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転生覇王と銀乙女 ~チートスペックで異世界転生~  作者: 夕見京成
第1章 ~異世界転生動乱編~
2/24

第2話 『サプライズ』


 よろしければ、感想やレビュー、評価等していただけると嬉しいです。

 少しでも気に入っていただけたならば、是非ブックマークをして頂けると幸いです。

 モチベーションアップに繋がり、跳び跳ねる程嬉しくなります。

 定期的な執筆を心掛けております。

 何卒、よろしくお願いいたします。

 



 白のスーツに白のズボン、おまけに赤いネクタイ。


 今日の俺の服装は人生の墓場に行く人間かと思われるものだった。

 装飾は少ないものの、六歳児に白のスーツなんて似合うわけもなく、今すぐパーティー会場から逃げ出したい気持ちでいっぱいである。

 公爵家継ぎというのもあるのだろうが、明らかに皆の視線を集めていた。

 パーティー会場には使用人を合わせると軽く百人は超える人がいる。その視線の多くが俺に注がれていた。


「大丈夫、似合っているわよレイくん」

「ありがとうございます、母上………………」


 俺は自分の黒髪を撫でながら小さくため息を吐いた。

 両親は金髪なのに、なぜか黒髪な俺は父上と母上からとても心配されたらしい。

 多くの宮廷医師や宮廷魔法師に調べられたらしいが、結局はあるかどうかも分からない先祖返りという結論で落ち着いた。俺は転生が原因じゃないかと思っているが、詳細は不明。


