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変態女子高生はチートへの第一歩。



「あの……助けて……くれたの?」


 動かなくなった犬助から目をそらすと、アニメキャラクターのような声がした。


「ああ、助けた」


「あ、あ、ありがとうございますっ!」


 短く答えながらそちらを向くと、涙を浮かべながら感謝の言葉を口にした半裸の女子高生がいた。


「いや……元々あいつらは殺すつもり――あっ、いや倒すつもりだったし」


 なんだかこの世界に来て麻痺していたが、人を殺すのは罪だ。

 罪悪感はないが、そのことを日本人である彼女に口にすることは躊躇いを覚えた。


「それでも助けてくれたことには変わりありません! もうずっと1人で寂しいし心許なくて、私はここで犯されて死ぬんだーって闇に堕ちそうなくらいの絶望だったんですよ!」


 半泣きの早口でまくし立てる彼女。

 トモって名前だったけ。


「それは大変だったな……」


 彼女が動くたんびに制服が揺れて見えてはいけない胸のトップやらスカートの中やらがチラチラ。


「ほんと……大変だったんですよ……」


 トモは落ち込んだかと思うと、すぐに上を向いて深呼吸した。


「このモンスターって君の!?」


 彼女は無理やり元気を出してテテに近寄った。


「あ、おい」


「あ、触っちゃダメでした?」


 突然敬語になった。


「いや、別に触るくらいはいいんだけど……その……服くらいちゃんと着たら?」


「へ?」


 彼女が不思議そうに顔を下に向けると、動きに合わせて剥き出しの胸がぷるんと揺れた。


「いやああああああ!」


「おわっ!!」


 怖っ!

 こいつ、地面に膝をついたあと落ちてたナイフ投げてきやがった!


 見当違いな場所に飛んで行ったからいいものの当たってたら一大事だぞ!


 バクバクと荒ぶる心臓へと手を置いて気持ちを落ち着かせようとした。ついでに荒ぶっていた息子もクールダウンさせる。

 あんなの見せつけられてたら、ね?


「そういうのは先に言ってください!」


「いや、お前の服だろ。そのくらい気づいているのかと」


「気づいてたら見せないですよ!」


「そういう趣味なのかなって」


「変態扱いしないで!」


 バサっとまた物を投げられる。

 布っぽい何かは勢いが足りずに俺の目の前で落ちた。


「なんだこれ」


 薄い水色の布っぽい何かを拾ってランタンに照らしてみると、それはブラジャーだった。


「なっ!」


「あっ! 何拾ってんの! 見んな! 触んな!」


「お、お前が投げてきたんだろ!」


 自分のブラジャー投げてくるとか、とんだ変態じゃねぇか!


「それ切られちゃったからもう使えないんです!」


「す、捨てるの?」


「そのつもりじゃないと投げません!」


「わ、分かった。分かった。俺は何も見なかった。床に戻す」


 俺はゆっくりとブラジャーを下ろしていった。


「きゃっ」


 そんな時にテテが彼女のほっぺを舐める。


「もうやったなー」


 すでに上着のボタンを留め、スカートの乱れを直し終えていた彼女は、舐められたことに気づいてテテの顔をもふもふし始めた。


 俺はその瞬間を見逃さない。


 ブラジャーをアイテムボックスに忍ばせてから何気ない感じで立ち上がった。

 この1週間、アイテムボックスに物を入れることは何度も練習したからな。


 大事にします。


「それで、お前はどんな感じなんだ?」


 話題を変えるためにも俺は歩きながら聞いた。


「どんな感じって?」


 女の子座りで完全にテテと戯れ始めたトモは首をかしげる。


「この世界に来てからだよ。これから目指してる場所とか、目的とか」


「そんなのないですよー。この世界に来たのは1週間前くらい? 訳もわからず歩いてたら捕まりました」


 捕まりましたって。そんな気軽な。


「ずっと1人だったのか?」


「1人でしたよ。森の中で誰とも合わずに彷徨って、変な小人には追いかけられるし、街道に出たらあいつらに出会っちゃうし……」


「食べ物とかは?」


「スマホのショップってのから買ってたんですけど、もう半分以上お金を使っちゃいました」


 それは勿体無い。


「もしかしてスキルは何にもとってない感じ?」


「取りたかったんですけど、私のスキルは戦闘向けじゃなさそうなんですよぉ」


 抜けてるところはあるけどスキル傾向は理解しているようだ。ゲームはそこそこやってたのかな?


「獣刻印師だっけ?」


「えっ……なんで知ってるんですか」


 彼女の目がゴミを見るそれになる。


「他人のステータスはスマホのコミュニティから見れるんだよ」


「へー、そうなんですか」


 納得してくれた。

 なんで他人のステータスなんて見てるんですか。とか言われたらどうしようとか思ってたが、杞憂か。


 アホでよかった。


「それで、どんなスキルがあるんだ?」


「一個だけしかないですよ」


「そうなの?」


 ジョブによって取得できるスキルもスキルの数も変わるのか。


「えーっとですね、ちょっとまってくださいね」


 彼女はそういって何もない場所から右手にスマホを取り出す。

 ピンク色のスマホだった。

 個人で色が変わるのか。


「ほら、これ」


 トモが腕を伸ばしてスマホを見せてくる。それだけで制服越しの胸が揺れた。


 そういえばこいつノーブラか……。


 ぐっと意思を振り絞ってスマホを眺める。


 開いている画面はショップメニューのスキルだな。

 並んでいるのは一つだけ。




 ー100G:絆刻印




 俺がスキル名をタップすると説明が表示された。




 ー絆刻印


 自分を仲間だと認めてくれた獣にスキル名を唱えることで刻印を付与し、刻印を付与された獣は身体能力が向上する。上昇能力値は刻印を刻まれた獣の数に比例していく。

 消費魔力小。

 使用限度なし。




 俺は笑いそうになった。


 思った通り。

 こいつは俺と相性の良すぎる能力だ。


 きっと彼女のスキルもポイントで強化できるのだろう。


 俺の能力は魔石で数を増やし、個体をポイントで強化する。

 そのポイントはモンスターを倒さなければいけないのだが、限度がある。

 ゴブリンを倒せば魔石が手に入りモンスターを一体呼べるが、ポイントは5匹倒さないと能力としては使えない。


 だから無条件に契約獣を強化できるスキルが欲しかったのだ。

 しかし俺のショップには召喚魔法しかない。


 そんな時に彼女のスキルを見つけた。


 いやー運がいい。


 こいつを逃す手はない。


「なぁ、俺とパーティーを組まないか?」


 

もう数話で区切り、第一章とします。

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