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リュウの魔物転生記


 怖い。ただとてつもなく怖い。


 上も下も、右も左分からない真っ暗闇の中、僕という存在が当てもなく彷徨う。分かるのは僕が今ここにいるということ。

 目も鼻も耳も聞こえない。僕は死んでしまったのだろうか? それとも植物人間にでもなってしまったのか? もしそうなら一生このままなのだろうか?

 そう考えるだけで僕の脳内を恐怖という感情が埋め尽くす。


 それにしてもさっきから物凄く眠くて眠くて。ずっと我慢していたけど、そろそろ限界かもしれない。


 僕は襲いかかる眠気に身を委ねようとしたその時だった。コツン、と何かにぶつかる音がした。


 何だこれ? 暗闇に壁があるや。


 再び叩いてみると壁はコツコツと鳴った。この壁の先にもしかしたら、と僕は期待する。この先に光のある世界が待っているんじゃないだろうかって。


 暫く叩いていると、壁は意外と簡単に破れた。そして少しづつ視界が開けてくる。


 最初に視界に映ったのはーーー夥しい数の、卵から孵りかけている蛇だった。


 だぁああああああああ!?!?

 何だこれ? 無理無理無理無理。生理的に受け入れない。待て待て。僕は今どうなってるんだ?

 というかこの蛇達、生まれて来たばかりだっていうのに僕と同じくらいデカい。まるでモンスター...ん?

 "僕と同じくらい"デカいだって?


 物凄い嫌な予感がした。

 いやいや、まさかね! そんなはずないよね! だってそんなラノベみたいなこと、有るはずがないじゃないか。ないったらない!

 でもやっぱり確認しなきゃいけないんだろう。


 ゆっくりと視線を自分の身体に向けてみる。そこに映ったのはーーー周りの蛇と同じ柄を持つ蛇の身体だった。


 認めるしかないようだ。どうやら僕は......


 蛇の魔物に転生してしまったらしい。




 そういえば確かに、僕の最後の記憶は学校の帰り道でストーカーに背中を刺された所で終わっている。

 なんてこった。しかもよく思い返してみるとあれは確かクラスの女子の1人で、よくよく思い返してみると確か『貴方を殺して私も死ぬの。これで永遠に一緒だね♪』とか言っていたような...。怖すぎる。それで死んでしまうなんて、何て可哀想な人なんだろう、僕は。


 何故こうなったのかはよく分からないけど兎に角ここを抜け出そう。いつまでもこんな蛇一杯のところになんか居たくはない。


 そう思うや否や、僕は巣を飛び出した。


 巣はどうやら小さな洞窟の中にあった様で、直ぐに森の中に出ることができた。


 取り敢えず移動をしながらちょっと頭を整理してみようと思う。

 

 あっそういえば、転生したと分かってどうしても1つやってみたいことがあるんだった。

心の中で叫んでみる。


 ステータスオープン!!


ーーーーーーーーーー

スノータイガースネーク(ランクE)

Lv. 1

HP25

MP13


攻撃17

防御22

特攻10

特防13

速度27


スキル

『成長補正』『毒牙』『締め付け』『夜目』


称号

『異世界からの転生者』

ーーーーーーーーーー

 

 目の前に半透明状のウィンドウが開かれた。

 おおおお! 感動だ。やっぱりね。転生したらステータスがあると思ったんだよ。

 それにしても...名前は強そうな癖にかなり弱いんじゃないか?ランクEは多分相当低いんだと思う。

 あと魔物がいるんだから分かってたけどやっぱり異世界なのね...。


 スノータイガースネークという名前の通り、僕の身体は全身白い鱗に覆われていて、口からは毒を持った大きい牙がはみ出ている。蛇はそんなに好きじゃないけどちょっとかっこいいかも?


 兎も角こうして確認できた通りやっぱり僕は魔物なんだろう。そしてこの森には僕と同じように魔物が沢山いるに違いない。

 せっかく前世の記憶を持ったまま転生できたのにそうやすやすと殺されてしまうわけにもいかないので、幾つか目標を立てようと思う。


 先ず死なないために強くなること。これは身の安全を確保する為でもあるし、ビクビク隠れながら過ごしても何も始まらないと思ったからでもある。だから可能な限り他の魔物を倒してレベルを上げていこうと思う。


 後はレベル上限の確認と進化出来るのか、だ。魔物だから進化できる気がするけど、それも確認するまでわからない。でももし進化出来たら行く行くは人型の魔物に進化して文明圏に戻ることも可能かもしれない。


 よって、『強くなって進化すること』を当面の目標として掲げていこうと思う。


 よっし、そうと決まればどんどん魔物を倒していかないとね!


