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「いえいえ、私も楽しみたいもので」
とんでもない、と革の手袋で包まれた両手を振る沙織。おどけるような仕草であろうと、殺意の濃さは微塵も揺らぐ事はない。
「男性役なら、しっかりリードしてくれるんでしょうねー」
徐々に徐々に、ボルテージは上がってゆく。そんな中、水仙は冷静に相対する女の姿を観察に勤しむことにした。
グレーのパンツスーツを着こなし、小ざっぱりと切り揃えた髪型を見る限り性格は真面目。切れ長の相貌はオフィスであればクールビューティーとでも評される類の女性だ。均整の取れた身体は無駄がなく、美しいと言って良い。武装はナイフ一つなのかどうなのか、全く判断がつかないが、先の体術を見る限り得物は必要なさそうにも思える。しかし、メインが体術であるなら、奇襲と言えどナイフの投擲を選ぶだろうか。
「鋭意努力致します。あまり器用ではありませんので、足を踏んでも御愛嬌ということで一つ」
結局、水仙はあれこれ考える事を放棄した。何をされようとも、対応すれば良いだけの話。同族同士、精々気の合ったダンスを披露しよう。
「それは私の台詞だと思いますけどねー。まあ、取りあえず―――」
腹の探り合いでも、牽制でもない会話はもうすぐ終わる。
お互い、もう待ち切れない。
「そうですね。お嬢さん、私と一曲―――」
互いが一歩を踏み出した。
加速する。
時間も、感情も、その他諸々をひっくるめて。
「―――踊りませんか?」
「―――ええ、喜んで」




