第48話 学園襲撃2
〈会長視点〉
さて…
美香達がいなくなり、静かになった生徒会室。
一人になった僕は足止めの為の準備を始める。と言っても、持って行くのは万が一主犯格の人物が捕縛が出来る状況になった時に使うロープだけだ。
もう一度敵の位置を確認する。動き的にどうやら敵は校庭から攻めて来る様だ。
準備も終わったので、生徒会室を出て、階段を降り、校庭へと向かう。生徒会室から飛び降りる事も出来るが、そんな事の為に貴重な魔力を使いたくはない。
校庭に出て、周囲を見渡す。今回の襲撃の主力であろうモンスター達は、すぐ傍まで来ていた。時間が停まったかの様にピクリとも動かないモンスターの軍団の中、一人の女性がいた。ここは危険…いや、モンスターと一緒と言う事はこいつが襲撃犯と見て良いだろう。
「一応確認しておきますが、貴女の所属と目的は?」
ほぼあり得ない事だが、迷ってしまった一般人、もしくは、人質にだった場合、少し面倒臭いので一応聞く。だが、やはりと言うべきか帰ってきた返答は以下の通りだ。
「そう言う君が誰なのか気になるけど…まあ良いわ。教えてあげる。私達の目的は、この国の混乱。今回の襲撃はその為の時間稼ぎよ」
国の混乱を起こす為の時間稼ぎ?だが、何故このタイミングでこの学園なんだ?今の学園に居る生徒達には、足止めをされる様な強さの人物はほぼ居ない。足止めをしなければならない強さの代表例である双葉達は攻略に行っているはずだ。では、誰の足止めをしたいんだ?
先程の言動から、僕が対象でない事は明らかだ。つまり、僕以外の学園内の強者。生徒は除外して考えると…こいつが足止めをしたいのは教師陣の中の誰かか?
「考察は終わったかな?」
女がそう口にした瞬間、学園に設置されている緊急用のベルが鳴った。
ビーーーーッ!!!
『現在、学園敷地内にて、多数のモンスター及び、複数の不審な人物を発見しました。生徒の皆さんは安全の為、直ちに避難してください。これは、訓練ではありません。繰り返します―――――――――――』
美香が校内放送を使い、避難を促す。どうやら、避難誘導は順調に出来ている様だ。
この女が放送を止めようと動かない事を疑問に思い、回答は期待していないが、駄目もとで聞いてみる事にした。
「止めなくて良いのか?」
「良いのよ。一か所に避難してくれる方が都合が良い…って、話しすぎちゃったわね。そろそろ予定の時間だし、それじゃあ始めましょうか」
ピィーーーッ!!
女が手に持っていた笛の様な物が吹かれ、甲高い音が学園内に響き渡る。
その後、モンスターが動き出した。
「クソ!」
出来れば、もう少し時間を稼ぎたかったが、仕方ない。こうなれば、美香が来るまで精一杯時間を稼がなければ…美香が間に合わなければ、最悪このまま数で押し切られる。
固有を発動し、モンスターを殺す。だが、この数だと、一匹、一匹、処理をすると押し込まれる。一回の攻撃で、最低でも五匹は殺す。そうして、モンスターを殺そうと意識を集中させた瞬間、女から魔術が飛んできた。
「死霊を倒す所を黙って見ているとでも?」
は?今、こいつは、今、何と言った?死霊?死霊だと!?ここに居るモンスターの全てが死霊だとでも言うのか?ただでさえ数が多いのに、光系統の魔術以外では復活する死霊だと?ふざけるな!!!あまりに理不尽な状況のせいで攻撃が雑になる。それを見ていた女が少し笑い、聞いてもいない情報を話し始めた。
「怒っている君を更に絶望に落とすようなことは忍びないけど、面白そうだから教えてあげる。これを操っているのは私じゃないわ。彼は、今頃学園内でしょうね」
今までの言動から、こいつが操っていると思っていたのだが、別にいるのか。しかも学園内…厄介だ。このまま戦うとしても、おそらく最後まで魔力が持たない。
…美香が早く来てくれる事に賭けるしか無いか。美香さえ来てくれれば、この盤面でも、まだ引っ繰り返せる。
美香が早く来てくれる事を祈りつつ、少しずつ死霊達を戦闘不能にする。五分経過すると復活するが、何もしないよりはマシだろう。
一度倒しても復活する敵がここまで面倒臭いとは…足止めだけだとは言え4000は厳しい。面倒臭いな。そう思いながら、僕は戦う。後は僕の運次第だ。
幸運の女神は微笑む相手を選ばない―――――