 こうして僕は無数の魔物が蔓延る暗い森へと入って行った。


〜〜〜〜


 僕が魔物として転生してから暫く経った。その間弱い魔物を倒しまくったので前よりは結構強くなったんじゃないかと思う。


 そいやっ! ステータスオープン!!


ーーーーーーーーーー

スノータイガースネーク(ランクE)

Lv. 9

HP52

MP29


攻撃39

防御47

特攻26

特防32

速度59


スキル

『成長補正』『毒牙』『締め付け』『夜目』『威圧(小)』『代わり身』『甲殻化』


魔法

『氷魔法(下級)』『闇魔法(下級)』


称号

『異世界からの転生者』

ーーーーーーーーーー


 どうやらこの魔物、氷と闇魔法の適性があったらしい。イメージしていたら習得することができた。でも氷魔法の方が使いやすかったりする。名前にスノーが付いているからかな?


 現在レベル9なわけだが、次のレベルで進化出来る。と本能が告げている。あとほんの少しでレベル10になれるだろう。


 するとちょうどいい所にネズミ型の魔物が威嚇しながら近づいてきたので氷魔法で動きを止めてから丸呑みにした。


≪レベル10になりました≫

≪進化が可能です。次の選択肢から進化先を選んでください。


ブリザードゴアスネーク

ダークゴアスネーク

グレイトタイガースネーク≫


 ふむ。こういう時に詳細が見れると良いんだけどな。でも大体予想はつく。魔法特化型か物理特化型といった所かな?

 氷魔法魔法は結構応用がきいて使いやすかったので氷魔法寄りにしようと思う。


 ブリザードゴアスネークにするぞ!


 そうして僕は進化した。


〜〜〜〜


 あれから何度となく進化を繰り返すうちにこの森で僕にかなう魔物はいつしか居なくなっていた。ので、そろそろ場所を移そうと思う。

 はえーよ! とか思うかもしれないけどこれでもかなーり苦労したんだよ?

 ちなみに今の僕はスモールグレイシアドラゴンという小型龍になっていた。ランクはBだ。ランクEから始めたことを思うと本当に我ながらよく頑張ったと思う。

 見た目はほとんど蛇と同じなんだけどね。真っ白でツノがちょっと生えてて、あと氷魔法が上位まで使えるようになった。それと空を飛べるようになって移動が大分楽になったのでドラゴンになれて良かったと思う。


 どれくらい居たかわからないけどこの森とも今日でお別れだ。

新しい住処を見つけるべく森の上へ浮上して辺りを見渡してみると、遠くの方に小さな村が見えた。


 村があるということは人がいるということなんだろう。

 うーん...気になる。ちょっと行ってみようかな?


 そんな軽い気持ちで僕は村に向かって移動を始めた。


〜〜〜〜


 誰にも知られていなさそうな、辺境にひっそりとある小さな村。普段は静かで平和なその村は、今は騒然としていた。


「龍だ! 龍が近づいて来ているぞ!!」


 村はすっかりパニックに陥り、比較的若い男たちが武器とも言えぬ、農具を手に持って、敵を撃退すべく集まっていた。


 しかし相手は龍だ。龍や竜はこの世界でも生態系の頂点にいる存在。たかが人間数十人集まったところでどうにもならないだろう。しかしやらなければやられる。この世は弱肉強食なのだ。


「しかしここらに龍なんて住み着いていたか?」

「おいっ来たぞ! 構えろ!」


 男たちに黒い影が掛かる。上空数十メートル先に確かに龍が飛んでいた。


 曇りのない純白の鱗が太陽の光を浴びてキラキラと反射し、幻想的だったがその真っ赤で血のような瞳が男たちをジッと見つめており、いつ攻撃してくるのか、彼らは気が気でなかった。


 龍はしばらく空中を巡回していたかと思うと直ぐに村を通り越して何処かへ去って行ってしまった。全く拍子抜けである。


「一体何だったんだ...?」


 その問いの答えを持つ者は1人として居なかった。


〜〜〜〜


 僕は悲嘆に暮れていた。ここ最近人間に会えなかった所為で自分がどういった存在なのかを全く考慮せずに近づいた結果、物凄い威嚇をされてしまったからだ。

 あわよくば友達になれたらなんて思っていた僕がバカだった。


 やっぱり彼らと同じ姿。人型になる必要がある。

 僕は再び強く決心をして空の向こうへ飛び立った。



 あれから僕は拠点を変えながら強い魔物を探しては倒し、探しては倒し、という生活を続けていた。その後また何度か進化を繰り返し、とうとう運命の日がやって来た。


≪レベル100になりました≫

≪進化が可能です。次の選択肢から進化先を選んでください。


エンシェントブリザードドラゴン

エンシェントブリザードドラゴニュート≫


 ドラゴニュート...だと?

