第45話 討伐
Sランク裂け目の一つである『竜の巣穴』攻略二日目…
まずは、前日聞いていた通り二組に分かれる事になった。相談をした結果、一つ目のグループのメンバーは、僕と睦月と雫さん。二つ目のグループは双葉と桃花さんと筋肉《怜君》と言う組み合わせになった。
前者は、昨日頑張っていたお兄さん。後者は、意外と強かった関わりたくない人がそれぞれに同行することになった。
裂け目を進んで行くと、二つの大きな分かれ道があり、僕達はここで分かれる。二時間だけ二組に分かれて、『お互いに出来るだけ裂け目の通路内のモンスターの数を減らそう』と言う事みたいだ。
今回の裂け目に出て来る主なモンスターのドラゴンはAランクであり、この裂け目の最深部にいるSランクのボスには及ばないものの、その他のAランクのモンスターと比較しても圧倒的な力を持っている。
通路を歩いていると、早速一体目のドラゴンを発見した。それを視認した瞬間、雫さんが走り始めた。
「参りましょう!」
「ちょッ!雫さん!!止まって!」
雫さんは、僕の静止を無視してモンスターに近付く。
『このままでは、ぶつかって仕舞うのでは無いか』僕がそんな心配をしていると、雫さんは、モンスターとの距離が残り二メートルと言う所で停止した。
「私間合い管理と一撃の威力だけはこの世界で一番だと自負していますの」
そう言って雫さんが鞭を振るう
ビュン!
空気を裂くような音を発するそれが、ドラゴンに当たった瞬間、パンと言う小さな音が聞こえ、ドラゴンの右腕が消失した。実際に消失したのかは分からないが、少なくとも、僕の目には消失したように見えた。…は?この現象を引き起こした物が腕力の場合…女子に言うのは失礼かも知れないけど…化け物かな?どうすればこんな事になるのか気になったので本人に直接聞く事にした。
「固有の効果を教えていませんでしたか?私の固有は自身の肉体、もしくは、自信が持っている物に対して、100㎏までの仮想の質量を付与する物ですの!」
確か鞭の先端の最高速度が音速超えるらしいから…100㎏の物体が音速で飛翔する様な物だよね?そんなのあり?僕が言うのも変だけど、それって結構チートだよね?
「欠点は、最大火力を当てたい場合は、鞭の先端を当てないといけない事ですわ!」あぁ、だから間合い管理大事にしてるのか。…って、その欠点を加味しても、チートと言うには変わりないと思うんだけど…思わず「チートだろ」と言ってしまったほどだ。
このチートの権化を下して今の位置にいる睦月にどうやって勝ったのか聞いてみた。物理科の試験で運悪く同じ組だったが、鞭の先端が危険なのはそれまでの試験で分かっていたので、当たる直前に切った?あの速度の鞭を切るなんて…睦月も化け物じゃん。君、その時まだ覚醒して無いよね?何でそんな事出来るの?「しっかり見ると、少しだけクセの様な物があるのが分かる」ってマジで?僕には分からん。ここで僕は、『化け物』には『化け物』をぶつけると言う戦術の有用性を理解した。やっぱり先人は偉大だな~
近距離で『よーいドン』の殺し合いをする場合、絶対の勝てない人が増えてしまった。敵対をしている人物ではなく、友人の一人なので殺される可能性と言う部分では断然マシだが…
ガァァァァァァァァァァァァァァッ!!!
そんな事を考えている時、僕を標的にしたドラゴンが襲い掛かって来た。
「アイススピア」
ドラゴンを『XE』の銃口で捉え、十の魔法陣から『アイススピア』を同時に放つ
昨日、お兄さんが使っていた時にドラゴンの動きが遅くなったので、今回はこれを採用した。
ふ~危ない危ない
もう少し発動が遅れたら食べられたかもしれないと思うとゾッとする。
…『XE』良いね!魔術を十個同時に発射する超火力だから、すぐに敵を倒せて僕の近くに来る前に殺せる所が特に良い。ネーミングセンスはちょっとあれだが『XE』の性能は良いので我慢をしよう。
学園に帰った暁には、しっかりと部長に感謝をしなければ!
一連の出来事を見ていた雫さんは何か言いたそうだ。何だろう?
「私にチートと仰りましたが、貴方も大概ではなくて?」と言われてしまった。心外だ。僕より強い人もいるのに…例えば、双葉とか?
強い人の話題が出たので、僕より強い可能性がある睦月の方を見る。
睦月はドラゴンを剣で倒していた。…ドラゴンを剣で倒している?はあ!?
睦月の固有の『空切』を使って無いって事は、純粋な剣の腕だけって事だよね!?何で倒せてるんだ?本人の回答は「気合」だった。それでドラゴン倒せるなら、学生の僕達に裂け目攻略の依頼なんて来ないでしょ…
「やっぱり学生が政府から依頼されるには、この位の強さが必要なのかな?俺が学生の頃はここまで強くなかった気がするんだけど…最近の学生は、みんなこうなのかな?俺、自身が無くなるな~。
…君たちは俺が学生の頃より断然強い。君達の強さなら、これから先、死ぬような事はほぼないと思う。でも、その分危険な場所に行く必要があるし、そのせいで仲間が死ぬ事だってある。俺がそうだった様に、力がある人は折れづらい分、何かが原因で一度折れてしまうと、それを直す事に時間が掛かってしまう。君達は折れる事は無いかもしれない。でも、忘れないで欲しい。折れる事は間違いじゃない。それを直そうとしないことが問題なんだ。
人生の先輩からの経験談だ。君達の未来がどうなるのか俺には分からないけど、これさえ覚えておけば、君達は致命的な失敗はしない思う。」
しっかりと考えさせられる事を聞かされた。仲間が死ぬなんて考えた事も無かった。(純粋に双葉が死ぬ所が想像できないと言うのもあるが)なので、仲間を失った時、自分がどうなるのか想像できない。何も感じないかもしれない、あるいは、絶望に打ちひしがれるかもしれない、その時にならないと分からないが、そんな思いをするような事が無い様にしたい。
少しの時間だけ考えても結論は出なさそうなので、今はそれ以上その事について考える事を止める。取り敢えず、今は双葉達と合流する二時間後まで出来るだけドラゴンの殲滅をしようと思う。目指せ討伐数百体!
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