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少女―――柳水仙はとあるホテルに居た。超一流と言われるようなランクのそこは、明らかに少女の出で立ちでは浮いている。しかし、流石は一流と言うべきか、ベルボーイですら訝しむような視線を向けることはなかった。
「あのーちょっと聞きたいんだけどー」
水仙は常人であれば気遅れするような空間の中でも己のスタンスを崩さない。眠たげな顔のまま、ホテルマンに声をかけた。自分の娘もかくやというレベルに歳の離れた少女に対しても、プロのサービスは変わらない。
「はい、如何しましたか?」
「えーと、何だっけ。うーんと………ああ、上泉。上泉っていう人の部屋に通して欲しいんですけどー」
少々お待ちください、と恭しく一礼したホテルマンは受付へと歩き去った。待つ間、水仙はぼんやりとした瞳を周囲に向ける。
磨かれた大理石で作られたエントランス。そこから一歩進めばくるぶしまで埋まるような豪奢な絨毯が利用客を歓迎する。高い天井を見れば、シャンデリアが温かな光を放っていた。丁寧に整えられた観葉植物、飾られた花もまたお高いのだろう。サラリーの為に日々をあくせくと働く一般人には、全く持って縁のない場所である。
しかし、落ちついた造りにはなっているが、見る者が見れば、それは醜悪とも言える。贅をこらした調度品、土地を惜しげも無く使った広大な空間。金があれば、それが正義なのだとでも言いたげに見える。盛者必衰、その理を知らぬはずもないのに。
どうでもいいことだけど、と思いながらも、少女は観察を続けた。
「お待たせ致しました。こちらへどうぞ」
ぼんやりと視線を巡らせているところに、声がかかった。普通であれば、素生だの何だのを聞かれるだろうに。前もって上泉氏からお達しがあったのか、受付で確認をしたのか。
「はいはーい」
一礼して歩き出すホテルマンに後について水仙は歩き出す。ふわふわとした絨毯を歩いていることもあるが、その足音は皆無。ホテルマンは幾度となく背後の気配を確認しながら、歩を進めている。
広大なフロントを横断し、奥まった場所にあるエレベーターへ。大きな扉を構えるそれは、他の客を乗せる事も無くそこにあった。
促されるまま、少女はそのエレベーターに乗り込む。階数表示のあるボタンは二つだけ。一階、そして二十二階。なるほど、直通のエレベーターということらしい。するりと動き始めた感覚を覚えながら、水仙は黙ってガラスの壁を見つめる。
程なくして、ガラス越しに地上が視界に入った。ホテルに向かっている時に何となく気付いてはいたが、大きな都市の一等地にあるにも関わらず、自然に囲まれている。ホテルビルを囲む森を抜ければ湖があった。景観も文句なしとなれば、ブルジョワジーたちは好んでこの施設を利用するのかもしれない。
ちん、と到着を知らせるベルの音。意識を目の前に戻せば、最上階スウィートルームが広がっていた。
惜しげも無く並べたてられた高価な調度品の数々。無駄とも言える広さの部屋の窓はガラス張りになっており、街を見渡す眺望が広がっている。
「どうもー」