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ヒトに価値が有りや無しや?
アレクシアは問い掛けた。答えなど眼を見ればわかる。根底にあるのは虚無であることは、一目で見抜いた。
だからこそ、アレクシアは価値が“有る”と答えた。当然それは氷の華たる彼女の真意ではない。柳水仙という少女の心を揺さぶる為だけの虚言に過ぎない。
改めて断じようか。ヒトに価値などないと。
面白い人間も確かに存在するが、それは面白いだけだ。他と同様に死に向かうだけの命ならば価値はない。短くはない時を生き、それこそ数え切れない程の稀有な体験をしてきた。だからこそ、断ずる事が出来る。当然、己もまた、価値はない。
今までの経験から、アレクシアはその思考へと達した。
だが、あの少女はどうだ?
アレクシアよりもずっと若い水仙が、同等の思考へと至っている。少女はどう生き、何を考えてきたのか。興味は尽きない。
しかし、柳水仙は人間という種に絶望しきってはいないらしい。問い掛けの言葉を耳にした時のあの表情は傑作だった。
無いとは思うが、万が一にも有るのかもしれない。いや、価値が有ると思いたい。殺す事で断たれる未来。もしその後に価値があったとしたら―――――
そんな憧憬が見て取れた。
そう、心の奥底では、彼女は決めかねているのだ。
本当に可愛らしい。
若人の特権とも言える。
甘ったるい理想に、どうしても手が伸びてしまう。
「さて、柳水仙。キミはどうなるのかな?」
私とは違う思考に至るのか、それとも。
クッと漏れ出た笑い声に、アレクシアはそっと頬に手を当てる。どうにも、あの少女の事を考えると感情が外に出たがるらしい。頬に這わせた手から伝わる感触は、元の鉄面皮に戻った事を感じさせた。
『御苦労さまです。アレクシアは中ですね』
ふと耳に入った声に石動沙織は戻ってきた事を悟る。部屋の前に待機しているSPに声をかけたところらしい。




