表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

赤田家と周囲の方々

赤田家の日常 第二和

作者: あかたさな

※本作は正真正銘のフィクションです。

 出てくるお店や人物、動物、理論はすべて架空のもので、どこにもありません。

 誰も提唱していません。

 どこかのなにかで「あれ?なんか似てるな〜」と感じたら、

 きっとあなたの思い出の中か、もしくは前世かなんかの遠い日の記憶です。

赤田家の日常

「第二和:パンなんてなくてもいいし、なぜならケーキを食べるべきなのよ」


 赤田家はいつも唐突に始まる。

「ねえ、奈々ちゃん。今日は奈々ちゃんが沙奈ちゃんとパン屋さんに行ってくれないかしら」

「いいけど、どしたの母さん?」

珍しい母からのお願いに奈々は戸惑う。

そんなに大変な用事でも出来たのだろうか。

もしかしたら更なる頼まれごとがあるのでは、と勘ぐる奈々。


「実はパパが急に出張になったみたいで、会社に着替えなんかを持ってきて欲しいんだって。パパに会えないの寂しいからママが行ってこようかな、って」

何故か急に惚気を聞かされ、お腹いっぱいですと言わんばかりに、まだ少しばかり幼い沙奈の手を握る。


「うっし、沙奈、行こう!」

親の惚気ほど聞くに耐えないものなどない。しかも中学校の同級生たちの親はそんな雰囲気ではない、というではないか。

やっぱうちってみんな仲いいんだな、そんなこと思いながら、10歳の妹の歩幅に合わせる気遣いレベル上級者。


今日も赤田家は平和である。


「ねえねえ、奈々姉」

「ん?なに?」

急に腕をぐいっと引いてくる妹に視線を送る。


「メロンパン買っていいよね!!!」

はあ、っと思わずため息が零れる。


「あんた、メロンパン買わないことのほうが少ないじゃん。買ってあげるわよ、当然じゃない」

やれやれ、我が妹ながらお姉様のことが分かっていないなと言わんばかりに首を振る。


他愛もない会話、たまに入ってくる沙奈の鋭い疑問。

またいつものか、正直、面倒くさいな、そう思いながらも一応考えて答える。

一応、考えるのだ、奈々は。そう、考えるだけ、勿論、答えが導き出せることなどないのだが。


そんなこんなでいつものパン屋へ到着する。

「メロンパ~ン!!」

奈々の手を振りほどき、店内へ勢いよく飛び込む。

メロンパンの妖精、一部の店員たちにそんなふうに呼ばれていることは知ってはいたが、なるほど、さながら間違っていないなと、腑に落ちる。


奈々はさりげなく沙奈を視界に入れながら久しぶりの店内を散策する。

「ふ~ん、代わり映えないのね」

そんな感想を口にする。


しかしそれは正に災いの元であった。


「奈々姉、もしかしてまだパンよりご飯の方が美味しいなんて思ってるの?」

いつの間にかしっかりとメロンパンを確保した妹が隣に。


「え?いや、まあそうじゃない?だって食パンって、食パン自体の味よくわかんないし、なにか付けて美味しくするじゃん。あんたの好きなメロンパンだって、結局さ、小細工して甘いだけじゃん?お米のポテンシャルMAX感には全然、届いてないじゃん。わかる?結局、お米よ。素体で勝負しなきゃ。お水加えて、火を通して勝負する?それ、美味しく食べられるかしら?

まあ、パンケーキは認めてやってるわよ」

「でもチャーハン大好きじゃん、奈々姉」

「あんた、何なの急に?はあ……」

奈々は沙奈の問いに、一つ大きく溜め息をつく。

「チャーハンはお米を調理という錬金術を使って昇華した至高の逸品でしょ?わたしが言ってるのは、素材をなんとか誤魔化さないと戦場に立てない、っていうポテンシャルの話をしてるの。お米はお水と火で訓練受けるだけで立派に戦場に立つの。そしてお米は一人前に戦地を渡り歩くのよ。その過程で、タマゴやウインナー、タマネギ、シャキシャキレタス。そういった装備を手にして、さらなる成長するわけ。パンってそういう下積み、完全に無視してるじゃない。甘えてんじゃないわよ、ったく。結局パンなんて、ケーキの劣化亜種よね」

10歳の彼女にはよく分からなかった。

ただ、なんとく中身はむちゃくちゃ、理論も破綻している気はした。

直感的に沙奈は呆れる、いつもの空気清浄エアリアル・サンクチュアリとしての役割を破棄してしまうほどに。


結果、店内の空気が淀み、一気に地獄と化す。

最早そこはパン屋さんなどではない、戦場である。

奈々は単身、自らの足で戦地に赴く結果に。

後には引けない。

否、彼女の辞書の中には「撤退」などという難しい言葉は存在しない。

ただただ歩みを進めるのみ。


「奈々ちゃ~ん。

相変わらずお美して、自分の言葉が全て!みたいな感じなんだね~。

漫画やアニメの悪徳令嬢みたいだね~。お兄さん、惚れ惚れしちゃうよ」

被りし笑顔の仮面。

紡ぐ言葉はさながら黒雷の如く。

その瞳に宿すは怒りの獄炎。

それは終焉の訪れ。

そして、いずれ――開闢と、なりけり。


「あっ、青井くんじゃ~ん、いつもありがとね。

ほら、沙奈もありがとう、ちゃんと言いなよ?」

しかし、相手は奈々なのだ。

そう彼女は空気を読めないのだ。

自分で作って、自分で盛り上げた空気だってなんのそのなのだ。

赤田家三姉妹の中でも唯一無二、最強の彼女は、赤田家の中でしか生きられない悲しきモンスターなのだ。

メロンパンを否定した今、沙奈から発せられるメロンパンへ(エアリアル・)の愛と情熱(サンクチュアリ)というバフもないのだ。

孤立無援の状態、つまり完全にポンコツ、なのだ。



「で。できたわけ?この私の舌を唸らす最高の一品が」

開闢の扉に手を伸ばす奈々。

「ふっふっふ、今回は力作だよ、奈々ちゃん!!沙奈ちゃんも食べてみて?」

青井はそう言うと厨房へ下がる。

開闢の扉が開かれた。


今、天地創造が始まる。


「沙奈、ほら会計済ませて帰るわよ。わたし、友美の家でケーキ食べなきゃなんだよね」

「奈々姉……、――さすがだね」

否、始まらなかった。



赤田家は平和なのだ。


第二和~完~


「好きなキャラクター?そうですね、やっぱり父の貴弥ですね」そう言い切るのは「あかたさな」。赤田家の作者である。

こうなんて言うんだろ。決めに行きたいのでハードル上げときたいんですよね。父の登場に。

匂わせしてからある程度間をおいて、ズバッと三振取りに行きたいんですよ。四球ばっかりな作風なんで(キリッ)

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