第15話 情報交換
〈一之瀬双葉〉
事件直前の記憶が曖昧だ
あの後、俺は学園にある寮に帰って、それまでの事を思い出しながら
そのことに気が付いた
あの爆発で脳が吹き飛んでいたとしても、二割残っていれば記憶の修復は出来るはず。それに、今回は念のためにIFも発動させた。万が一の事態となる事はあり得ない。
ならば、ランクA以上の能力者四人ほどに固有を使われた可能性が高い。
となると、主な犯人候補はS、A、Bクラスの誰かということになる。面倒だ。
いっそ全部殺してしまおうか。そう思ってしまった
これ以上考えて感情が高ぶると「精神安定」に消されるので、そこで考えるのを止め、今日はもう寝る事にする。明日は転生者の所に行って情報共有をするとしよう。
今回のIFは、比較的如何にか出来そうだ。願わくばこの地獄が今回で終わりますよう
侵攻歴三十四年四月八日
〈四条蓮〉
楓はもうすぐ十歳になる
でも、その日は学校があって一日中祝ってやる事はできない
椿と牡丹も今年で九歳だ
固有はそれぞれ楓がAA、椿がAB、牡丹がSCだった
あの子たちも、今は安全のために、オンライン授業になっている。
将来はおそらくこの学校に来る事になるだろう。どのクラスになるかは分からないが、友達ができるのか心配だ
コンコン
その時、自室のドアがノックされた
「失礼します学園の学年首席を名乗る人物と物理科の首席を名乗る人物が
面会を希望しておられますがいかがいたしましょうか」
「会うからこの部屋に通して」
「かしこまりました」
そういってメイドさんが出ていく
それにしても、もううちに来るのか
僕は一之瀬君の行動力に関心しつつ部屋で待った
コンコン
ドアがノックされ一之瀬君達が部屋に入ってきた
「いい家住んでんな」
そういって物理科の首席の子が部屋を見渡す
確か名前は睦月君だったはずだ
「それで、なんで今日来たの?」
「情報の共有と、その整理をしようと思ってな。こいつを連れてきたのは
お前の言う例外の一人の可能性があるからだ」
そういわれて驚いたこんなにすぐにこの世界の例外の過半数が集まると
思わなかったからだ
「おう、よろしく。明空睦月だ、睦月でいいぞ」
そう睦月君が自己紹介すると一之瀬君が言った
「こいつは、少し暑苦しいが悪い奴ではない。約束は絶対守る。馬鹿だけど」
一之瀬君がそう言ったので、僕は驚いた。会って二日目だと言うのに、
そこまで仲が良くなっているのか、
一之瀬君、僕と同じで絶対ボッチだと思ったのに…
そう思い睦月君の方を見ると、なんで?といった顔をしていた
どうやら、性格を知られるくらい会話をしたわけではないようだ。
「なんで俺の性格を知ってんだ?」
「それもこれからの話につながる。そろそろ情報交換を始めないか?
睦月は、聞いてるだけでいいから」
そういって一之瀬君は話し始めた
「まず俺の固有はIF、高速再生、精神安定だ。ここまでで何か質問はあるか」
僕は、一之瀬君の言葉の中で気になったことを聞く
「IFの固有の詳細を分かっている範囲で、あと高速再生で、
どのくらいまで治せるのか教えてほしい」
「わかった。まずIFの解説から、俺のIFは自分に関することに、もしもを付け足す固有だ。
ただ、あくまで、もしもだ。全く可能性が無い事を付け足すことはできないし、一度付け足した事は付け足す前の状態に戻すことは出来ない。
そして、俺自身が認識している物にしか効果を発揮しない。これが今わかっているIFの詳細だ。高速再生は失血死や溺死などを除けば、即死じゃなかったらほぼ治せる」
「ありがとう。分かりやすかったよ」
「それと、できればでいい。蓮、君の固有を教えてくれないか」
僕は少し考える。一之瀬君がこの世界の規格外だったとして、
僕はまだ、一之瀬君が、何をしたいのかを、知らない。
その状態で、僕の固有を言っても良いのだろうか?