 それと同じで不思議なのは、何故俺の名前が前世と同じなのかだが、それは俺が産まれると同時に父上と母上の頭にパッと浮かんだからだそうだ。なんとも胡散臭い話である。



「皆の者、待たせたな」


 壇上から凄みのある声がパーティー会場に響く。騒がしかった会場が一斉に静まり、皆が声の方を向いてかしづいた。


 声の主はルーミリア国王、アレックス陛下。

 敏腕国王であり、全ての民に常に平等と貴族のトップとは思えない程出来た国王である。俺の伯父にあたる御方だ。

 そこまでお年は召していないが、言葉では言い表せない貫禄があった。


「顔を上げよ我が親愛なる臣下達よ。今日はよくぞ参った。国王としてとても嬉しく思う」


 顔を上げると、錚々たる顔ぶれが並んでいた。

 中央にいらっしゃる陛下に続き、右にはアメリア王妃に三人の王子と王女。

 右には宰相や財務卿に枢機卿、それから父上に魔法師団団長、宮廷魔法師長の豪華メンバーが立っていた。

 特に父上をはじめとする三人はオーラが違う。軍部や魔法研究を一任されるだけあって、中々の豪傑のようだ。


「この貴族によるパーティーだが、単なる顔合わせではない。ここに要るほとんどの者が四年後、自分達と学舎(まなびや)を同じにする友となるのだ」


 ルーミリア王国では貴族やある程度の平民の子供は十歳になると、王都にある学校の初等部に入学する。

 入学が遅すぎたり義務教育でないのが残念だが、一応の教育機関は備わっているのだ。

 いずれ俺が政治に口出せる立場になったら色々変えてやろう。 


「長々と話していては子供達が飽きるだろう。ではこれより、貴族子孫交流会を始める!」


 陛下が言い切った途端、会場は拍手の渦に包まれた。これもルーミリア王国全国民から慕われている陛下だからこそなのだろう。

 決して平民を蔑ろにせず、それでいて貴族の支持も集め、軍備も整えている。地球の歴史を見てみても、ここまで素晴らしい王は少ないだろう。俺も見習いたい。


 それに、短い挨拶は個人的にとても好印象だ。学校の校長とか理事長とかやたら長い話をするからな。全員陛下を見習って欲しい。


 モタモタしては居られない。俺は公爵家跡継ぎとしての役割を果たすべく、一番に陛下の御前まで行き跪いた。


「ご無沙汰しております、陛下」

「おお、レイか。誕生日以来であるな。覚えていてくれたのか?」

「勿論でございます。とても素敵な贈り物、本当にありがとうございました」

「まあ待て。今日のパーティーでは私はお前の伯父である。そこまでかしこまらなくとも良い」

「……承知いたしました」


 顔を上げると、苦笑いをした陛下の顔があった。

 いくら貴族の子供といえど、六歳ではあり得ない言葉遣いをしているからだろう。社畜として培った前世の知識は有効活用しないとな。


「アレックス様、此度は子供達のパーティーではありませんか。グレン達の紹介が先でしょう。私達はまたの機会に」

「おお、確かにそうだな。ありがとうアメリア。ではレイ、今日は楽しんでくれ」


 いつの間にか、陛下の隣には王妃のアメリア様がいらっしゃり、長話になりそうな所を途中で制してくれた。

 どうやら緊張で陛下以外気付かなかったらしい。陛下の後ろには王子様達のお姿がある。


 陛下とアメリア王妃は俺に手を振ると、父上と母上のいる場所にいってしまわれた。子供だけで残ったので少し気まずい。ここは俺から話をしないと。


「申し遅れました。サラザール公爵家が長男、レイ=サラザールです。以後お見知りおきくださいませ」

「………………つまんない!」

「……………………はい?」


 頭を上げると、ルナリア姫が手を腰に当てて頬を膨らませていた。真っ赤な髪と、紅のドレスがその怒りをより引き立たせている。明らかに怒っていらっしゃる。何も粗相はしていないはずなのだが…………

 ルナリア姫は俺が更に思考を巡らしているのが気にくわないのか、いきなり俺の手を掴んだ。


「レイ、私はそんな畏まった話がしたいんじゃないの! やっと同年代のお友達ができると思って楽しみにしていたんだから!」

「…………お友達、ですか?」


 俺の質問に姫様は繋いだ手と頭を同時に勢い良く振った。

 まさか姫様から友達になりたいと言われるなんて思っていなかった。これは予想外だ。早く姫様の機嫌を直さないと。


「姉上の言う事も最もだぞ。俺はグレン=ルーミリア。これからお前の友達になる男だ。友達らしくグレンと呼んでくれ」

「承知いたしました、グレン様」

「「………………」」


 俺の言葉に、お二人は大きくため息を吐いた。今度は呆れさせてしまったらしい。ダメだ、子供の思考は理解できん。


「…………なあレイ、友達に敬語使ったり様付けで呼んだりする奴っているか?」

「…………あっ」


 どうやらお二人より俺の方がずっと子供だったらしい。こんな簡単な事にも気付けないとは。猛省せねば。

 それより、ここは素早く実行すべきだ。


「ルナリア、グレン。これでいいか?」

「ん~、まだ堅い。ルナって呼んで!」

「わかったよ、ルナ」

「うんっ! よろしくね!」

「ああ、それで正解だ」


 ここ最近敬語を遣わずに会話をしていなかったからな。なんだか新鮮だ。


 しかし、改めて見ると二人とも美形である。ルナは真っ赤な髪と瞳が実に彼女の性格とマッチしていて、グレンは青い瞳が冷静さを一層際立たせている。二人とも文句なしの美男美女だ…………子供だが。

 ルナとグレンはこの世界では珍しい双子だ。医学が発達していないこの世界で、双子の生存率はとても低い。彼らが無事生まれてきたのも王族という点が大きいだろう。


「そしてこの娘が私達の妹、エリサよ! ほらエリサ、挨拶は?」

「わわっ、姉さま!?」


 先程からチラチラ見えていたが、ルナに押されて彼女の後ろに隠れていたがエリサ様の姿が見える。


 その瞬間、俺は言葉を失った。


 腰にまでかかりそうな長いブロンド。それでいてキレイな直毛であり、よく手入れされているのがわかる。グレンと同じブルーの目。均整のとれた顔立ち。まるで本の中に出てくるヒロインのようだった。


