってくれ」
「ほいほいさー!」
未刻印の使い魔を前に、トモは嬉しそうに敬礼をした。
まさか一晩で100ブックマークにいくとは! 読者皆さんに感謝を!
というわけで本日3話連続投稿とします!
これからもブクマ評価をお願いします!