第23話 葵の過去2
僕が諜報要因に、紗智が実験用になったあの日から、紗智はあまり
話さなくなった。
紗智は気丈に振舞っているが、毎日新しい傷が増え、毎日喉が枯れるまで
叫んでいるのか、声も日に日にガラガラとした物になって行った
「やっぱり俺が変わる。今からでも変わろう」そう言っても
紗智は「ありがとう、お兄ちゃん。でも、紗智が自分で決めたことだから」
そう言って気丈に振舞う。このままでは駄目だ、
そう思っていてもどうにもできない自分が嫌になる。
次の日、俺は、紗智と俺の担当を変えてもらう為、研究者の所に行った。
「やあ!葵君。ちょうどいいタイミングで来たね。いま出来立ての
ソーセージがあるんだけど食べるかい?」
研究者にそう言われ、着席を促される
目の前には、焼いたばかりのパリッと言う音と共に、肉汁が溢れて来そうな、
おいしそうな、ソーセージがある
「じゃあいただきます」
「うんうん。どうぞ召し上がれ」
そう言われ食べたソーセージは見た目道理パリッとしており
ジューシーだった
「おいしいかい?」
「はい、少し独特な風味があるけどおいしいです」
「これを作るのには手間がかかったからね~そう言ってくれると嬉しいよ」
「ところで、君はこの製造工程に興味はないかい?」
「あの香りは、嗅いだことが無かったので少し興味があります」
「…そうかい。ならばついて来てくれたまえ」
そう言われ後についてゆく
最初は燻製させているところを見せられた
少し変な臭いがするがそれ以外は普通のソーセージだ
その後、肉を腸に詰めるの場所を見せられた
あれを見ると少し気分が悪くなる
次に肉をミンチ状にするところを見せられた
あの肉は何の肉だろう?牛や豚にしては形が変だ
そんな事を考えていると
肉の採集場だと言う所に連れてこられた
大分変な臭いがする
おそらくソーセージの独特な臭いの元は此処なのだろう
そう思いながら採集場に入る
そこで見たのは――――――――――――――――――――
「…は?」
壁一面に全身の皮が張られ、歯や臓器で作られたアクセサリーが置かれている
そして、その部屋の中央には肉を叩かれ、切られ、原形が何か分からないほどグチャグチャになり、そこからポーションを掛けられ体が治り、また肉を叩かれ、切られる。その繰り返し。そんな紗智の姿だった
「……え?…は?……紗智?…なんで?…えっ?…」
脳が理解を拒む
あの肉塊が紗智?
は?
イミガワカラナイ
そこで研究者が話しかけてきた
「……紗智…紗智は!」
理解したくない…あれが…あれが…
混乱と動揺の中で俺はあれが紗智ではない一筋の希望にかけて
研究者に聞いた
「ああ!もしかして、紗智君に聞いて来たのかな?
昨日、ようやく調整が終わってね
今の彼女は、ポーションの効果で、どんなことをしても再生する。
今日はその実験さ。本当にどんなことをしても再生するのか、それが分かれば
どう改良すれば良いか見えてくるしね。
ソーセージは、彼女の破片をそのまま廃棄するのも可哀そうだから、
肉をミンチにして、骨を粉々にして混ぜ込み、彼女の腸で詰めた逸品だよ
気に入ってもらえたかな?」
オ˝エ˝ッ
聞いていて吐いてしまった
じゃあアレは俺が食べたあのソーセージは……
オ˝エ˝ッ
その答えが頭をよぎり、また吐いてしまった
研究者はポーションの研究のために紗智にあれをしていると言うのだ
「勿体無い…せっかく作ったのに……」
俺は、吐いたばかりの口を拭い、研究者から見れば、
惨めに映るであろう格好で言った
「紗智を!俺の妹をあそこから出せ!俺ができることは何でもする!
だから早く、紗智をあそこから出してくれ!」
俺の言葉を聞いた研究者は少し考えた後
こう言った
「紗智君をあそこから出せ、か。それは僕の実験を止めろと言うんだね
なら「何でもいい条件を飲むだから早く!」…分かった
葵君、君がこれから先、君が本能的に死ぬと思うまで、僕の言う通り動くなら、君の言う事を聞いてもいいかな」
「わかった。それでいい。その条件でいいから、早く紗智をあの場所から
解放してくれ」
「契約成立だね。葵君」
紗智が解放された
今、紗智は気絶している
部屋に着いた
紗智の呼吸は安定している。このまま何もなければ良い
この時は、そう思っていた
紗智が目を覚ました。
「紗智!これからは、あんな事をしなくて良いようにしたぞ。
あんな場所には行かなくて良い。行かなくて良いんだ…紗智?」
おかしいな?さっきから紗智が全く返事をしない。
紗智の反応がない事を不思議に思いつつ
紗智の体を触って見る。
体温は普通だ。じゃあ何が問題なんだ?そう思っていた時
「あぁ」
「紗智やっと返事してくれたか」
「あ˝あ˝あ˝あ˝あ˝あ˝あ˝あ˝あ˝あ˝あ˝あ˝あ˝あ˝あ˝」
「紗智?おいっ紗智!しっかりしろ!紗智!」
「あっ」
そこで紗智の意識は途絶えた
…その日、紗智は廃人になった
それから、医者に見せたが、「ストレス性の物ですね。」としか言われず
紗智は、綺麗な黒色だった髪も白くなっていき、夜も眠れなくなり、
日に日に衰弱していった
そして俺は俺を責めるようになった
俺が早く気付かなかったせいで
俺がここから逃げ出せるほど強くないせいで
俺が紗智の兄だったせいで
「………ヒュ…ヒュッ…あ…ああ…あ˝あ˝あ˝あ˝あ˝あ˝あ˝あ˝あ˝あ˝あ˝あ˝あ˝あ˝あ˝あ˝あ˝あ˝あ˝あ˝」
その日、俺は、俺自身を呪った
自分の鈍臭さと弱さに対して、
憤怒し、憎悪し、嫌悪し、怨恨が募り、
失態を自嘲し、少し冷静になり、また後悔し、絶望した
「…あはっ……あはっ!……アハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ」
その瞬間……いや…紗智の見たあの時から、俺は壊れたのだと思う。
その後の事はよく覚えていない。
……『認識改変』……発動……………
ただ一つ分かるのは、それから、俺が紗智以外の事を、
ほとんど考えなくなった、それだけだ。
研究者
固有
・契約A
・ポーション生成A
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