争闘 part.1
ヒロ――「な、なんでバレた……!?」
ドン――「ククッ……お前らの仲間らしきジジイがな、俺の船の鍵を盗もうとしてたんだよ。怪しいと思って来てみりゃ――案の定リトのところにお前がいたわけだ。……あの日以来だな、クソガキ!!。二度も俺を裏切るとはいい度胸だ。ぶち殺しってやる!」
ヒロ――「……ハタのやつ…、何やってくれてんだよ……!」
リト――「ヒロ!やるしかないわよ!こいつを倒すのよ!」
そう言うと、リトはヒロの耳元で作戦を囁いた。
ヒロ――「……わ、わかったぜ!」
次の瞬間、リトの掌から放たれたのは――眩い閃光。
それは太陽のようにドンの視界を焼き尽くした。
ドン――「ぐわぁッ!何しやがる!」
視界を奪われたドン。その隙を突き、ヒロはジロから託されたナイフを振り下ろす――。
刃がドンの肉を裂いた。
ドン――「ぐっ……!? この俺に、傷を……!? ガキの分際でぇぇ!」
怒りに歪む顔。次の瞬間――「まずはリトからぶっ殺してやる!」と、光を振り払うように跳びかかる。
ヒロ――「リト!気をつけろ! あいつはSネーム持ちだ!」
「……あいつの能力は《五眼》。目を三度見た者の精神を狂わせる。だが制約がある――大人にしか効かねぇ! しかも両目はそれぞれ一回判定、偽物の目は全部で一回分だ!
あいつはそれを利用して奴はポスターやサーカスで目をばら撒き、カウントを稼いでいたんだ!……裏カジノで人を操るためにな!」
ドン――「フン!よく知ってやがるじゃねぇか! だが知ったところで意味はねぇ!」
怒号と共に殴りかかるドン。光が届かぬ死角からの一撃――ヒロの肋骨が数本折れた。
ヒロ――「……ゲホッ……やってくれたな!ゴミ野郎が……!」
血を吐きながらも、ヒロの目には闘志が燃え上がっていた。
「ブチ切れたぜ……!」
――そのとき。ヒロの姿が揺らめいた。
ヒロ――「《Wander》!!」
ドンの目に映るのは、何人ものヒロ。
ドン――「!? この技……まさか、あいつの……?いや、気のせいだ……!」
次々と襲い来る残像。殴っても殴っても空を切り、逆に傷だらけになっていくドン。
焦燥の中、ドンは叫んだ。
ドン――「……このままじゃ……やべえな!」
筋肉が膨張し、全身が獣のように変貌していく。目が妖しく緑に輝いた――。
ヒロ――「まさか……《Sネームの覚醒》だと!?」
リト――「っ……!!」
だが警告は遅かった。光を放っていたリトの視界に、ドンの瞳が映り――リトはその場で気を失った。
ヒロ――「くそっ! リト!!」
ドン――「ガキ……次はお前の番だ」
巨躯が迫り、ヒロの体は地面に叩きつけられる。
立ち上がれない。――その時。
突然、奥の茂みが大きく揺れた。
空気を震わすような低い唸り声――。
「――――グルゥゥゥォォォォオオオオオオオッ!!!」
それは獣の雄叫びではなかった。大地そのものが震えているかのような、魂を揺さぶる咆哮。
ヒロの心臓がドクンと跳ね、ドンの背筋が粟立つ。
茂みを突き破って現れたのは――黄金のたてがみを揺らすライオンだった。
ただの獣のはずなのに、その目は知性を宿し、王者の威厳を纏っていた。
ドン――「はぁ? サーカスで飼ってる獣が逃げてきやがったか……!」
もちろんドンの能力は動物に効かない。
ライオンが注意を引いたその刹那――。
「今だぁぁああああ!!!!」
ヒロは目を塞ぎながらドンの背後に周り、ジロのナイフが、ドンの背中を深々と貫いた。
致命の一撃。まるで、雷に撃たれたかのような衝撃がドンには入った
ドン――「お、お前……う、うおおおおぉぉぉッ!」
絶叫と共に全身から無数の眼球が噴き出した。
足からも頭からも。個数には限度が無く、100個はゆうに超えていた。
ヒロ――「……ッ!?」
回避不能――ヒロの瞳に、ドンの《五眼》が映る。
全身が痺れ、意識が闇に沈んでいく。
ドン――「はぁ、はぁ……クソ痛ぇじゃねぇかガキが……。だが……まだ遊び足りねぇ」
拳が振り下ろされる。
一撃、二撃、三撃――その攻撃はヒロの体中を真紅へと変えた。
殺さぬように、ただ苦しませるために。血飛沫が舞った。
そのとき――。
リト――「やめてぇぇッ! もうそれ以上はやめて! ドン様の所に戻るから!ごめんなさい!お願いだから!」
ドン――「……戻る場所? フッ、裏切り者にそんなもんは最初っからねぇよ。お前もここで死ぬんだ」
リトの心に戦慄が走る。もう何を言っても意味は無いのだと。ドンは最早、制御が効いていない状態だった。――目の前の怪物は、もはや“人”ではなかった。
ドン――「最後は……このガキのナイフで心臓を刺してやる。自分の刃で死ぬ感覚……味わってみろやぁ!」
ナイフを握るドン。だが――その瞬間。
……違和感。
足技。ナイフ。さっきからドンに蘇る''ある人物''の記憶。
ドン――「お、思い出した……トラウマが……! な、なぜ……こいつが、あいつの技を……!?」
瞳に狂気が走る。
「いや…ならばもっと痛めつけてやる! 苦しみ抜いて殺してやるよぉぉぉ!」
その瞬間だった。
――空が裂けた。
夜明けを迎えるはずの空が、轟音と共に黒く覆われる。
???――「……ドン……お前を待っていた……」
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