新たな仲間と新しい朝。
「パーティーですか?」
トモの肩口で切りそろえた黒髪が揺れた。
「ああ。俺のジョブは召喚師。契約獣を呼び出すスキルを持っている」
「じゃあこの子達って」
「俺の契約獣だ」
ドヤ顔で言い放つ。
「カッコいいですね! 契約獣!」
「お、おう。そうだろ」
まっすぐに褒められるとは思ってなくてなんだか恥ずかしさを感じた。
「いいなー。私もそんなジョブがよかったなー」
「俺としては刻印師も悪くねぇと思うけどな」
「でも獣がいないと使えないじゃん!」
「俺がいれば使い放題だぞ」
「はっ! あなたは天才ですか!」
気づいてなかったのか……。
「俺とパーティーを組めばお前の能力を最大限に活かせるはずだ」
「組みます組みます! パーティー組ませてください!」
ちょろいな。
こいつ、割引バーゲンセールとかに弱そう。
「よしっ。契約成立だな」
俺はパーティー申請をするためにスマホを呼び出す。
「あ、その前に一ついいですか?」
「なんだ?」
「まだお名前を聞いていません」
「そうだっけ?」
「そうですよー」
そういえば俺だけ一方的に名乗られたんだっけ。
ついつい名乗っているものだと思っていた。
「俺はケイ。この世界じゃ名前だけらしいからそのままケイでいいよ」
「私はトモです。じゅーろく歳です」
「俺は17歳だ」
「なら私のセンパイですね!」
「そういうことになるな」
「これからよろしくお願いしますね! センパイ!」
テテに抱きつきながら、彼女は弾ける笑顔で言った。
「ああ、よろしく頼む」
***
翌日。
死体の転がるアジトで寝るのは気が進まなかったが、すでに夜も更けていて野宿する気になれなかったのでボスの部屋で寝泊まりすることにした。
ボスの布団だけ良質で、適度に洗われているのか匂いもそれほどしなかった。
だが他の毛布は汗臭く、そのまま使う気になれない。結局どっちがボスの布団を使うか言い合い、同じ布団で寝ることになる。
絶対に絶対に絶対に変なことしないでくださいね! っとテンプレな言葉を言われたのは、まあ、さて置くとしよう。
少し離れているとはいえ、女子高生がそばで寝ている状況でぐっすり眠れるか心配だったが、横になったらすんなり睡魔が抱きついてきた。
「…………」
どうやら抱きついてきたのは睡魔だけではないらしい。
右手側の体に柔らかい感触がある。
二つの確かな弾力が俺の眠たかった意識を一瞬で覚醒させた。
おっぱい!
制服越しにノーブラの果実が押し付けられている。
くっついているからかほんのりと汗ばんでいて、肌着もつけていないからうっすらと肌が透けていた。
桜色の先端が眩しい!
ぐあああああああ!!
俺は震えながらも理性を振り絞る。
これは罠だこれは罠だこれは罠だ。
おのれ孔明!
せっかくパーティーに引き入れた戦力をこんなところで無くしてなるものか。
手を出したら負け、手を出したら負け。
「んっ」
寝言か何かわからないが彼女が艶かしい声を出した。
「…………っ!」
飛び起きて離れそうになるのを、おっぱいの感触に囚われてならない俺の童貞心が引き止める。
修羅の道を進めというのかっ!
彼女から離れて楽になりたい。しかしこんな感触もう味わえるかどうか。離れるなんてもったいない。
心の中で葛藤に苦しむ。
「……んむ? デコ助ぇ?」
そんな時に、眠たそうにトモが喋った。
「っ!」
と思ったのもつかの間、トモが俺から勢いよく離れる。
「んんっ……?」
俺は咄嗟に眠たそうな声を出し、まるで今さっき起きたかのように目を開いた。
ナイスファインプレー!
「お、お、お、おはようございますセンパイ」
顔を真っ赤にして朝の挨拶をするトモ。
なるほど、無かったことにしてくれるのか。
「お、おう。おはよう。な、何かあったのか?」
冷静を装いながら返事をする。
「い、いえ。日本にいたころ持っていた抱き枕を思い出していたんですよ」
「へ、へー」
お互い気まずく会話が無くなる。
「…………」
「…………」
「…………朝飯にしようか」
「そ、そうですね」
「先に行って準備していてくれないか?」
「は、はい! 分かりましたセンパイ!」
テトテトと走っていくトモに安堵する。
まずは暴れる息子を落ち着かせなければ……。
***
さて、ここで盗賊退治の成果を発表しよう。
現在の所持金は181ゴールド。
持っているポイントは赤4、緑3、茶3、白84。
白増えたなぁ。
極振りにしてもいいし、満遍なくズズとゼゼとテテに振るのもありだ。
盗賊からは長剣や短剣、皮鎧や籠手、ナイフ。ベルトや貴重品を集めた。
お金は金貨3枚、大銀貨14枚、銀貨27枚、大銅貨43枚、銅貨73枚ある。
ちなみに死体から物を集めたのはグレイウルフズだ。
縛られてたりして彼らに回収できないのだけ教えてもらって、今しがた回収した。
アジトにあった品はどれも使い込まれていてあまり値打ちはないだろう。
それでも使えそうなのは全部拝借していく。どうせ残しててもここに来る者はもういないわけで、腐るだけだ。
アイテムボックスでいくらでもアイテムを持てるしね!
ランタン、毛布、着替え、椅子、机、食料品、調理道具、医薬品、手入れ油、タオル、樽、桶、エトセトラ。
アイテムボックスに片っ端から突っ込んで気づいたのだが、アイテムボックスに入れられるものは自分が持てるサイズまでだった。
小柄の机は持てるので仕舞えたが、大きなベンチ付きテーブルは持てないので仕舞えない。
衣服類はそこそこ臭うので洗濯するまでは使う気になれない。てか、洗濯しても着たいとは思えない。
ボスが持っていた外套だけはすぐに使わせてもらうことにした。
臭いもあったがまだ我慢できるほうだったし、さすがに女子高生の制服姿やジーパンティーシャツでうろつくわけにはいかない。
食料品は芋と干し肉が大半だった。
医療品は塗り薬のようなものと包帯だけ。
ほかはガラクタ。
ボスが何かお宝を隠しているんじゃないかとスライムに床の下を見てもらったり、ズズやゼゼに匂いを嗅いでもらって部屋を調べたりもしたのだが、何も見つからなかった。
役に立たない豚だったぜ。
ちなみにボスの死体は酷い有様だった。
顔は灼け爛れ、目ん玉は溶け、顔はもう原型をとどめていないほどに。
ざまぁない。
今まで悪辣非道な行為をしてきた報いだ。
俺はそう自分に言い聞かせて、そっとボスの死体を布で覆った。
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