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裁定の巫女は見たくない  作者: みたらい はる


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6/8

第5.5話 二人で。

第5話の延長となるお話です。(今回はさらと陽菜の関係に焦点を当てています)

「凄い綺麗だなぁ」


 隣のお嬢様はとても目の前の火の花に見惚れていた。足を伸ばし切って「あれ色んな色あるよ! 凄い!」と言いながら、さらの服を引っ張り、一人で立ち上がった。


「もう、そんなの見れば分かる」


 ため息を少し吐くが、正直この勢いには悪い気はしなかった。


「確かにそうだけど! 一緒に同じ景色を見てるんだって思うと嬉しくてさ〜」


 口角を少し下げ、穏やかな表情になると「ほら、最近色々あったしさ」と少し寂しそうに言った。

 さらは何とも言えない気持ちでただ陽菜を見つめた。バンと爆発音が鳴り、空中に鮮やかな花を咲かせた。目をキラキラ輝かせている陽菜には悪い事をしてしまったと思ったのと同時に、灰野や異土羅の顔が浮かんだ。


(今日は考えないと決めたのに)


 そんな顔をする陽菜にそっとさらは近付いて、ただ勢いに任せて手を握った。触れた瞬間、思ったより温かくて、滑らかで綺麗だと思った。

 この行動が陽菜のためなのか自分のためなのか、さらにもよく分かっていなかった。ただ、何となく握りたかった。


「どうしたの?」


 花火への視線を外してさらを見つめた。その瞳の奥にはただの優しさが溢れていた。

 陽菜からの自分の姿はどう見えているのだろうか。頼れる巫女、頼れない巫女、それとも――親友。

 陽菜はただ黙りこくるさらに目線を合わせて、片手を包み込むように握ると優しく笑った。


「何かあったの? 話、聞くよ」


 その優しさが胸に突き刺さる。そんな事を言われてしまったらどうして良いのか分からなくなってしまう。


「いや、何でもない」


「そんなわけないよ。だってさら、泣いてる」


 いつの間にか数滴の涙が頬を伝い、地面に落ちきっていた。さらは急いで服で涙を拭った。

 きっと異土羅と灰野の件でためこんだものが溢れ出てしまったのだ。


「もう、いつも誤魔化すんだから」


 陽菜は文句も言わずただしゃがんで、優しく頭を撫でてくれた。


(この優しさ、昔から変わらない)


 あの天高く満月が昇った日、さらは陽菜と出会った。

 さらが転んで怪我をした時も、同じように心配して一緒に泣いたりもした。


「ありがとう、陽菜」


「感謝するのはこっちだよ! いつも何だかんだ助けてくれるしねー」


 陽菜の顔が花火に照らされる。歯を見せて楽しそうに笑う姿。ただ見てるだけでも、頬がどうしても緩んでしまう。

 だが、さらは異土羅の言葉がどうしても脳裏によぎってしまった。


『裁定の巫女として……判断を見誤らない方がいい』


 いつもと違う異土羅だった。ただ低く。心配する間も無く警告だけを残していった。


(きっとあそこで裁定の巫女と呼んだのにも何かの意味がある)


 陽菜の手が温かく、細く美しい。まるで、心から癒してくれるようだった。


「もう、落ち着いた?」


「うん……もう大丈夫」


 そう言って、近くに置いてあった「つくね」と書かれた焼き鳥を一本取った。

 ――これから決断をする時が来る。

 その時は覚悟を持って、きっと“裁定の巫女”として対処をしなければならない。

 そう思った瞬間、握っていた手の奥で微かに鼓動がずれた気がした。


(私はきっと大丈夫)


 さらは心の中でそう唱えた。覚悟のままにこれから生きていく。


「さらとこうして話したの何気に久しぶりだね」


 離していた視線を花火にゆっくりと向けた。あの優しい暖かさが手に残ったままだ。


「……そうね。また来よう、来年も」


「うん! 楽しみに待ってる!」


(絶対に、陽菜を助けてみせる)


 さらは、そっと笑い返した。

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