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【EP2】誘い

門限少し前玄関に滑り込む

「もう、ギリギリなんだから」

母親の一言に改めて思い出す。門限遅れたら夜遊び禁止。ライブに行けなくなる。 

「気を付けます」

部屋に戻り濡れた服をハンガーにかけお風呂場に移動する

夏とはいえ雨に濡れた体はすっかり冷えていた

顔半分まで湯船につかりブクブクと息を吐くとラベンダーの香りが浴室全体を覆う

「うーん」と声を出し背伸びをした

持ち込んだスマホで今日のバンドの曲を聴く

ピコン

漣さん??

-門限大丈夫だった?

*ギリギリ大丈夫でした

-今日はほんまにありがとうな

*いえいえたいしたことありません

漣からのメッセージに緊張しながら文字を打ち込む

-お礼っちゃなんだけどなんやけど、ライブに行かへん?

(え?ライブ?)

*いつですか?

日付は来週だった

場所は新宿で一番大きなライブハウス

-空いている?

*空いています

-じゃ、楽屋口で待ち合わせね

*楽屋口ですか?

-うん楽屋口5時にきて

まるでライブハウスの中に居るような言い回しに違和感を感じた

*わかりました

湯船につかり過ぎたのか、それとも連からの誘いを受けたことなのか心臓がどきどきしている

濡れた髪にタオルを巻いて部屋に戻る。何度読み返しても漣からの誘いだった

「おっはよー!佳代」

今日は明後日から始まる合宿と言う名の撮影打ちあわせ

佳代は部室の椅子を私の前に置き

「鈴ちゃん、夏休みの部活だっていうのに朝からテンション高いね」

椅子に座る

「そう?」

「何かいいことあった?」

「まあね」

「何よ?」

「昨日ね、駅の地下道でイケメンに出会ったの!」

私が少し興奮気味に話し始めると、佳代はすかさず反応してきた。

「えっ!?どんな人!?どんなシチュエーションで!?」

「うんとね、長身で、背中まである黒髪でね、とにかくカッコいいいの。レザーパンツに白いシャツで、サングラスかけてて……なんか芸能人みたいな雰囲気だったの!」

昨日あった出来事を話した。

まぁ私が話したかったのだけど

「ええっ!?りん、もしかしてその人にナンパされたとか?」

「違うの、ナンパとかじゃなくて、なんかちゃんとした感じだったんだよ!」

そう言いつつ、頬が自然と緩むのを感じた。佳代はじっと私の顔を見つめると、からかうような笑みを浮かべた。

「なんかすごいニヤけてるけど、これってもしかして……惚れちゃった?」

「べ、別にそういうんじゃないってば!」

反論しようとするものの、言葉が妙に弱々しくなってしまう。それを見た佳代は笑いをこらえきれず、声を上げた。

「いやいや、りんがこんなに浮かれるなんて珍しいよ!で、その人の名前は?」

「……(れん)って言ってた。」

「漣かぁ。名前からしてカッコいいじゃん!」

佳代の勢いに押されながらも、私は少しだけため息をついた。

「取りあえず来週のライブで話してみてからかなぁ」

「りんが直感でいい人って思ったんでしょ?ならいいんじゃない?」

佳代の真剣な表情と言葉に、私は少し考え込んだ。確かに、漣に対して抱いた第一印象は悪いものではなかった。むしろ、もっと知りたいという気持ちが心のどこかにあったのだと思う。

「……そうだね。」

「そうそう!りんがその気なら全力で応援するよ!」

そんな様子を見て、にやける男が一人森川准

「なんだったら、俺どうですか?もちろん俺の返事はイエスですけど」

「あはははー。それはない!」

私は即答した。森川は苦笑いする。

「花宮先輩、俺のこと全くタイプじゃない?」

「うん!」

森川はいい男だ。だけど私の好みからは外れる。カッコいいではなくかわいいのだ

笑いながら私は答える。森川は少し凹んだ様にうなだれた。

「准ちゃん玉砕」

佳代が大笑いしながら森川准の肩を叩く

「でも、俺諦めませんから。花宮先輩!」

「あははー」

私達は笑った。その時、私のスマホが鳴る。ラインの着信音

「だれ?漣さん?」

佳代が聞いてきた私は別の名前を返す

「原先輩」

*来月の14日って空いてる?

-空いてますよ、ライブのお誘いですか?

*ルナリアのライブ行かない?

-取れたんですか?行きます、行きたいです!

前々から行きたかったライブの誘いに即答で答える

先輩の聞く音楽は私も好きな曲が多く、この日誘ってもらったバンドの曲も私の好みに合っていた。そして、原先輩のイチ押しのシーラがいるバンドである

佳代も先輩から曲を聞かせてもらっているが私とは趣味が違い一緒にライブに行くことはない。

「ルナリアってなかなかチケット取れないでしょ?」

「うん、私もパソコンの前で時間ぴったりに購入ボタン押したけど無理だった」

「そんなプレミアチケットどうやって手に入れたんだろう?」

「取り合えず聴きに行けるのが大事」

「相変わらず鈴は曲を聴きに行くんだね」

「昔、原先輩に連れて行ってもらったライブがあったんだけど、事前情報が顔だけでね。まあ、私好みの顔立ちだったから行ったのよ。小さなライブハウスで、楽屋口?裏口にはいっぱい女の子がいて、入り口にいる子よりも多かったの。誰かが裏口に入っていく度に、本当に黄色い声が上がって、私も原先輩の横でそれを見てたのだけど、確かにカッコいいんだけど…演奏を聞いたら」

「好みじゃなかった?」

「好み以前の問題。下手なのそれ以来原先輩には曲だけ教えてもらってる

「鈴はゴスロリが好きだから、ヴィジュアル系が好きだと思ってた」

「何その偏見」

笑いながら佳代の話を聞いていた

「たまたま、私の好きな曲がヴィジュアル系だったってだけ」

「ほうほう」


「はいはーい始めるよー」と顧問の生島先生が声を上げる

「今年はホラーで行くんだけど、合宿所にしてる宿の近くにいい感じの川があるのでその辺りどうかな?」

「この間、ロケハン組んでその辺り見たんだけど、いい感じよ」

「了解」

「脚本はできてる?」

「細かい描写は現場見ないとわかんないけど、一応できてる奴は美月に渡してる」

「美月先輩絵コンテとか切ってもらえます?」

「任せて、脚本はもらってるし行けるっしょ」

役割が決まっていたため、打ち合わせはスムーズに進み、お昼を食べて2時過ぎに解散した。

毎年、放送部は文化祭で映像作品を発表している。私たち3年はその発表をもって引退する。


「今年の1年はすごいよねー昼放送FMラジオみたいにしちゃって」

「うんうん、体育祭も実況とか入れちゃってこの先楽しみだね」

私と佳代は大きくうなずき一年生を眺めた

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