 ドラゴニュート。龍人。つまりは人型だ。

 ここはドラゴニュート一択っしょ。


 体が薄ぼんやりと光る。進化の時に起こる現象だ。そしてドラゴンの巨体を圧縮するようにみるみるうちに体が小さくなっていった。


 光が治ると頭のてっぺんからつま先まで真っ白の少女が立っていた。瞳だけが輝くような赤色で、また、体の所々に鱗が生えていたり、頭部からツノが生えていたりしたが、まごう事なく人の姿をしていた。


 わーい人型だい! わーい! わー...い??

 あれ、ちょっとおかしいな。

 この体...僕が考えていたのとは違う。いや、大体合ってるんだ。合ってるんだけど...ね。


「ぼ、僕って女だったのーーーー!?!?」


 な、なんてこった。今まで爬虫類の姿だったから全然分からなかったけど僕は女だったらしい。前世は勿論男だ。.........はぁー。


 いや。人間になれたなら僕は満足だ。さあ行こう。


「いざ、人間の街へ!!」


〜〜〜〜


 道の先に見えるのは街を守る壁、城壁。門から続く入場待ちの旅人達の列が見えてきた。


 どうしようもない高揚感で思わず走り出してしまう。人とまともに会うのなんて、何年ぶりだろう!? 街に入ったら何をしようか? 何か美味しいものでも食べれるといいな!


 期待を胸に僕も他の旅人達に習って列の最後尾に並ぶ。

 ちなみに今の僕は茶色い目立たないローブを纏い、角を見られないようにローブを深く被っていた。

 この世界にも獣人とか魔族なんかの亜人は居るけどどうも龍人は僕以外に見たことがないので一応、面倒ごとを避けるためにも僕の外見は出来るだけ隠すことにしたのだ。

 行く道の途中で出逢った盗賊から頂戴した金銭も有るので問題なく中に入れるはずだ。多分。


 ああ人だ! 人がこんなにも近くにいるのに誰も僕から逃げ出さないし、攻撃もしてこない。感激だ。


 嬉しさが抑えられなくってちょうど前に並んでいる冒険者っぽい男の人に思い切って声を掛けてみた。


「あのっ、僕初めて来るので知らなくって、この街って何て名前なんでしょうか?」


 男の人は少しビックリした表情で見つめ返してきた。背中しか見ていなかったけど、頰に傷のある厳つい人で、少し、いや、かなり怖い。声を掛けたのは失敗だったかもしれない。


