第30話 病室
侵攻歴三十四年五月二十八日
目が覚めて、あたりを見渡す。
その視界に映ったのは、見知らぬ場所だった。
「ここは?」
辺りを見渡す。
白い壁、自分が寝転んでいるベッド、自分の腕に繋がっている点滴
点滴?何で……僕は…あぁ僕はあの後
裂け目から出て本部に着いた瞬間、気絶したんだった。
カラッ
「四条さ~ん――――――――――――――――――えっ…医院長~!四条さんが起きました!」
何だったんだ?今の
少しすると医院長らしき人とさっきの看護師さんが入った来た
「良いですか、落ち着いて聞いてください」
あれ?今の言葉どこかで聞いた事がある様な?病室、ベッドの上、看護師、
はg……スキンヘッドの医者。うっ頭が。
「まずは記憶に混濁が無いか確認しましょう。
四条さん、貴方はどこまで覚えていますか」
「えっと…葵を殺して、本部に戻って、それで…」
「…四条さんあまり言いたくなかったのですが、あまり無理なさらないでください……「?」…もしかして気づいて無かったのですか?あなた今泣いてますよ」
「おそらくトラウマが有るのでしょう。気を付けてください」
今日の話はそれで終わった
精神的に弱っている今、あまりストレスになりそうな事はしない方が良いだろう。と医院長が判断したからだ。
侵攻歴三十四年五月二十九日
昨日一日ゆっくりする事で少し楽になった。
本当に楽になったのか、プラシーボ効果なのかは分からないが…まあ楽にはなった
「蓮!無事か?」
「蓮兄大丈夫?」
そう言って入って来たのはお父さん達だった
そうだよな…あんな怪我だと、この人達にも心配されるよな
それから少し話した後お見舞いを残し帰ってしまった
お父さんは仕事の合間に来ていた為、すぐに戻らないといけないらしい。
楓も学校の休み時間を使って来ていたので、帰ってしまった
「蓮~入るぞ」
睦月君が病室に入ってくる
「蓮。出血が酷くて気絶したって先生から聞いたけど大丈夫だったのか?」
「うん。多分大丈夫」
「本当か~」
睦月君はそう言いながら脇腹をつついて来る。少しウザい
「昨日から学校が再開したんだけど、先生から蓮が起きたって聞いてな。本当は昨日ここに来たかったんだけど、先生に邪魔されたから今日学校抜け出してきたんだよ」
これは…何と言えば良いんだろう?
そこまでして会いに来てくれた睦月君に感謝するべきなのか
それとも、そうさせてしまった事を悔いるべきか
「そう言う睦月君は怪我大丈夫だったの?」
「ああ俺は薄皮が切れた程度だったから、本部で消毒したくらいだな」
「そうなんだ」
「お前は大丈夫なのか?双葉から聞いたんだが、戦闘が終わった後は、蓮が普段は言わないような事を言っていたって聞いたんだが」
双葉君…そうだな後で謝らなくちゃいけないな
「正直に言うと僕は怖いんだ」
「怖い?」
「僕は死ぬのが怖い。それに友達にも死んでほしくない。でも、今回友達を自分の手に掛けた事で、僕の中の僕以外の人物の命が軽くなる。そうなるのが怖いんだ。
全ての人間の命の価値が平等なんて綺麗事は言わない。自分の周りの人間に死んでほしく無い。そう思ってたはずなのにその価値観すら揺らいでて、僕が僕じゃなくなる様でそれがどうしようもなく怖い」
「そうなのか…蓮は考えすぎなんだと思う」
「考えすぎ?」
「蓮の価値観は良い事だと思う。「…それなら!」でもその価値観が許されるのは、この世界では一部の強者だけだ。だってそうだろ平和な世の中じゃいざ知らず、この世界は弱肉強食なんだ。自分より弱い存在を助けようなんて圧倒的な強者、もしくは親兄弟くらいしか思わない。だから、蓮は考えすぎって言われたんだ。
まぁ俺達はまだ学生なんだし、そんな事考えなくても良いと思うけどな!
もし、向かってくる奴がいたら倒す。その位で良いと思うぜ」
「睦月君。ありがとう参考になったよ」
「良いって。実は双葉にも言われてたんだ。双葉も自分で来れば良いのに……………そう言えば双葉が『すまなかった』って、自分で言えば良いのに気まずいって…は~
あっ何か甘い物無いか?久しぶりに頭つかったから糖分が欲しい」
お父さんが持って来てくれた
お見舞いの内の一つにぶどうがあったのでそれを渡す
「はいこれ睦月君」
「それ!」
「え?」
「睦月君って呼ぶのやめろよ。友達だろ睦月でいいって」
「睦月くn…分かった。睦月これで良い?」
「おう!」
「このぶどうウマっ!」
こうして睦月の病室訪問は終わった
ちなみに睦月は無断で学校から帰った事で後日先生から怒られていた
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