第31話 お嬢様
侵攻歴三十四年六月二日
「蓮、もう大丈夫なのか?」
病院を退院し、学校に登校を再開した僕が聞いたのは、石川先生からのそんな質問だった。
「はい!もう大丈夫だと思います」
「そうか…また何かあれば言ってくれ」
その後は特に何もなく、普通に授業を受けた。
「えっ!あの人生きてたの?」とか「友達を庇って死んだって聞いたぞ」とか
聞こえるが、面倒事になる予感がするので無視だ。
「蓮、すまなかった」
放課後、帰宅の準備をしていると、双葉君がそう話しかけてきた。
「良いよ…あの時は僕も冷静じゃ無かったし、それに睦月から聞いてるからね」
そう言うと双葉君は驚いた顔をしていた。
「どうかした?」
「いや…睦月が蓮に伝えているとは思ってなくてな」
それで驚かれるって…睦月はどれだけ信用されてないんだ?
「それで…早速だが、お前に会って欲しい人達がいる」
「どんな人達なの?」
「…いや…悪い奴らではないんだ。だが…あまりにも…なんと言うかキャラが濃い面々でな。正直俺も会いたくないんだが」
おっと?これは、もしかしなくてもヤバい奴では?
「今日は一人だけで良いから」
「そんな…『先っちょだけだから』みたいに言われても…」
「そいつは良い所の出なんだが…」
無視かよ!そう言いそうになったが我慢し、続きを聞く
「親の教育のせいなのか、生来の性質かは知らないが、活発で…
ちょっと自制心が無い。あと憧れが強い人だ」
「えーっと…つまり『憧れを追求する良い所の生まれの活発なお嬢様』って事?」
「まあ…そうだ」
それならば、取り合えず会ってみよう。
双葉君が静かにしている為、何故か若干嫌な予感がするが、気のせいだと自己暗示をしながら一歩一歩と歩を進め、ついに目的地に着いた。
「この中にその人がいるんだよね?」
「そのはずだ」
ガラッ
「失礼しま…
「貴女は可愛いのですから、さらに着飾るべきだと思いますの!例えば、ここにフリルを付けるなどはしないのですか?絶対に似合うと思いますの!今度ご一緒にショッピングに行きませんこと?お金の事なら領収書を実家に送りつけますわ!」
「やめなって、雫。相手の子パニックになってるよ。それに今私達が着てるのは学校の制服なんだからフリルとか付けれる訳無いじゃん」
「ムっ…確かにそうですわね…あら?貴方は…新しいお友達ですの?ようこそ!私は皇木雫。物理科の次席ですの!
以後お見知りおきを…所で貴方。女装に興味はありませんか?」
パタン…
「…ッー…双葉君。僕、帰って良い?」
「駄目だ」
ダッ!
僕は走り始める。風の様に、光の様に、何物にも邪魔されない存在になろうと…
だがやはり、病み上がりだからなのか…それとも、素のフィジカルが違うのかは分からないが――――――――すぐに手を掴まれ、止められた。
「双葉!!HA☆NA☆SE!」
「断る!!!!諦めろ!!まあ、頑張ってくれ」
「糞が!!…鬼!悪魔!双葉!」
ポンッ
双葉に手を掴まれている方とは逆の手を肩に置かれ、言外に諦めろと言われているのが分かる。…クソッ!バカみたいな握力しやがって!
そして、逃げられない事を悟った僕は、これから訪れるであろう
お嬢様との邂逅で胃がキリキリし、黄昏て…
そして思った。もっと体鍛えよう。そして、逃げ足を速くしよう。と…
皇木雫
・質量付与S
物理科次席
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