表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
仕訳人、始めました  作者: 伊乃
第三章『舞踏会、承ります』
47/67

3-1

以降のパートは、『倫理観、人生観、価値感』が現代の一般的な思考と異なっています。用法要領を守って正しく摂取をお願いします。

 飛び出した先に、何かが居た。満身創痍と言えど、気配を感じ取れないなんてことは、あるわけがない。では、目の前に居る女は何なのか。

 表情から読み取れる感情は皆無。同性から見ても見惚れる程に整っている分、人形めいている。その女まで後三メートル。どれだけ近寄ろうと、気配が感じ取れないのは何故だ。構うものか、と思考し、しかし水仙は本能的に脚を止めた。

 止まれ、近づくな。

 結果が予測出来ない以上、触れるべきではない。

 目の前のコレは、得体が知れない。


「有難いな。衝突でもされたら、流石に死んでいたよ」


 見れば対面の石動沙織も脚を止めていた。呆気に取られたような顔だが、徐々に憤ってゆくのが見える。言ってみれば、一目惚れの相手との逢瀬を楽しんでいたのに、水を差されたようなもの。無粋な横槍は、マナー違反だ。


「アレクシア、観客席に座っていてくださいと申し上げたはずですが」


 殺気が納まる代わりに台頭してきたのは怒気。アレクシアと呼ばれた女性に詰めよりながら、沙織は遠くの暗闇を指差していた。目を凝らせば、慌てたように動き出した男たちの影が数人分見える。


「用があるから出てきた。私も出迎えると言っただろう? ―――ほら、まだ私は主賓に挨拶すらしていない」


 アクレシアは詰め寄る沙織の迫力に気圧される事も無く、無表情のまま大袈裟に肩を竦めてみせた。駆け寄ってくる男たちが水仙とアレクシアの間に入ろうとするが、手で制する。沙織もまた口を挟もうとするが、僅かの逡巡の後押し黙った。代わりに漏れだすのは大きな溜息。言っても無駄だと思ったらしい「勝手にしてください」と言い置いて背を向けてしまった。

 そんな沙織の態度にも、アレクシアはひらひらと手を振るだけ。意にも介していない様子のまま、目の前に佇む少女に視線を向けた。


「キミが柳水仙だな。成程、猛獣だが、存外可愛らしい顔をしているじゃないか」


 水仙に油断はなく、周囲を威嚇するように殺気は十二分に放たれている。しかし、アレクシアは気にも留めていない。屈強なボディガード達が尻込みする程の殺意が放たれる中、平然と水仙へと歩を進めてきた。


「そう警戒するな。少なくとも、私に敵意はないぞ。ああ、害意もない。単純に興味があるだけだ。少しばかり、話をしようじゃないか」


 美しすぎる能面とでも言えばいいのか。一見すれば楽しげにも取れる口調だが、表情は全く動いていない。水仙は動く事も出来ぬまま、アレクシアが己の領土を侵すのを許した。動くな、とでも言われたかのように、水仙は一ミリも動かない。



「なあキミ。人殺しは罪だと思うか?」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