「も、申し遅れましゅた。ルーミリア王国第二王女のエリサと申しましゅっ!」

「…………こ、これはご丁寧に」


 噛み噛みだった。緊張しているのが手に取るようにわかった。

 彼女の後ろでは腹に手を当てて必死に笑いを堪えているグレンとルナがいる。

 本人は元々緊張のせいか顔が赤かったが、もうリンゴのように赤くなっていて手で顔を覆っている。その仕草がまた愛らしい。


「えっと、俺も敬語の方がいいかな?」

「い、いえっ。レイさまはどうか私の事をエリサと!」

「わ、わかったよエリサ。でも、エリサもグレン達と同じ様に呼び捨てで良いんだよ?」

「いいいいえ、そんなっ。そんなの恥ずかしいですっ」


 迷った末、援護を求めてグレンに視線を送った。流石にぎこちなくて厳しいものがある。


「そういえば、レイはもう勉強していると聞いたが本当か?」


 やはり、見た目通りグレンは大人びている。空気を読んで話を変える辺り、聡明と言ってもおかしくない。助かったあ。

 これは良い理解者になってくれそうだ。そう願いたい。


「勉強というほど大層なものじゃないよ。ただ本を読んでいるだけで」

「それがすごいよねー。私は絵本を読むので精一杯だよ」


 そうこうしている間に段々と打ち解け始め、次第に俺達の仲は深まっていった。




     □■□■□■□■




「そういえば、どうしてエリサはまだ五歳なのにこのパーティーに参加しているんだ?」


 危うく忘れそうになったが、パーティーの聞かされた時からの疑問について質問してみた。流石に知らないという事は無いだろう。


「え? レイは聞かされていないの?」

「特に何も。何か理由があるのか?」

「姉上、おそらく叔父上はサプライズとしてレイに教えていなかったのでしょう」

「あー、そういう事ね」


 サプライズというのは昨日も聞いた。俺とエリサが関わっている何か。検討もつかない。そもそも俺たちは今日が初対面。繋がりも何もないのだが。


「あっ、ナイスタイミング! レイ、お父さまが壇上に上がったわよ」

「え?」


 なぜ陛下がまた壇上に? 挨拶が終わってら結構時間が経っているのに何故。それに王妃に父上、母上もご一緒に。これがサプライズに関する事なのか?


 嫌な予感がしてならないんだが。背筋が寒くなってきた。


 陛下は声を大きくする魔導具を手に持ち、こちらを向いて話し始めた。


「皆楽しんでいるか? 急ですまないが、今日は発表すべき事がある。エリサ、レイ壇上へ」

「!? は、はい!」


 急に呼ばれて少し慌てるが、すぐに返事をしてエリサと一緒に壇上へ向かう。

 内心動揺しまくりだが、悟られては格好がつかない。平常心、平常心。


(エリサはこの事を知ってた?)

(さあ、どうでしょう?)


 他の人に聞こえないように小声で話しかけると、なんとも意地悪な言葉が返ってきた。クスクスと笑う彼女がまた可愛い。この数時間で彼女ともかなり打ち解けたな。


 緊張しながら壇上に立つと、視線が俺とエリサに集まるのを感じた。心拍数が跳ね上がる。

 陛下は一つ咳払いをして話始めた。


「エリサがまだ五歳なのにこのパーティーに参加している事を疑問に思った者も大勢いるだろう。しかし、それには理由があってな。その理由は――――――婚約だ」


 陛下がエリサの早すぎる婚約を発表した途端、会場がざわついた。

 しかし、エリサのパーティー参加の理由が婚約の発表だとすると、俺が登壇した理由がない。いや、()()()()()()

 俺が一緒に登壇。サプライズ。そして父さまと母さまの笑み。まさか――――――


「そして、その相手がこのサラザール公爵家次期当主、レイ=サラザールである!」


 陛下が一層声を大きくして告げると、会場が拍手の渦に包まれた。陛下が挨拶した時と同じかそれ以上に大きい。

 思わず父上と母上を見ると、またもや満面の笑みを浮かべていた。


「改めてレイさま、よろしくお願いいたしますね」


 やはりエリサは知っていたようで、悪戯が成功したように笑った。俺も笑ったが、間違いなくその笑みはひきつっていただろう。


 常識的に考えておかしい。俺はまだ六歳で、エリサに至ってはまだ五歳なのだ。それが、今婚約ってどう考えても早すぎるだろう。

 それに、今日会ったばかりなんだぞ。エリサが可愛かったから良かったものの、その、なんだ、ちょっとそういう子だったら大変だったじゃないか…………! それに、お互いの性格だって全て理解している訳でもないのに!


 まあ貴族って時点で結婚に関しては少しは覚悟してたけど、あまりにも急で思考が追いつかん。おのれ、これが大人のやる事か………………!




 ………………俺、ロリコンじゃないんだけどなあ。




 次の投稿は土曜日を予定しております。

 復刻クリスマス、楽しみにしていました。

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