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仕訳人、始めました  作者: 伊乃
第二章『面倒事、承ります』
18/67

2-2

「あはは。暗くなる前で良かったねぇ」


 猫のような水仙を見て、小柄な少女はころころと嬉しそうに笑う。ふんわりとした笑顔に見合った緩くウェーブのかかった薄茶色の長い髪が陽光に輝く。この少女の名前は五十嵐世里。絶壁こと都筑詠子と対極を為すトランジスタグラマーである。


「あれれ、変態はー?」


 無論、四法院美影の事だ。


「美影なら今日はアルバイトあるからって帰ったわ」


 言わずとも通じるあたり、共通認識であることが伺えた。


「水ちゃんの寝顔見て蕩けてたね。凄く気色悪かったなぁ」


 にこにこと、無邪気な笑顔のまま、ちびっこ世里は毒を吐く。水仙、詠子の両名とも慣れているのか、何を言うでもない。

 四法院美影、都筑詠子、五十嵐世里、そして柳水仙。この四人はよくつるんで遊んでいた。四者四様の性格だが、不思議と馬が合ったらしく、高校入学以来の付き合いである。柳水仙という人間からすれば、知人の域を出ないまでも、彼女ら以上に気を許せる存在もいなかった。


「取りあえず、帰りましょう。どこか寄っていく?」


 詠子は二人に聞きながら歩き出す。気だるげな水仙も、仕方なしについていくことにしたらしい。きびきびと歩く詠子に遅れまいと、世里が続く。


「ミセドいきたいー。ぼんでりんぐー」


 ミセスドーナッツ。数十種類のドーナツやパイを販売するチェーン店であるそれは、お手軽な甘味どころとして世の女性に支持されている。持ち帰りだけでなく、店内にも飲食スペースがあり、夕方にもなれば学校帰りの学生で溢れかえることになる。


「水ちゃんさりげなくポイント貯めてたよね。今どのくらい?」


 歩くスピードの早い詠子に遅れぬよう、だらだらとゆっくり歩く水仙の手を引くのは世里の役目である。他の三人が割と唯我独尊なため、何かと損な役回りになりがちではあるが、本人は至って気にしていないらしい。


「今ねー、えーと………600ちょいちょい」


 片手を世里に取られ、もう片方の手で指折り数えながら返答する。カードのポイントを思い出していたのだろう。


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