僕は二分ほど悩んで結論を出した
「…わかった。僕の固有の事を言うよ。僕の固有は、
魔力無限、並列思考、魔術出力上昇、後、よくわかってい
???だね」
「???以外は、普通だな…よし…それなら、今のところシンプルに強い魔術
タイプだ。???がどうなるか分からないが、今は、それでいいだろう」
そう言って一之瀬君は考え事を始めた
そこで気になる事ができたため睦月君に聞いた
睦月君が、規格外の一人の可能性があるなら、聞いておいた方が良い
「睦月君の固有を教えてもらう事ってできる?もちろん個人情報だってことは
分かってるからできればでいいダメかな?」
「俺だけ二人の固有を知ってるのもフェアじゃないし、いいぜ。
…って言っても大したことは無いけどな。
俺の固有は空剣、詳細は、才能ある人が十年鍛えたレベルの剣術が
固有を授かった瞬間からできるって物なんだ。その程度なのに
これ一つで器を100%使ってるんだよ。大したことないだろ?
器を100%使ってるから、この程度の効果な訳ないだろうって言われて
剣術を始めて五年くらいたったかな…剣術は実家の爺ちゃんから免許皆伝って言われたけど…このままなら修行しなくても…って思い始めて来たんだよな」
周りに期待されてその状態で結果を残す事って結構難しいよね。
特に、努力をしてもどうにもならない場合は
本当にこれでいいのか?このまま、同じことを続けるより
他の事をした方が良いのではないか?ってなっちゃって。
似たような場面での成功体験があった場合は、それを参考にしたりすれば良いけど……それが無い場合は、どうしたら良いのか…分かんないからね。その点、筋肉は鍛えたら鍛えるだけ育って、それが自信につながるから、筋トレが有効らしいけど
睦月君の会話を聞いて、僕が、前世の記憶思い出しながら、そんな事を考えていると、焦った様子の一之瀬君が話しかけてきた。
「…はっ?…お前が剣術をやめる?馬鹿言ってんじゃねえ!!
ようやく…ようやくあれを如何にかできそうな戦力が出て来たのに…お前が
いなくなったらどうしろって言うんだよ!!!」
「えっと…ごめん?」
一之瀬君……いや双葉君と呼ばせてもらおう
双葉君がキレた
「いいか、お前の固有は覚醒に時間のかかるタイプだ。
確か期間は五年だったはず…もう少しで覚醒しそうな時に
辞めるとか…馬鹿なのか?もう少し、その脳みそで考えろ!!
その頭は飾りか?それとも、ダチョウ並みに脳みそが小さいのか?
ふざけんなよ!お前はもう少し賢いはずだ!!」
「いや覚醒ってなんだよ。つか急に豹変して怖いわ」
双葉君が深呼吸をしている
おそらく怒りを鎮めるためだろう
「…いいか?俺達Sランクを超える固有持ちには、段階がある。
一つ目が65から80%の逸脱者、二つ目が85から100の超越者
俺と蓮が前者で、睦月が後者だ。どちらも強力だが、どちらもデメリットがある。逸脱者は、覚醒するまで、どんな能力か分からない。
超越者は、各ごとに固有に条件があり、覚醒するまでに長い年月を要する。
それで、睦月、お前の覚醒に必要な条件は剣術を五年だったはず何だけど………
さて、睦月君。ここで問題です。
ここまで聞いて、自分の行動の何がダメだったのか…理解できたよね?
さすがに、『分からない』って事はないと思うんだ……
睦月君、俺は怒ったりしないから、固有を授かってからの年月を言いなさい」
双葉君が圧をかけて言う
直接怒られてない僕も少し怖い
「ごっ五年です」
「うんうん、そうだよね。五年って事は、そろそろ覚醒するわけだけど……
…君は、何をやめようと思ったのか、聞いてもいいかな?」
「ごめんなさい」
「別に謝ってほしいわけじゃないんだ。それで何をやめようと思ったんだっけ」
「剣術です」
「この大事な時に何辞めようとしてんの?君。自分の強さ分かってる?君が強くない場合、結構ヤバいからね?剣術頑張って続けれるよね?そうだよね?」
「はい!続けさせていただきます…」
睦月君がK.O.されてしまった
大事な話はまだ続きそうだが、睦月君が再起動するには、
もう少し時間がかかりそうだ
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