第40話 思い出せない人
〈一之瀬双葉視点〉
夏休み中の七月のある日――――――――
夏休みになり、予定もなかった俺は、あの時鑑定してくれたおじさんに礼を言うべく政府の施設に足を運んだ。
「入館申請をしていた双葉だ」
「双葉様ですね。確認できました。お手数ながら規則ですので、申請書の提出を」
警備員に申請書を渡す。それにしても…この場所の警備は、重要な場所にしてはザルじゃないか?無理やり侵入しようと思ったら出来そうだぞ…
「確認しました。一之瀬双葉様ですね。中へどうぞ」
警備員に促され、建物内へ入った。
「おじさん!久しぶり」
「君は…双葉君か!大きくなったね。あの後は大丈夫だったかい?」
「大丈夫だったよ。ありがとう」
「何に対しての感謝か分からないけど、どういたしまして」
今までありがとう。貴方には何度も救われた
その後、鑑定のおじさんに色々な事を聞いた。仕事の愚痴、子供がかわいいと言う話、最近、運動不足で脂肪が増えて来たなどの話もした『俺も年だね』と言っていた。そして、最後に俺達が受けた依頼の話を聞いた。
「今回の依頼の裂け目は、大分危険な場所らしいから、気を付けてね」
今回の世界は、予想通り、今までの世界とは条件が違う。恐らく蓮がいるからだと思う。そもそも、本来の世界だと、葵はウチの学園に入学していない。
おじさんと別れ、考察をする。すると、知らない人物に話しかけられた。
「そこの君。こんな所で何をしているんだ」
「何ですか?不法侵入だと思われてます?一応申請はしてるんですけど」
「…と言う事は、君が双葉君か。すまない。誰かの子供が迷子になったのかと思ってね。…今から帰るのかい?」
「ええ、まあ」
「そうか。気を付けて帰るんだぞ」
変な人だな。
何処かで見たことがある気がする変な人と別れ、帰路につく。
少し考え、あの人が誰か分からなかったので、考えない事にする。
久しぶりにおじさんに会ったが、変わって無かったな…
とある一室での出来事――――――――
カッカッカッカッ
周囲に誰一人いない静かな空間に靴の音が響き渡る。
ギィ
長らく手入れされていないドアが開けられ、一人の男がその中に入る
その男は、その部屋の中央に鎮座するそれに話しかける。
「例の物を受け取りに参りました」
「………」
「おお!これが」
「………………」
「ええ、分かっております。契約は果たしますよ」
「……」
「それでは」
パタンッ
「まだだ、まだ早い。もう少し、あと少しだ。分岐点まで待つんだ。落ち着け、大丈夫だ。まだバレていない。……全ては我が祖国の為に」
可能性《未来》の分岐点までの時間は、あと僅かだ。
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