28話 なんで宇宙は真っ黒なの?解決編その4
〈なんで宇宙は真っ黒なの?解決編その4〉
〔二胡仁悟の視点〕
哀しみは、分かち合うべきだろうか?
哀しみが分割払い可能なら話は別だ。
でも、哀しみが伝播したとき。意図せずに人を哀しませた事実が本人に突きつけられたら?
哀しみを増すくらい辛い場合だってある。
結局のところこう言いたいだけだ。
ハマグリちゃんAが友達が欲しい理由と同じく、ハマグリちゃんAの泣く理由を推しはかることはやめようと思う。
ハマグリちゃんAとB同士。もしくは、浜さんと親しくなりたいという気持ちを汲み取れば良い。
「残念だが、お前に私は救えないさ。」
「ちょくちょく思考を読んでる?」
「まぁ、全部読んでるが。」
「oh…オーマイゴッド。」
「はい?なんでしょー?」
「この方の記憶を消す方法はありますか?」
「うーん。どーかなー?キオクかぁ。タシカに、ウまれたトキからキノウまでのゼンブのキオクがワタチにはノコってるモン。」
「いや!オーマイガー!凄いな…」
「はい!ゴッドでガーなワタチはスゴいのです。ハマグリちゃんAはどーなの?」
「…確かに、忘却は経験したことがない。」
「でも、その辛い何かを忘れたいって思う?」
「それは……」
「よし、宇宙が真っ黒な理由を考えよう。手伝ってくれる?」
ハマグリちゃんAは笑っていた。
「なるほど、人との距離感の掴めないお前が神との距離感を掴めるわけがないからな。ようやく浜宮離子の人選理由が分かってきたぞ。」
「そうだ。私のことはもういい。ここから出るぞ。」
「うん。」 「ウン!」
神様への向き合い方にしては馴れ馴れしすぎるのか?
それでも…神でも人でも助けるのなら勇気を振り絞れ!
「なんで、宇宙が真っ黒なのか…それは…」
で、結局検索エンジンをカンニングしている。
「えと?『宇宙空間はほとんど完全な真空状態で、光を反射する粒子がない』のと?『宇宙のはじまりと膨張によって、遠くの星の光が限りがあるもので、届かなくなるし、届いても膨張によって引き伸ばされて目に見えない赤外線になる』らしいけど…」
「ネット民はいつだって、ネットの情報には嘘と間違いしかないことを知ってる。ワイの人生訓も『ネットに書かれてる情報を鵜呑みにしない。』だからね。」
「で、その科学的事実が間違いだと言い張るのなら、君の答えはなんだ?」
「簡単だよ。逆転させればいいんだよ。っていうか、それくらいのことしかワイには無理だからね。浜さんならともかくね。」
「宇宙空間は、感じ取れない黒い粒子で満ち満ちていて光が反射しまくって明るさで溢れているんだ!そんでね、宇宙はもう終わりかけて萎んでるんだよ。だから光もほんとは届いてる。」
「それはホントウなの?」
「本当…だよ…これが事実。勉強になったね。」
「はぁ〜。ガイジか?貴様。」
「おい!“君”呼びで統一してよ!格下げされた感が凄いんだけど!」
「それが、なんの助けになるんだ。別に期待してなかったがな。」
でも、その言葉の並びの毒気を抑えつけるように、イントネーションや発音は温かさを含んでいた。
少なくとも、ワイにはそう感じた。
「それじゃーね、ナガいのよ。だからね、ワタチヨウにコトバをチーさくして。」
「宇宙が真っ黒な理由。ワイの人生訓通りなら、粒々でいっぱいの宇宙。終わる宇宙。萎んでいく宇宙。」
「インターネットの中の情報なら、ほとんど真空な宇宙。始まったことの分かる宇宙。膨らんでいく宇宙。」
真逆というか、正反対に並んだ二つ。まあ、明らかにワイの人生訓に従った方は間違いだと言われるだろう。
ハマグリちゃんAとBにも、そんな雰囲気を感じる。
特に、ハマグリちゃんAの方の『自分の存在は間違ってる』という意識は、必死に隠そうとしていても、漏れて伝わってしまっているのが分かる。
でも、どちらも正しくもないし、どちらも正しいとするなら?
