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【初稿】失われた記憶、消えない愛。取り返す記憶、紡がれる愛。  作者: 言ノ悠
第四章 ~「冒険者との邂逅と魅せる君」〜
32/75

032話

 それから、それなりの時間を歩き続けても、周囲の景色に変化はなかった。既に一日二日、下手をすればもっと経っている気がした。


 道途中で出会った獣はユリが仕留めてくれて、それをレイが調理して振舞ってくれることが多くあった。


 そうして適度に休息と食事、睡眠を繰り返して歩き続けた。

 俺もレイも、ユリも身体は頑丈だから、歩き続けて疲労する様子はなかった。


「……終わりが見えないな」


 頭上には、果てしなく続く緑の天井。見上げても、進んでも、その緑が途切れる気配はなかった。


「我は構わぬが、歩きづらい道が続いているな」


「ユリには、ずいぶん助けられてるよ」


 本来なら、地面もまた密生した草木に覆われていたはずだった。だが、その多くはユリの手によって切り払われている。


 伐採された草木は、レイが淡々とアイテムボックスへと収めていた。何も言わず、ただ作業のように続けていた。


 そんな淡々とした、単調な繰り返しのなかで、先頭を歩いていたユリがふいに立ち止まった。


「……どうしました?」


 その様子に只事ではないものを感じたのか、レイは声を潜めて、俺とユリにだけ聞こえるように問いかけた。


「人の気配がする」


 ユリは短く答えた。


「……人数はわかりますか?」


「五人だ。ひとつの集団のようだな」


 彼女の言葉を聞いて、俺は思わず考え込んだ。


 この森は、これまで一度として人の気配を感じなかった場所だ。俺たちもかなりの距離を歩いてきたが、ユリが封じられていた地下都市を出て以来、人工の建造物はひとつも見ていない。


 つまり、今ここに現れた五人は、偶然通りかかっただけの“一般人”ではないだろう。


「俺は話してみたいが……厄介事の可能性が高い、よな?」


 率直な気持ちをふたりに伝える。その上で、リスクを承知しているという意思も含めた。


「そう……ですね」


「我も、そう思う」


 レイはわずかに迷ったような表情を見せたが、ユリはほとんど迷いなく頷いた。


「けれど、この旅が始まってから初めての出会いです。……ユリを除けば、ですけれど」


 レイはそう言って、ちらりとユリに視線を送ってから、俺の方に視線を向けてきた。


「……わかった。話し掛けてみよう。

 もし相手側が、困ってることや、目的を教えてくれたら、手伝う方向でもいいか?」


 俺は話し掛けてみたい。だから、今後の対応方針もふたりに確認しておく。


「……なぜ、手伝う必要がある?」


 すると、ユリは心底不思議そうに首を傾げた。言われてみれば確かに、俺はなんで手伝う方向でとか言ったんだろうな。


「何となく、そういう心持ちの方が、円滑に物事が回る……からかな」


 理由を言葉にしながら、自分でも曖昧だと思った。


 でも、それでもきっと、俺はそうしてきたんだろう。記憶にはないけれど、この身体には、そんな感覚が染みついている気がした。


「ふむ……まあ、シンがそう言うなら、それで構わん。その五人組は、この先を少し右に逸れたところにいるようだ」


 ユリは納得したわけではなさそうだが、それでも俺の方針には従ってくれるようだった。


「ちなみに、なんでそこにいるってわかったんだ?」


「匂いと……あとは直感、だな」


 その説明を聞いても、まるで純粋な人類種には再現できそうもない。やっぱり、ユリは俺たちとは別の生き物なんだと改めて思う。


「なるほど。じゃあ、案内してもらってもいいか?」


「うむ、任せろ。……もし攻撃してきたら、どうする?」


「その時は、まず交渉を試みて……無理なら、逃げることにしよう」


「そうですね。無用な殺生をする必要もありませんから、その判断で良いと思います」


 こうして、俺たちの方針は決まった。五人組がいるという方角へ、迷うことなく歩を進める。


 やがて、俺の目にも五人の姿が見えてきた。


 その五人組は真ん中で焚き火をしていた。周囲の地面は、今まで俺たちが歩いてきた森道よりも、低木や背丈の高い草花もなく開けていた。


 一人は、狼のような顔をした獣人。もう一人は、獣の耳が生えた者。

 人間と思われる者が一人。そして残る二人は、妖精族と人間の混血か……そんなふうに見えた。


 俺たちの姿が見えるということは、当然、向こうからもこちらが見えているということだ。


 そして案の定、獣人が俺たちに気づいた瞬間、五人全員が一斉に戦闘態勢へと移った。


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