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仕訳人、始めました  作者: 伊乃
第二章『面倒事、承ります』
27/67

4-1

以前の物と差し替えです。ちょっと投稿順番を間違えました。

 ぬいぐるみを小脇に抱え、石動沙織は腕をぶらぶらと振っていた。ドーナツの紙袋はそこらに居たタクシーの運転手に押しつけ、手は自由になっている。右脇にぬいぐるみを挟むように抱えている以上、そちらの腕は動かす事は出来ないが。


(骨に異常はないものの、鉄板を殴りつけてもこうはなりませんよ…)


 衝突した拳と掌低の余波か、腕が痺れ、だるい。今まで数々の荒事を担当してきた沙織でも、ここまで残ることはなかった。

 まったくもって、笑えない。見た目女子高生と互角というのも、何だか歳の数だけ負けた気はするのだ。


(まあ、この子は確保出来ているので良しとしましょう)


 脇に抱えたぬいぐるみのつぶらな瞳が沙織を見上げている。どう見ても虎と獅子のキメラ。それはそれとして十二分に可愛く造られているのだから、ようやく手に入れた者としては大変に満足である。

 その愛らしい顔を眺めれば蕩けてしまいそうになる顔を鉄の自制心で抑制し、沙織はビジネスホテルに入ってゆく。水仙らが通う鏡花高校の最寄り駅から三つほど離れた駅に隣接するホテルだ。高めに見積もっても中級クラスの域を出ない、出張サラリーマン御用達の寝床である。

 沙織はロビーを颯爽と抜けるべく、ヒールの音を響かせる。キャリアウーマン然とした女性の腕に抱かれたぬいぐるみが、得も言われぬ場違い感を醸し出していた。受付スタッフの好奇の視線をさらりと受け流し、彼女は狭いエレベーターへと身を滑り込ませる。


(可愛いのに。ぼんでタイガー)


 ねえ、と物言わぬぬいぐるみに語りかけながら七階のボタンを押した。数の加算されてゆく電光表示をぼんやりと見つめながら、壁に寄りかかる。今更だが、ヒールは大丈夫だろうか。などと呑気に考えていると、目的の階層に到着した。

 埃っぽいのか、それとも入れ替わり立ち替わり人間が変わるせいか、独特の匂いで出迎える通路を抜け、735号室へと向かう。仮住まいとなっているそこで、情報と所見をまとめなければならない。


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