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イレギュラー

 『それじゃあ、転送するよ。』

ほんの一時間もしないうちに僕はまたベッドの部屋に舞い戻っていた。

 「うん。よろしく。」


大きな機械音がしたかとおもうと

いきなり電気の消えたように真っ暗になった。

そっと目を閉じて転送を待つ。


肌に触れる温度が冷たくなったり熱くなったり。

何度もやったけど、この感覚だけは慣れない。

少しだけ吐きそうになる。


一瞬眠りに落ちたような感覚のあと眼を開くと

視界一面に壁が見えた。



そのまま下に視線をずらしていくと

足元に大きな水堀。壁の根元からここまでで三メートルほど

深さは相当あるみたいだ、底が濁って見えない。

転送がずれてたら落ちるところだった。


右のほうを見れば堀にかかった大きな跳ね橋。

壁の向こう側につながっているんだろう。


『とりあえずお城の前まで転送したよ。

 クライアントは城の中でお待ちのはずだ。』


耳に付いたインカムからキツネの声が流れてくる。

なるほど。この壁は城壁なのか。

こんなにも大きな城は、

自分が魔王役をやった時でも作ってもらったことはない。


城の大きさは力の強さ。


今回のクライアントが魔王だってことを

否が応でも信頼させる大きさだ。

それにしてもなんでこんなところに飛んだんだ?

飛ばすんならクライアントの目の前まで飛ばしてくれればいいものを。


『ごめんね、少し歩かせることになる。魔王のお城なだけあって、

城内へ直接ワープする魔法は反射がかけられててね。』


さすが魔王さま。急襲への対策はばっちりってわけだ。


『右の方に歩いてもらうと、跳ね橋があるはずだ。』

―確かにある、ばっちり視界にはいっている。

『ただ、今は橋が上がってると思う。

 橋の前まで行ったらまた指示を出すよ』


「いや、跳ね橋もう降りてるけど?」


『え?そんなことはないはずなんだけど。。』


キツネの声のトーンで僕は察した。

早速イレギュラーが発生したようだ。


「ごめんキツネ。聴力の感度、上げてもらっていいかな?」

『わかった!すぐ上げる。』

インカムから何かの計器を操作する音が聞こえた。


一旦インカムを耳から外し、

目を閉じて、この世界の音に集中する。

波打つ水の音、風に揺れる草の音が鮮明に聞こえる

でも聞きたい音はこれじゃない。


地面を打つ沢山の音。

洪水のようにあふれる音の中から

その音を拾い上げる。


―間違いない、走っている人の足音だ。それも一人二人じゃない。


「タイミング悪すぎ。誰か城の中に乗り込んでるかも。」

インカムを付け直し、向こうの世界のキツネに伝える。

『え?襲撃? うっわ、最悪。』

「関係調整とか行ってる場合じゃないよコレ。

 脚力のリミッターも外してくんない?」


最初からリミッターを外す事になるなんて

今回はハズレ仕事かもしれない。


『今外した。何かあったらダイヤ、、じゃなかったクライアントの命に関わる』

今、本音でたぞキツネ。

「わかってる。」

 クライアント死亡じゃ店の看板が汚れてしまう。

数歩だけ後ろに下がり助走距離を作る。


壁に向かって走りだし、水堀のすぐ手前で大きく踏み込んだ。

一瞬で風を切り、僕の身体は壁の上に飛んでいた。


すぐさま視線を下に向け、中の状況を確認する

橋を抜けたところには大きな庭。


人間の群れが視界に入る。

障害もなく城の正面玄関までまっすぐに進んでいく。

先頭に立って城の中部に入っていく上半身裸の男が見えた。

どうやらあれが「バトルモンク」で、

先頭の彼がリーダーだ。


幸か不幸か、迎撃する魔族の姿は一切見えない。


「キツネ。麻酔銃と閃光玉使うよ。」

ベルトのバックルから閃光玉を取りながら

キツネに「使用許可」を乞う。

『。。経費が。。』


「クライアント最優先でしょ?……それに。」


『それに??』


「ああいう筋肉バカとは会話できそうにないし。」

『ああ・・そうだね。わかったよ。』


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