5枚 澪・天・岳也
うぅ~ん黒い、暗いけれど、がんばれ穂乃!たち!
澪視点も入ってます。一人称で判断してください。
「姉ちゃんはさ、アタシのことよりもあの人達のことの方が嫌いでしょう?
はっきり言って大っきらいでしょ。この家に居たくないから、朝早くに出るんでしょ?」
「そういうわけじゃ、ない。」
私は机に目を向ける。
妹は当然のように私の机に朝を乗っけた。
「何・・・?」
「アタシさ、姉ちゃんのこと嫌いてわけじゃない。むしろ、自慢すべき姉なことは知ってる。
でも、知ってるからこそ、思うんだよ。なんでこんな奴が世間的には偉いのか。
なんでアタシはみんなに蔑まれながら生きてるのに、姉ちゃんはぬくぬく育ってるのかさ。ムカつくよ。」
ぺらぺらとよく喋る。
何か言おうと、妹の方を見ると、
先程までは涼しい顔で話していたくせに、今度は私を睨んできた。
すごい顔、だった。普段の綺麗な顔からは想像もできない、蛇にでも睨まれたかのような威圧感。
蛇とか、鬼とか、肉食獣とかに、とにかく獣的だった。八重歯があるせいかもしれない。
「風呂入るんじゃなかったの?」
「・・・そうだった。でもさ、姉ちゃんが帰ってくるのなんて次はいつになるかわからないし。
今のうちに聞いとこうと思ったんだよ。姉ちゃんはあの人達を許すつもり無いもんね。
お兄ちゃん・・のことでしょ?」
あの人達、っていうのはたぶん両親のことだろう。
私と同じく、この家にあまり帰ってこない。
この家にまともに暮らしているのは、妹くらいのものだった。
そして、今妹がいった。【お兄ちゃん】というのは
「その話はしないで。」
「気にしてるんじゃん。」
「気にしてる、気にしないの話じゃなくて、もう、終わったことだから。やめてっていってるの。」
「怒るんだ姉ちゃんでも。終わったことをずっと気にしてるくせに。
くだんないね。風呂入る。姉ちゃん、アタシのモノ勝手に触んないでよ。」
妹は、澪は私の嫌な記憶を知っている、上辺だけは。
そのくせ、知ったような顔で語る。
私は、そんな澪は嫌いだった。自分の兄を他人事のように振る舞う妹が。
私が、両親に慣れないのも、慣れさせないのも、妹と触れ合わないのも、名前で呼ばないのも、
兄のことが関係している。気にしていないようにしていても、私には気にすることがあった。
妹が、走って戻ってきた。にやついた笑顔で。
人をイライラさせる笑顔で。
「私、風呂上がって着替えたら、遊びに行くからね。」
「今、9時だけど。」
「関係ないよ。ココに居たくないんだよ。危ないことはしてないから。」
「・・・。」
もう、私は黙っていることにした。
結局風呂から上がったのは、2時間もたったころ。
私がベッドに入ってからだった。
「姉ちゃん、もう寝た?だろうね。」
服を着ている音がした。しばらくして、息を呑む音がした。
私ではなく、当然妹のものだった。
たぶん、私が置いてい置いたものに驚いたんだと思う。
中学のときは、できなかったから、今回くらいは祝おうと、机の音に置いておいた。
「・・・・。ムカつく。」
そういって、妹は部屋も出て行った。
喜んでは、もらえなかったらしい。
♦
アタシと姉ちゃんはよく、義姉妹と思われる。
アタシと姉ちゃんは似ていない。性格も、顔も、体格も。
それぐらい、相反している。正反対といってもいいくらいのものだった。
小さい頃はそれなりに仲は良かった。今は、わからないけどね。
小さい頃、厳密に言えば、お兄ちゃんが居たころ、生きていた頃。
私が、小学生になって、5年がたったころのことで、詳しいことは伏せるけれど、
両親とおまけにアタシのせいで、お兄ちゃんは、死んだ。この世から絶って行った。
それからは、姉ちゃんは、一変した。
まずは、両親から遠ざかった。そして、アタシをめったに名前で呼ばなくなった。
それから、両親を『父』とも『母』とも呼ばなくなり、アタシを目に見えて避け始めた。
その頃は中学生になろうとする心の不安定感のせいで、アタシとの距離は少し戻った。
会話をするくらいには、けど、アタシは別に姉ちゃんがそうしたいなら、アタシなんて完全無視して良いと思う。
アタシはお兄ちゃんの事件のことを姉ちゃんに悪いと思っていない。
そんなことを考えながら、部屋に戻って服を探している最中、気付いた。
ふと横の学習机には箱があった。
何も言えなかった。姉ちゃんはたぶんまだ起きてる。
さっさと服を着て部屋をでる。」
「・・・ムカつく。」
その箱にはメッセージとプレゼントが入っていた。
『高校入学おめでとう。私みたいにはならないと思うけど頑張ればいい。
3年前には祝えなかったから、今年は値を張るものを買いました。恥ずかしかった。』
その箱には、時計が入っていた。アタシが、好きな奴を覚えてくれてた。
その下にもう一つ紙が入っていた、そこには。
『遊んでもいいけど、時間は忘れないで。心配するだろうから、あの人達が。』
そこに、姉のことは書いてなかった。
「こんなの、つけれない。」
アタシはその時計をポケットに突っ込んだ。きっと、捨てはしなくとも、つけることは、できない。
アタシが、岳也 たかや お兄ちゃんにしたことに対する鎖にも感じる。
朝、学校への道を歩いていたら、穂乃ちゃんからのメールが来た。
『今日はね、手巻き寿司だよ!ヒナの進級祝いとソラちゃんの進級祝い!
蜜柑と柚子もだくどね。みんなで食べよお! ・・・ごめんね、しゃうゆ、買ててきて!』
穂乃ちゃんは、打ち間違いこそあったものの、一生懸命に打ってくれたらしい。
『わかった。行くよ。』
しばらくすると、今度は結さんから、来た。
『ソラちゃん。泊まりにくるの?ヒナが嬉しそうにしてたよ。
私も嬉しいな。ありがとう。最近、心配だったんだ。何もないなら、早く帰っておいで。』
「・・・。」
『来て』じゃなくて、『帰って』そんな単語一つが、嬉しかった。
お兄ちゃんの話はまた今度、暗い話が続いたので、
少し普段の生活に触れてみようと思います。