第47話 学園襲撃1
〈会長視点〉
侵攻歴三十四年九月十日
夏も終わり、少しずつ涼しくなっているが、未だに暑さは止まず、燦々と降り注ぐ陽光がその存在感を示している今日この頃。僕は今、生徒会室にて紅茶を嗜んでいる。
今日の分の生徒会の仕事は、朝の一時間程で全て終わらせているので、今はゆっくりと休憩のできる時間だ。何か問題を起こしそうな人物の大半は今日予定があるので、仕事が追加される可能性は低いだろう。
仕事が追加されない事を嬉しく思いつつ、紅茶を飲む。うん、良い香りだ。
そのようにゆったりとした時間を過ごしていると、誰かが廊下を走る音が聞こえた。
何かを目指し、急いでいるであろうその足音は僕のいる生徒会室の前で止まった。
…嫌な予感がする。
大丈夫だ、そんな訳が無い。仮にそうであったとしても、きっと大した事じゃない。
そう自分に言い聞かせ、乱れてしまった精神を落ち着かせる。
そうしているとドアが大きな音と主に開かれた。
バン!!!
ドアを開けた人物は深呼吸をしている。恐らく体力が無いのに走ったせいだろう。その状態では会話が困難だったので、少しマシになったと思われるタイミングで声を掛ける事にした。
「どうしてここに来たのかな?ロマン実現部の部長、講究ユメさん」
「…まさか僕の事を会長が認知していたとは!喜ばしい事だね~」
そう言って喜んでいる。
なら、僕が彼女の事を知っているのは、蓮君が入って部活である事と、彼女自身の実験結果から付けられた悪名のせいだと言う事は本人には言わない方が良いか。
「…って!それ所じゃないんだよ!会長!この学園の近くに何か変な感じがあるんだけど、それが何か僕には分からないんだ。もしかすると侵入者の可能性がある。確認して欲しい」
あまり信じていないが、何かあった場合まずいので、ユメに言われた通り固有を使用し、学園の周囲を確認する。
は~
学園の周囲の確認を終えた僕の口から思わず溜息が出た。
「ズルいな~。双葉君は。何だい?この敵の数は…」
思わず、そう言ってしまった。恐らく、これが双葉君が言っていた事だろう。この状況で逃げるなとは双葉君は鬼畜だ。
当たり前だが、それが全部では無いだろう。中には強く無い数合わせの為の個体もいるだろう。だが、確認できただけで少なくとも4000はいる。何も無い広い場所で僕と美香対4000ならば、勝率が上がるのだが、学園の生徒をましてや校舎も守るならば、厳しい戦いになる。あの時、約束をしなければ良かった。今更後悔しても後の祭りだが、あの時の僕の行動に後悔し、同時に双葉君にイラっとした。
僕との約束がしっかりと守られているので余計に神経を逆撫でられる。僕が頑張ればどうにか出来そうなこの状況。だからこそ、ギリギリこの前の約束の範囲内…これじゃあちゃんと戦わないといけないじゃ無いか。
これからの事を思うと、ストレスで胃が痛くなりそうだ。この年齢で胃痛持ちにはなりたく無い。…そうだ!こんな時はレイロニウムをキメよう。
『思い立ったらすぐ行動』の精神で、僕は騒ぎを聞きつけて生徒会室に来ていた美香に「今すぐレイロニウムをキメたいんだけどダメ?」と聞いた。その質問を聞いた美香に「これが終わるまでダメ!」と言われた。……よし!あの襲撃犯共を今すぐ殲滅しよう。そう思っていたが、口に出ていた様だ。僕がそれを言った瞬間、美香に反対された。
「落ち着いて。まだ、私達が襲撃の事を認識した事はバレて無い。私達が、襲撃の事に気が付いたと言う事が襲撃犯にバレる前に、生徒の避難を私とこの子でするからあなた一人で足止め出来ない?」
「無茶振り…では無いか。僕がその為の時間を稼ぐ事、本当にできると思ってる?」
「あの…僕の意見は?僕も避難の対象じゃないの?」
「『貴方なら大丈夫』って言う信頼の証よ」
『信頼』か、負けれない理由が増えたな…
中等部の防衛が一人なのは厳しいが、愛する人の頼みだ。その位やって見せるさ。
「分かった。まず二人で避難誘導をしてくれ、その為の時間は僕が稼ぐ。美香は誘導が終わり次第、僕の場所まで来て。万が一に備えてあれをする。良いね?美香」
「分かったわ!…頑張りなさい!」
そう言い、美香は生徒会室を出た。…「行きたくない」と子供の様に駄々を捏ね、必死に抵抗するユメを連れて。
「僕の意見が無視された…蓮君達にもそんなに無視されないのに…」
…僕はその光景見ていない。決して誘拐しているみたいなんて思ってない。
こうして、今回の学園襲撃に対する僕の行動が決まった。
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