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さくら簪  作者: 水嶋
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ピンゾロ桜

「いやあ、昨夜は身包み剥がされたわ」


「無我…限度を弁えろ。」


「いやなあ、鉄火場の名の如く…つい熱くなってしまったわ。なんせ壺振りの女がそりゃ良い女でなあ。」


「へえ。」


「でな、その女と一騎討ちして賭けに勝つとその女の見事な背中の昇り竜の彫り物が拝めるって訳よ。」


「へえ。」


「気に入られりゃ夜の相手もしてくれるって噂でな。」


「それでムキになって坊主になったと…」


「結局拝めなかった。ありゃ敵わんな。誰も勝てなかった」


「そりゃ相手もイカサマ師だ。素人が敵うはずもあるまい。」


「まあなあ、あれは余興みたいなもんだからなあ。入れ上げる奴は居ないだろうなあ。でも良い女だったなあ…お竜…」


「まあ高くついた夢だったな。せいぜい現実みて励め」


「分かってるよ。今度は寺元家の用心棒だろ?」


「ああ、今度はお前と一緒だな。」


「まあ、宜しくな。」


「酒は飲みすぎるなよ」


「分かってるよ。でもあそこ気前良いからなあ。今から楽しみだ」


「やれやれ」





○○○○○○○○○○





「いらっしゃい。何にする?」


「ああ…酒と…あとは適当に」


「はいよ。今日は混んでてね。悪いがそこに相席してくれ」


「分かった。」



仕事終わりに飯を食いに1人でいつもの居酒屋に来ていた。


今日は混んでいて店主に相席を頼まれた。

他所に行くのも面倒だったので、空いている席に向かった。


空いた席の隣に女が1人で飲んでいた。



「すみません…食ったらすぐ出ます…」



そう一言告げて席に着いた。



「気にしないで。私も気にしないから」



その声に聞き覚えがあった。



「美桜…さん!?」



姿はだらしなく着物を着崩していた。

しかし、顔と声は…まさしく美桜さんだった。



「私はお竜ってんだよ?誰かと間違えてないかい?」


「お竜…」




「へい、お待ちどう様」


店主が酒と肴を持って来た。



「あんた名前は?」


「…ナオ…」


「ふうん。その感じだと…浪人って所かい?」


「そうだ…」


「あたしは柿安の下屋敷の博打場で壺振ってるのさ。まあ、気が向いたら遊びに来な。」





そう言ってお竜は帰って行った。





○○○○○○○○○○




「この前言ってた賭場へ行きたいだって!?」


「ああ!連れてってくれ!」


「どうしたナオ…気でも狂ったか?」


「俺も遊ばないとな!金ならこの間の仕事でほら、この通り有る!」


「お前…3両って…気は確かか!?」


「ああ!頼む!」



「分かった、分かった。今夜賭場が開かれるから連れてってやる…多分全部持ってかれると思うがな…」







「半!」


「入りました。勝負!ピンゾロの丁!」


「…」



「お兄さん、早速来てくれたのに悪いね。」





お竜との1回勝負はあっという間に終わり、

仕事で貯めた賃金はあっという間に消えた。



「だから言っただろ〜?」


「ああ…凄いな…」


「まあ、高い勉強代だったな!ははは」


「あんな…一の目を2つ出すなんて…凄いな」


「まあ、お前が言った様にイカサマ師なんだろさ。あれは余興だ。元締の女だからな。後はまともな壺振りがやるから、俺は遊んで行く。お前はどうする?」


「俺は無一文だからな。大人しく帰るさ」


「じゃあ、またな!」




お竜は…美桜さんなんだろうか?

江戸にいるのだろうか?

だとしたら俺に気付いていないんだろうか?


やっぱり近くで見てもよく似ていた。

しかし俺も今は…

身なりは酷いし頭はざんばらだ。


 



しかし、暫くは大人しく働かないと家賃も払えないな。


明日からは寺元家で用心棒だから飯位はありつけるだろう。




○○○○○○○○○○





「私は○○藩の城主より遣わされました坂田源次郎と申します。我が藩より脱藩した佐伯辰之進と言う男を探しております。何かご存じな事が有りましたら…」




用心棒先に源次郎が俺を探しに来ていた。


俺は咄嗟に隠れた。


俺は貴久を殺して脱藩した。


罪人を追って藩が俺を探しているんだろう。

もしかしたら加茂の仇討ちかも知れない…


しかし、それを言ったら俺は無実の父上と兄上を殺されている。


母上は俺が幼い頃に病で亡くなっていた。

兄上はまるで母上の様に俺を可愛がってくれた。


そんな兄上を…

あの頃の事を思い出して歯をギリギリと噛み締めていた。


もう、いっそ飛び出して藩に戻って賀茂を切り捨ててやろうか…

そんな事を考えていた。





暫くして源次郎は帰って行った。


寺元と柿安の家は歴史ある家柄だった様ですね

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