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クライアント抜きの打ち合わせ。

 渡された異世界の資料に目を通しながら、僕はキツネの話に耳を傾ける。

今回のお仕事は魔王さま直接の依頼らしく、あからさまにテンションが上がっているようだ。

声のトーンがいつもの数倍高く感じる。


『つまりは、魔王さまの依頼で、自分の世界の人類との共存をしたい!っていう話みたいだよ。』

目をキラキラと輝かせながらキツネは言った。

 

 可怪しい。人類と魔族の関係調整業は、キツネが一番面倒臭がる仕事なのに。


『しかもその魔王さまはこっちの世界でも伝説になってるほどの相手なんだ!』


こっちの世界で言う神話や都市伝説の中には、

何らかの偶然で異世界とリンクした人が持ち帰った話が広がったものが多い。


人面犬や口裂け女、吸血鬼に狼男。

僕は今までやってきた仕事のクライアントを思い出していた。

少なくとも、今までのクライアントの中には悪いやつや、

好んで人を襲うようなやつは居なかったけど。


中には本当にマズイ魔族も居るらしい。


『こんな「大手」クライアントと繋がれれば次の仕事の幅も広がるし、、、』


早口になっていくキツネの声を尻目に

僕は資料の文字を必死で追う。


キツネが早口になる時は

僕に何か嘘をついたり、隠し事がある時だと決まっている。


過去何度か貧乏くじを引かされたんだ。

もうあれだけはゴメンコウムルってやつだ。


『それになんたって人類と魔族の共存例を作れば

 同業他社に対して優位に立てるわけだし……』


…あった!

僕は資料の中の「この世界の資源」の欄に目を向けていた。


---鉱山資源、金 銀 ダイヤモンド


そういうことか。


どうやらキツネはこのダイヤモンドが目当てらしい。

金銀には興味が無いくせに、

宝石類になると異常なほど眼の色が変わるんだ。

あからさますぎる。。。




「わかったよ。じゃあ早速現地にいこう。」

『さっすが話が早いね、今回はどっちで行く?生身?それとも人形?』


異世界へ訪問するとき、キツネは手段を2つ提示してくれる

自分の体をそのまま異世界に持っていく方法と、さっきの仕事のように

遠隔操作できる人形を持っていく方法。


「もちろん人形で。」

僕の目は資料の中のとある一文のところで止まっていた。


---魔王さまの居城「リスト地方」

そのすぐ側に、『肉体の修練で健全な精神を目指すという「バトルモンク」の修行寺。』


こっちで言えば映画で見るような少林寺のようなところだろう。


関係を調整したいってことは、このバトルモンクとやらとモメているに違いない。


ただでさえ面倒な調整業だっていうのに。

こんな筋肉で会話しそうな人種の居るところに

生身で行くなんてごめんだ。


僕は格闘技の強い血統でもないし、

特別な必殺技を持っているわけでもないんだから。


『さすが資料を隅々まで読み込む男だねぇ。

 生身で行ってヤラレそうになるかと思ったのに』


ニヤニヤと笑みを浮かべるキツネに少しだけ苛立ちながら

僕はベッドの部屋に戻ることにした。



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