第46話 誰?
〈一之瀬双葉視点〉
裂け目内の大きな分かれ道で蓮達と別れてから十分程しか経過していないが、もう面倒臭い。何だよ「優秀ならお前達だけで攻略して見せろ」って。
固有が『遮断結界』の為、攻撃方法が不慣れな魔術しか無い桃花と、元々持っていたモンスターを使いドラゴンを倒し、ドラゴンを新たに仲間に加えると言う錬金術みたいな事をしている怜、グループのバランスが…バランスが悪い。
桃花に近接戦闘は無理だ。だから俺が近くにいないと万が一がある。それなのに怜はモンスターをテイムする為に積極的に前線に出て来る。如何しろと…
その上、お前達だけで攻略をしろと言われた時、何故か決定権を俺に渡された。特別な事はしていない。ただこちらを狙ったドラゴン五匹を狩ったが…それだけだ。決して誇れるような、自慢できるような戦果では無い。なのに何故俺が引率者の様な事をしなければいけないのか…引率として来ているならば、しっかりと自分の役目を全うして欲しい。
はぁ~
何故俺がこんな事をしているんだ?そんな思考が頭を過り、無意識の内にため息が出てしまった。せめて二人のどちらかが睦月なら…そう後悔しても、もう遅い。あの時適当にグループを決めた事が間違いだった。そう思うと、朝の自分を殴りたくなる。寝不足とは言え、しっかりと話を聞いて置けば良かった。
我ながら何度やってもツメが甘い。そう思ってしまった。
〈四条蓮視点〉
分かれ道の終着点で双葉達と合流し、ボスの部屋の前にたどり着いた。
合流した双葉の元気が無い様に見えるが…まあ気のせいだろう。
合流地点から歩く事10分。僕達はボス部屋の前に着いた。そこには、僕の四倍はありそうな扉があった。
大きいな~と能天気な感想を思い浮かべていると、ゴゴゴゴゴと言う大きな音と共に扉が開いた。扉の厚さは…1メートルくらいかな?
バタン
僕達全員が入った瞬間、門はゆっくりと閉じられた。
この門の動力源や、どう言う風に僕達全員が入った事を検知しているのか気になるが、今はそれ所では無いので、後で考えよう。
前方に待ち構えるボスを観察する。ボスは、ここに来るまでに倒したドラゴンの体をそのまま四倍にした様な姿をしていた。
デカいと言う事は、通常のドラゴンよりもパワーも耐久力も上だろう。…多分。
パワーは最悪同じでも良いが、耐久力が同じだった場合、この裂け目は、僕一人で攻略出来るのでは無いか?…と、言う事になってしまう。流石にそれは無いと思いたい。
十五分後・・・
睦月が『空切』を取り出し、しっかりと首に狙いを定めて、それを振るう。
ドンッ
必殺の意思を込めて振るわれたその一撃により、エンシェントドラゴンの首が落ち、地面が揺れる。これで、この裂け目の攻略は終わりだ。
これで終わりなので、何か見落とした点は無いかこれまでの事を振り返った。
色々な事があったが、多分見落とした事は無いはずだ。そう言えば、○○調査機関(〇〇の部分忘れた)と言う所で会った男の人が気になるが、まあ良いか。
ここまでの感想を言うならば、ハッキリ言って拍子抜けだ。
仮にも『Sランク』と呼ばれるモンスターがここまで弱いとは思っていなかった。
僕一人では厳しいが、僕と睦月の二人だと攻略出来そうな難易度だった。
ともかく、これでこの裂け目の攻略は終わりだ。やっと家に帰れる。早くベッドで疲れを癒したい。そんな感じで頭の中がベッドの事で一杯になっていると――――
ドゴォォォォォォォォォォォォォォン
凄まじい音が聞こえ、何事だ!と音のした方向、僕達が入って来たボス部屋前の扉を見る。
「我、参上!!!さあ愚民共!我を崇めよ!称えよ!平服せよ!『光輝』の名を冠するこの我が来た!我は今から貴様らを殺す。精々抗え!退屈はさせるなよ?
お前達が選ぶのは逃走か?それとも、闘争か?選択をしないと言うならば、それもまた良し!決断すらできぬ愚か者として我が血祭りにしてやろう!!!
闘争を選び、戦闘をした上で我を害した者、あまつさえ我を滅した者には、溢れんばかりの賛辞と褒美を与えよう!!」
そんな事を言う一人の小さな女性だった。
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『光輝』?
固有
・龍化S
・不屈A
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