科学とかはあくまでも補強パーツだ。
考え方の根幹を担うのはいつだってデタラメなことだ。
宇宙が膨張してる?ビッグバンで宇宙が始まった?
何も知らないのなら、デタラメに聞こえてしまうものだ。
今のワイの考えも、科学が証明してくれなくても、もしかしたら科学的事実と同じくらい力を持つメジャーな考え方になってるかも。
ハマグリちゃんAにも自信を持って欲しい。
言葉が強かったり、威圧感に覆われた中でもどこか消えてしまいそうだから。
会ってから間もない、ていうか初対面だけど…消えないで欲しい。
「ハマグリちゃんB!ハマグリちゃんAを任せても良いかい?」
「ガッテンショウチィ〜!!」
「ワイは考えた。ネットに転がる情報が嘘か間違いしかないって言ってるネット民の真意。インターネットは、正しさにも、間違いにも囚われない場所なんだ。」
「滅茶苦茶でも、精巧で緻密でも。くだらなくても、崇高でも。インターネットでは上下もなく等しく同じ情報として並んでる。」
「一見真逆のものがとなり同士で並ぶ。間違いも正しいもなく、情報として。ワイも。どれだけ凄くっても、ハマグリちゃんAもハマグリちゃんBも。だから…答えを…」
「“時間”だ。時間のおかげだったんだ。そして、時間のせいだったんだ。」
「満たされてるけど空っぽに感じるもの。膨らんで大きくなるように感じる一方で、萎んで小さく感じるもの。二つはまんまだ。相対性理論をアインシュタインが説明するときのやつ。」
「で、始まりと終わり。これを決めたのも時間だ。時間が始まりと終わりを司っているんだ。」
「光が進むのも、光年!時間の年って字が使われてる!ほら!目に届く黒色、真っ暗な宇宙だって、時間が関わってるんだ。」
「そうか。“時間”を追加したか。夢から解放されるなら、良い答えだ。今の言い分を浜宮離子が通すなら、夢の終わりもまた、存在する。」
「これで、ようやくお別れだ。私もここで終わるとしよう。時間のおかげでようやく終わる。」
「フッフッハ!いや。ここからは、ニートワイとハマグリちゃんBによる採用面接と、シフト表作りが待ってるゾ。」
「ハマグリちゃんAさんですね〜リレキショのテーシュツおネガいします!」
「辞表を出させろ!お前らに用はもうないのだ。こんな茶番!」
「ペースに乗せられてきたろ?ワイにも分かるや…その気持ち。浜家からは逃れられないんだゾ。」
「コイツら…」
「どーしよーね?タイドワルいねー?」
「でも、ウチ、人材足りてないよぉ〜?」
「はぁ〜。もう良い。自由に決めろ。どうせ私はこの世界に元々居場所がなかったのだからな。」
「じゃあ、休日に出勤できる?」
「ん〜。それよりさ、デたいときにデればイいじゃん?」
「それ、主人格のはずのハマグリちゃんBが言うの?」
「それならさ、“セメギアイ”になるから!」
そのハマグリちゃんBの笑顔は純粋さと打算が綺麗に半分半分で混ざった顔だった。
インターネットを象徴するかのような顔だった。
「私は…拒否出来ない。しかしながら、抵抗はするぞ。今更、人と付き合うことなど、不可能だ。」
「理由は絶対違うし、深刻度なんて比べるまでもない。けど、ワイも全く同じことを考えてる。今も克服できるかは分からない。」
「だから、“せめぎ合い”なんて関係なく、一緒に勉強し直そう。ワイは、いや、オレは現実でもアナタを待ってるから。」
ハマグリちゃんAはほとんど間髪入れずに消えた。
「アレ、テれてんだよ〜」
ハマグリちゃんBはそんなことを言いながら消えた。
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起きれば、見たことのない暗い景色が広がっていた。
真っ暗だった。夜だった。
また寝た。
〈おまけ〉
〔浜宮離子の人格会議〕
「浜宮離子。私の持つ闇を宇宙の闇として質問を作ったのか。」
「そーだよ。」
「そのことは、二胡仁悟は気がついていたんだろうか。」
「さーね。」
「でも、ニコちゃんはワタチのトモダチだよ。カンケーないね。」
「でも、まぁ、嬉しかったな。」
浜宮離子は、寝た。




