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1話 「ダンジョンってなぁに?」

しばらくは二人の会話劇が続きます。

 



「それで……」


『はい』


「わたしは、何をすればいいの?」


 報酬に釣られてつい契約してしまったものの、ルルテは特に得意なこともないただの女の子である。

 体も小さな火になってしまった以上肉体労働もできないため、何をすればいいのか分からなかった。


『うーん、そうですね。具体的なお仕事としては、私を守ることと、このダンジョンをどのようにしていくか……つまり、どこに魔力を投資して、どこを強化していくか、のようなことを一緒に考えてほしいんですけれども……』


「なる、ほど?」


 ダンジョンコアを守って、ダンジョンコアの相談に乗ればいい、ということだろうか。

 ルルテはそう認識した。


『そもそもルルテさん、ダンジョンがどのような場所なのか、分かりますか?』


「あぶない魔物がいるけど、役に立つものがある場所?」


『……まぁ、ダンジョンに行ったことがない人間だとその程度の認識ですかね』


 ピカ、ピカとゆっくり点滅するダンジョンコア。

 やがてカッと光ると「ダンジョン」の説明を始めた。


『まず第一に、ダンジョンとは何か?というところですね。ダンジョンとは、ダンジョンコアが展開している創造魔法の範囲内の空間を指します。「魔力」と「魔法」がどんなものなのかは分かりますか?』


「えっと……あんまり……?」


『では、そのあたりも後で詳しくお話ししますね。ひとまず、魔力とは生き物が持っていて生きるために必要な力で、魔法はその魔力を使って色々なことができる方法だと思ってください。それで、私は私が持っている魔力を使って、この洞窟を作り出したり、ルルテさんをここに呼んだり、魔物や、資源を作ったりできます。これがダンジョンコアの創造魔法です』


「ほぇー」


 つまり、このダンジョンはダンジョンコアが魔法で作ったもの、という認識で合っているのだろう。


 目という器官はないが、あればキラキラと輝かせているだろうというほどのルルテの「すごい!」という憧れの気持ちが伝わっているのか、ダンジョンコアは満足げに光を強めた。


『次に、目的ですね。ダンジョンコアの目的は「魔力を集めること」です。ダンジョンは生物に魅力的なもの……例えば食料とか、貴重なものを作ってダンジョン内に置くことで、生物をダンジョンの中におびき寄せます。魔力を持つ生物がダンジョンの中に入ると、魔法の効果で少しずつ魔力を吸い取ることができます。さらに、魔物を作って生物を攻撃、あるいは仕留めることでその生物の魔力を回収するのです……ここまでは分かりましたか?』


 ルルテはコクリと頷こうとしたが頭がなかったため、ふよんと縦に揺れただけになってしまった。

 それでも肯定の意を汲み取ってくれたようで、ダンジョンコアはチカっと一瞬光った。


『集めた魔力は、ダンジョンの維持や改良に使われます。新しい魔物や資源を作ったり、ダンジョン自体の形を変えたり、魔物を強くさせたりですね。ということで、ルルテさんのご飯もこの集めた魔力から支給することになります』


「わかった!」


 つまり、ルルテのご飯になる魔力を集めるために、生き物をいっぱいこのダンジョンに呼べばいいということだ。


 ダンジョンコアの話は所々難しかったが、ルルテは自分のご飯に関するところはなんとか理解できた。


『さて、ここからが大切なお話です。魔力を集めるにあたって、一番効率が良い生物は「人間」です。そのためダンジョンには人間が好むもの、欲するものを作ることが多いのです』


「だから、ダンジョンには役に立つものがあるって言われてるんだね」


『そうですね。ですが人間にとって、ダンジョンとは魔物が生息している危険な場所でもあります。そして、人間にとっては、「ダンジョンコア」もまた役に立つものなのです』


 ふむ?とルルテは首を傾げた。火が揺れただけになってしまったが。


『人間はダンジョンに来ると、ほとんどの場合ダンジョンコアも壊して回収しようとします。私が壊れるとダンジョンコアが維持していた創造魔法が消え、ダンジョンは崩壊します。私も、ルルテさんも死ぬことになるのです』


「えぇ!わたし、もう一回死んじゃうの?」


『そうならないために、私達は魔力をたくさん集めて、私を狙う人間を倒せるだけの強さを手に入れなければなりません。ルルテさんには、私達が生き残るために、魔力を集めるのを手伝って欲しいのです。一緒に戦ったり、生物を呼び寄せるにはどうしたらいいか考えたり、ですね』


 うむむ、とルルテは(うな)る。

 つまり、ルルテが生き残って、ご飯をたくさん食べるためには、魔力を集めて、強くならなくちゃいけなくて。


 そのためにルルテは、ダンジョンコアと協力して、戦ったり、ダンジョンを良くしていったりすればいい、ということだ。


「……わたしに、できるかなぁ?」


 ルルテは戦闘した経験など一度もなかった。


 お仕事をするか、寝るか、じっとしているか、しかしてこなかったのだ。虫を捕まえたことはあったが、誰かに暴力を振るったことも、小さな動物を狩ったこともない。

 それに、ルルテはまともな教育を受けたことがないため、頭も良くない。


 ルルテは、自分にできることなど何もないのではないか、と考え始めていた。


『大丈夫ですよ。人魂の戦い方は今度教えますし、魔力を投資すれば必ず強くなります。それでも苦手だったら戦闘は他の魔物に任せて、いざという時に私を守れるようにしているだけで大丈夫です。ダンジョン経営も、私のお話相手としていてくれるだけでも十分役に立ちます。ほら、今もこうしてルルテさんが質問してくれたおかげで、これからするべきことをあらためて認識できましたよ』


 ダンジョンコアが優しく輝き、ルルテの体を包み込む。


「ほんとうに?」


『えぇ』


 ルルテはぎゅっと体に力を込めた。

 ぼわ、とほんのり青い炎が大きく燃え上がる。


「わかった。わたし、がんばるね!」


『よろしくお願いしますね』


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