木星【400文字小説】
星がきれいなことで有名な丘の上。
少女は、天体望遠鏡を一生懸命のぞき込んでいた。
彼女は、木星を見るためにここへ来たのだ。
学校の授業で木星は大きい星と聞いたから、ここまでくればよく見えるのではないかと思ってきたが、どの星も小さくて、どれが木星かわからなかった。
そこで、父が大切にしていた天体望遠鏡をこっそり借りてここに来たのだ。
「えっと、使い方は……」
あまり大きくない望遠鏡だが、それをのぞけばいつもは小さな星々がいくらか大きく見えた。
それを使ってあたりをぐるぐると見回してみるけれどやっぱり、どれが木星かわからなかった。
何時の見えている月よりも大きいはずの木星がどうして見えないんだろう?
方向が違うだとか、ここからは見えないのかもしれないとかいろいろ考えてはみるけれど、どうして見えないかまではわからなかった。
その日も少女は、木星を見れなかった。
実は、彼女が見た星の中に木星があったと知るのは先の話……