第25話 葵の過去4
侵攻歴三十四年三月二日
あれから約三年。
様々なことがあった。
まず、研究員が死んだ。精神に作用する新薬のテストをしていたら
被験者が狂暴化し、殺されたそうだ。
あの時は焦った
俺と紗智の身の安全は、俺が研究者と契約をして、
一応、研究者の庇護下にいたからだ。
研究者が死んだ。それが分かった時点で
俺は、それまでに作っていた研究者に関わりのある枢機卿一人のコネと
今までの恩を使って、教会内での権力を手に入れようとした。
その枢機卿は、損得勘定で動く。
この教会の上層部にしては、まともな人だ。
枢機卿に、ここで恩を返しておいた方がいい。
そう判断させるのが、今回しなくてはならない事だ
少し分が悪い賭けだが、如何にかしなければ…
そう思い交渉をした
長くなるので割愛するが
交渉は成功した
表向き…俺は、任務の達成率が98%と高かったので、それを称えられ、
司祭に昇格したと言う事になっているらしい。
今日から長期の任務だ
内容は固有学園に潜入し、有用な人物のリストアップをし、
勧誘。もしくはその人物が教団の害になりそうな場合、
殺害をすると言うものだった。
学園で任務をする場合最短でも三年、最長だと六年と、時間がかかる。
出発の前に紗智と会話しようと思い、紗智の部屋に向かう。
コンコン
「…紗智入るぞ」
「お兄ちゃん!」
部屋の中に入る
紗智は、リハビリをしていた。
今は教団の人と話したり、果物ナイフや、包丁などの刃物を見ても、
パニックにならないようにリハビリしている。
「お兄ちゃん!私、ナイフまでなら触れるようになったよ!」
紗智は嬉しそうにしている。
ならば褒めるべきだろう
「紗智、少しずつでも、前進しているのは、良い事だ。
今後も頑張ろう」
「お兄ちゃん硬い口調治してって言ったよね?
もうお兄ちゃんなんか嫌い」
紗智が拗ねてしまった
まあこれは、褒めることも、褒められることも慣れてない
俺のせいなので、紗智からの叱責は、甘んじて受け止めよう。
ここまで話が逸れたが、閑話休題、任務の話をしよう
「ごめんな、紗智。それよりもお兄ちゃんの話を聞いてくれるか?」
「何の話?」
「お兄ちゃんは、明日から長期の任務がある。
だから、早くて三年、長かったら六年くらい紗智に会えなくなる」
それを聞いた紗智の顔から血の気が引いて行く
「…え?……何で?お兄ちゃん、前に、しばらく任務に行かなくて良いって、
言ってたよね?そうだよね?なのに…え?もう任務に行かないといけないの?
…待って、待ってよ。お兄ちゃん!
…私まだ、お兄ちゃんと一緒に遊んだり、
ご飯を食べたり、お話ししたいよ。
グスッ
…私はまた捨てられるの?…もしかして、紗智はもういらない子なの?
しかも、今度は、私一人になるの?
…怖い…怖いよ、助けてよ。任務なんか行かないでよ、お兄ちゃん」
紗智が混乱している。
ここまで情緒が不安定なことは、これまで無かった
「紗智、落ち着いて聞いてくれ。
今までも二人だけで頑張って来ただろ?
お互い、家族と呼べるのは、相手しかいない…そんな状況なんだ。
そんな時に紗智を捨てるはずがないだろ?
今回はちょっと時間がかかるだけだ。
任務は長期だけど、危険はあまりないはずだから、心配はいらない。
必ず生きて帰ってくるよ。約束する」
「お兄ちゃん…本当?
本当に帰ってきてくれる?」
「ああ、本当だよ。必ず帰ってくる」
「じゃあ帰って来たら、一つだけお願いを聞いて」
「分かった。紗智は何かしたい事があるのか?」
「ん~ヒミツ」
そう言って紗智は笑っていた
俺は、この笑顔を曇らせないためにも、
絶対に生きて帰ろうと心に誓った
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