第3話 『お泊まり会 その一』
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パーティーが終わった次の週の休日、俺は馬車に乗って王城へと向かっていた。
パーティーの終わりに陛下から泊まりで遊びに来いと招待されたのだ。
その時のルナの喜び具合は、アメリア王妃に宥められるくらいで、とても可愛らしかった。
あのパーティーは本当に酷かった。お披露目会だの意味のわからんパーティーに付き合わされるかと思いきや、急に五歳の幼女と婚約するような羽目になるし。
精神年齢は三十を越えている俺からすると立派に犯罪である。そもそも五歳で婚約ってこの国は一体どうなっているんだ。しかも親戚と!
俺とエリサの関係は母の兄の娘、いわゆる従兄妹だ。
五歳の従兄妹と婚約、そんな話は前世で聞いたこともない。
いくらエリサが可愛らしいと言ってもまだ五歳、恋愛対象になんか最低でも十年はないと見られない。…………それでも精神年齢的に完全にアウトだが。
城門に着くと馬車がゆっくりと止まり、執事のセバスがドアを開けた。
「それではレイ様、翌日の夕方にお迎えに上がります」
「わかった。ありがとうワイズ」
ワイズの家は代々サラザール家に仕えていて、ワイズは父上の執事だ。文官としてもとても優秀で、執政に疎い父上の右腕としても貢献している。
それでいて、執事の腕は王城で働いている者と遜色ない。
そういえば、メイド長のリリアナさんとの子供が俺と同い年で産まれたらしいが、まだ見ていないな。
考え事を止めて馬車を降りた先には、一人の若い騎士に対して怒っているルナと、それを宥めようとしてオロオロしているエリサ、呆れるグレンの姿があった。
とてもカオスな状況である。
「いけませんルナリア姫。臣下を城門で待つなど、王族としてあるまじき行為ですぞ」
「だーかーらー! レイは臣下じゃなくて友達って言ってるでしょ!」
「まあまあ、二人とも落ち着いて下さい…………」
「そうだぞ。ようやく当の本人も到着していたみたいだ」
冷静なグレンが真っ先に俺を見つけると、場の収拾にかかる。
すると、ルナの目がパッと輝いて無邪気な笑顔で俺の元に走ってきた。
「久しぶりねレイ、待っていたわ!」
「久しぶりって、十日しか経ってないだろ」
「あれからこの日が楽しみでしょうがなかったの!」
この世界では一年間を三百日、一ヶ月を三十日、一週間を十日、一日を二四時間で
計算している。
秒と分は地球と同じで六十進法を使っていた。
地球よりも計算しやすくて助かる。
一週間が十日ある中で、休日は三日。日本よりは少し休日の割合が大きい。ホワイトな世界である。
「レイさま、おはようございます」
「あ、ああ。おはよう、エリサ」
エリサがとても魅力的な微笑みをするので、少しどもってしまう。
心は大人なのだが、俺の身体が反応するのだろうか。
…………落ち着け。前世の俺にロリコンの趣味はあったか、いやない!
待てよ、今気づいたが、俺って見た目は子供、頭脳は大人の状態じゃないのか!? 少年探偵を目指せるのか!?
いかん、錯乱してきた。一度落ち着こう。
「着いたばかりで申し訳ないが、父上に挨拶しに行くぞ」
「その前に、そこにいるお方はもしやアングレン卿ですか?」
俺達が話してい後ろで、騎士団の格好をした若い男性がいた。右肩には三の数字と副隊長の証拠である星がついている。
「知っていられたのですね。お初にお目にかかります。ルーミリア王国騎士団第二部隊副隊長のヘクトル=アングレンです。この二日間、皆様の警護をさせてもらいます」
「お噂は予々、父上からとても優秀な方と」
「本当ですか!? いやあ、団長にそう言って頂けるとは」
ヘクトル=アングレン。王立騎士学校第十四代首席卒業者。真面目で統率力もあり、腕も申し分ない。
たったの一人で国王親衛隊五人分と呼ばれる魔獣、グリフォンを討伐したことで有名。
父上も鍛えがいのある若者だと称賛していた。
少し真面目すぎるのがキズらしいが。
「ほらレイ、ヘクトルに構ってないで早く父さまの執務室に行きましょう?」
「はいはい、わかったよ」
ん? ルナが俺の手を握った時、エリサがこっちを見ていたようだが、気のせいだよな?
まさか、嫉妬しているなんて事もないだろうし…………。
五歳が嫉妬って、冗談にしては笑えない。
そうして俺は半ば連行される形で陛下の待つ場所へと向かった。
□■□■□■□
「父さま、母さま、レイを連れて来ました!」
「…………ルナ、部屋に入る時はノックをするよう言っているだろう?」
陛下はルナをやんわりと注意するが、ルナは笑顔のまま。
俺みたいな息子もアレだが、ルナみたいな活発過ぎるのもなあ。陛下もさぞ苦労なさっているのだろう。
「本日はご招待していただき、誠にありがとうございます」
「…………レイ、今日は休日であるが故に王城にいる者も多くはない。そこまで畏まらなくとも良いからな。パーティーの時にも言ったが、今日も私はレイの伯父だ」
前回もそう言われたが、陛下には畏まり過ぎるのもいけないのかな。
初等部に入学するまで少し柔らかくいくか。
「ランディとセレスはどうしている?」
「三日間の連休を利用して領地に戻るようです。早めに帰って来るそうで、帰りは明日の夜になると」
サラザール領は王都に近く、二人は小旅行のつもりで行っているのだろう。
二人は今でも仲睦まじく、喧嘩をしている所を見たこともない。
もしかすると、俺の弟や妹が産まれるのも遅くはないかもしれん。別に楽しみではないが、寧ろ前世の妹の一花以外に兄妹ができるのもちょっと複雑だ。
一花は優しかったなあ。本当に良くできた妹だった。
「今日はゆっくりしていくといい。ああ、そう言えば今日は宮廷魔法師長のフィオナがいる。昼食ができるまでの午前中に会いに行ってみるのも良いだろうな」
「!? 本当ですかっ! 是非そうさせてもらいます!」
宮廷魔法師長と言えば魔法師団団長と双璧をなす御方。アングレン卿よりも優秀であり、二年前、歴代最小の二十六の若さで宮廷魔法師長の座についた王国史きっての天才魔法師である。その名は周辺諸国に轟いているとか。
そんなお方に会えるとは、俺もツイてるな。あわよくば魔法を使ってもらおう。
父上も母上もあまり魔法は使ってくれないからな。
そうして俺達は宮廷魔法師長の執務室に向かった。
遅れて申し訳ありません。
次の投稿は明日23日を予定しております。