「...ここはジクルハイム共和国の首都、レギオスだ」

「そ、そうなんですか!ありがとうございます。ちなみに入るのに何か必要な物ってありますか?」

「そんなことも知らねぇのかよ。商人なら通行許可証、冒険者ならギルドカード、身分証がねぇ奴は500ギルで3週間の滞在許可証が貰える」

「成る程。勉強になりました」


 少し怖いおじさんだったけど、聞いておいてよかった。3週間しか滞在出来ないんだったら街に入った後で冒険者登録してみるのも悪くないかもしれない。

 ふと視線を感じて顔を上げるとさっきのおじさんがまだ僕の顔を見つめていた。

 まだ何かあるんだろうか?それとも僕が何か変なことをやらかしたのかもしれない。ど、どうしようか。おじさん怖ぇよ。


「おい、お前...」


 ゴクリ、と固唾を飲む。緊張で少し空気が張り詰める。


「たった一人でこんな所まで来るなんて、大変だったなぁ。よく見るとまだ子供じゃねぇか! よく頑張った! おじさんが飴をあげよう」


 そう言って急に表情を崩したかと思うと何を思ったのか、どこからか飴を取り出して僕に手渡してきた。大阪のおばちゃんかよ。


「へ? あ、ありがとうございます?」


 ...ギャップが激しすぎるだろ。何ニヤニヤしながらこっち見てるんだよ前向け前を。


〜〜〜〜


 街の中には問題なく入ることが出来た。

 西洋風の古めかしい建物が並ぶ中、多くの人々が、中には亜人も多いが、がやがやと大通りを歩いていて活気に満ちていた。


 この数年で培った知識では、この世界には冒険者ギルド、というものが存在するようだ。魔物を倒すことを生業とする、あの有名な冒険者だ。

 この街に定住するならギルドカードと、日課を稼ぐ為にも是非登録して見たいと思う。


 というわけで冒険者ギルドに行こう。と思った時だった。


「やめてください!」

「うっせぇなぁ。黙ってろ」

「ちょっと俺らと遊んで欲しいだけなんだよ嬢ちゃん。そんな怖がるなって。へっへっへ」


 何やら不穏な会話が聞こえて来る。声のする方へ振り向いてみると、通りの向こうにある路地裏で、少女に男2人が詰め寄っているところが見えた。


 ...気づいてしまったからには無視はできない。幸い今の僕は常人よりも強そうだし、まぁ大丈夫だろう。


 薄暗い路地裏へ踏み入って、3人に近ずく。


「「おい」」


 僕の声が誰かと重なる。気づかなかったが、3人を挟んで僕の向こう側にもう1人分の人影が見えた。こちらも男、のようだがこちらは僕と同じく、阻止する為に介入して来たっぽいな。


「あぁ?んだてめぇら!?」

「なんか文句でもあんのかよ??」


 っと、取り敢えずこっちを片付けないとな。


 僕の近くにいた方が喚きながら殴りかかって来た。それを半身で受け流し地面に押し倒す。ていうかやっぱり男はデロンデロンに酔っ払っていた。ほとんど何もせずに無力化できてしまった。


 ハッと思い出して2人目の方を見たが、さっきの男がちょうどノックアウトした所だった。ナイス!

女の子が呆然とこちらを見ていたので声をかけてみる。


「君、大丈夫?」

「あっ。ありがとうございました!...その、強いんですね」

「んー、まーね」


 ...この外見なら弱そうに見られてもしょうがないかもしれない。見た目だけならこの少女と同じか、少し下くらいに見えるだろう。


「いや、しかし俺以外にも助けに来たやつが居たなんて、気づかなかったよ。助かった!俺はルーク。君は?」


 男、いやルークがにこやかに話しかけて来た。それにしても名前か...適当でいいかな。


「えーと、リュウです。こちらこそ助かりました」

「ふむ。君、中々の腕だね。冒険者かな?」

「いえ、これから登録しに行く所です」

「へぇ、そうなのか。それなら俺が案内してあげるよ!これでも俺はこの街では有名な冒険者だからね」


 そうだったのか。それはちょうど良かった。場所がわからなくて困っていた所だ。


「それは助かります。是非よろしくお願いします」


「あ、あの、私も連れて行ってもらえないでしょうか?」


 するとさっきから無言で会話を聞いていた少女が聞いてきた。


「それは別に構わないけど、どうして?」

「実は私、回復術師をやっていて、冒険者のパーティを探してたんです。もし良かったら私パーティ組んでもらえたら、なんて思って」


 パーティとかあるのか。それにしても、自分で戦えなくても冒険者とか出来るんだな。


 そんなことを考えているとルークが手を叩いた。


「そうだ!もし良ければこの3人でパーティを組んでみないか?俺もちょうどソロは引退しようと考えていたんだ」

「本当ですか!?是非!」


 どうやらこの流れだと組むことになりそうだ。会っていきなりパーティを組むのに少し躊躇いがないわけでは無いけど、冒険者としての知識がない僕は他人の助けが必要になるだろう。ということでパーティを組んでみてもいいかもしれない。


「じゃあ僕からもお願いします」

「よし!そうと決まればギルドに急ごうか!」


 このなんて事の無さそうな2人との出会い。これがこの世に初めて出現したドラゴニュート、リュウの冒険を支えてくれる大切な仲間となることは、この時点では誰も予想していなかった。そしてこの3人は冒険者として世界中に名を轟かせることになる...でもそれはまた機会があれば話そう。


終わり


ノリで書き始めたら中途半端な所で終わってしまいました。すみません!

希望してもらえたらしっかり練り直して連載してみてもいいかなと思ってます。

読んでいただいてありがとうございました〜。

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