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4話 「人魂の能力」

 



『こんなところですかね』


 人間が()つん()いになって入れるかどうかといった穴から降りると、低い天井の洞窟内部には様々な種類の草が茂っている。所々に咲いた花からは強い香りが漂い、穴の外へと芳醇(ほうじゅん)な香りが漏れ出していることだろう。


 わずかに差し込む光が反射し、洞窟の中とは思えないほど明るく照らされている景色は秘密の花園のようで美しい。


『壁にわずかに光る光源を取り付け、また差し込む光が乱反射するように設計して、洞窟全体を明るくしてみました』


「すごーい」


『スライムはあそこです』


 スライムは花園のど真ん中でぷるぷるしている。


『まぁ、状況に応じて動いてもらいましょう。あとは生物が来るのを待つだけなので……配置に関してはこれで完了ですね』


「わー」


 ルルテもふるふると横に震えてみる。


『と、いうことでルルテさん。次はルルテさんの能力確認と戦闘訓練をしましょう』


「わたしの?」


『ルルテさんは自分が人魂に転生していることにも気がついていないようだったので、人魂についても何も知らないですよね?』


「うん」


 ルルテは気がついたらここにいたのだ。そもそも死んだという感覚もなかった。

 人魂について分かっていることも、青い火のような見た目ということだけだ。


 動く時にも、体が全く動かせないということはないが、人間の時の癖が抜けないでいる感じだ。


『では人魂という種族について学びましょう。その前に少し、魔物の説明も。ルルテさん、魔物と他の生物との一番大きな違いはなんでしょう?』


「うーん……わかんない」


『それはですね、「ご飯」です』


「ごはん?」


『ほとんどの生物は「魔素(まそ)」というこの世の万物に含まれているものを体内に取り込み……つまり食べて、それを魔力に変換することで生きています。しかしながら、魔物は魔素を変換して魔力を得ることができないのです。だから、魔物は魔力を持っている生物を狩ることで魔力を得ています。つまり、魔素を食べるか、魔力を食べるかの違いですね』


 人魂になったルルテも、ダンジョンコアも、ルルテが人間の頃に食べていたようなパンや野菜は食べる必要はないということだ。

 その代わり、さっきルルテがダンジョンコアに魔力をもらったように、魔力そのものがご飯となる。


『また、繁殖方法も異なりますね。生物は「親」が存在しますが、魔物にはいない場合が多いです。魔物は魔力や魔法の影響で生まれます。イメージとしてはダンジョンの創造魔法が近いですかね。スライムを作った時のように、魔物は無から生まれたり、何かに宿ることで生まれたりします。そしてルルテさんの場合、ルルテさんの魂に魔力が宿ることで人魂になっています』


「えーっと……じゃあ、今のルルテには父さんも母さんもいないってこと?」


『そうです』


 青い火の母と青い火の父がいるという訳ではないらしかった。

 ルルテは両親にとても愛されていた覚えはなかったが、やっぱり両親のことは大好きだったし、一緒にいられるだけで少しだけ空腹が紛れるような、満たされた感じがしていた。


 そんな存在がいないのは少し寂しいな、とルルテは思った。


『人魂は、多くの魔物と同じく生物を襲って魔力を得ています。口はないので、生物が傷ついた時に漏れ出す魔力を吸収しているような形ですね。それからとっても重要な、人魂の攻撃方法についてです。これからルルテさんには強くなってもらわなければいけませんからね』


「そっか、ルルテが敵を攻撃したりしてダンジョンコアさんを守るからだね」


『そうです。人魂の攻撃方法ですが……主な攻撃方法は、体当たりです』


「たいあたり……」


 今のルルテでもできそうな、簡単な攻撃方法だった。


 しゅ、しゅしゅ、と素早く体当たりするように動いてみる。


『あ、そうです。お上手ですね。ただ、人魂の体当たりは物理的な威力がほぼ皆無なのでダメージは全然与えられません』


「え……!?」


 褒められたのに、攻撃力はほとんどなかった。


「えっと、じゃあ、他は?」


『他は……ですね……』


 ダンジョンコアの光がしおしおと弱くなっていく。


『現時点では………それだけですね』


「……わたし、すっごく弱いんだね」


 ルルテの炎も弱くなり、心なしか小さくなる。


 戦闘経験もなく弱いということは自分でも分かっていたつもりではあったが、正直ここまでとは思っていなかったのだ。


 守るなんて、そもそも戦うことだって、本当に私にできるのかな、とルルテは思った。


『あ、でもですね!まだ強くなれる可能性はあるんですよ。普通の人魂だと体当たりくらいしかできないのですが、ルルテさんのように知性の高い特殊な人魂の場合は、できるかもしれないのです』


「なにを?」


『……魔法です!』


「まほう……!?」


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