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颯真の心配事

「るうたぁ!まだ無事か?」

 いつも通り俺に話しかけに来てくれる颯真の第一声は心配のセリフで始まる。お昼を新騎先輩と食べるようになってからは毎日声をかけてくるようになった。

「あ、うん。大丈夫だよ?」

 挨拶を飛ばして返事を急かしてくる颯真に後ずさりしつつも安心するよう返答をする。

 「先輩だよ。新騎先輩!きっと今日も来る。昨日聞いちまったんだよ。」

 颯真は廊下の様子をうかがいながら言葉を続けた。

 「よく聞けよ。あの人は完全に琉詩を狙ってる。例えばな、先輩がライオンだったら、琉詩はネズミだ。確実に食われる。ほんとになんかあったら言えよ?」

 「ネズミ…??」

 颯真は、はじめは憐みのような顔で様子うかがっていたものの、後に多少の呆れへ。そして今日は焦燥感を含みながら荒れているというように変わっていっていた。

 颯真は新騎に連れていかれる琉詩を見送り、放課後には新騎から話を聞き出しているらしい。

 時計と俺とを交互に確認しては、俺の肩に手を置いて必死に口を動かしていた。俺が新騎先輩の獲物になっていると口足らずな言葉で説明をする。眉を顰め、頬に空気をためて下唇を突き出すという崩壊寸前の顔をする颯真つい見つめてしまっていた。開いた口と瞬きが少しの間止まらなかった。

 颯真が心配しているのは俺が新騎先輩とは正反対な性格や生き方をしているからだろう。新騎先輩と一緒に居る時間が増えれば、先輩と俺が一緒に居ることはおかしいことは嫌というほど思い知らされていた。最近は先輩に失礼なことをしているとは分かっていても、近くを歩くことが難しくなっていた。



 騒がしかった教室も一人の一言だけで静まり返る。誰もが思考を持っていかれた。

 「るうちゃん。お昼いこ。」

 決して大きな声を出したわけでは無い。しかし、誰もが惹きつけられるその声。瞬時に先輩が来たのだと理解した。

 「は、はい!」

 返事と共に席を立つと、日常となった行動を変わらず行う。



 颯真はそのまま戻らない顔で琉詩と新騎を見送った。

 もう見えなくなった二人を未だに目で追おうとしている颯真に透き通った声が降ってきた。

 「ねぇ颯真。琉詩君ってなんで黒木先輩と仲いいの?」

 先日琉詩に数学のワークを懇願していた佐々木純菜だった。相変わらず耳の前のS字を垂らしながら颯真に視線を合わせた。

 「先輩が一方的に琉詩に付き合わせてるだけだよ。」

 「まじで?先輩ってああいう方が好みなの?」

 純菜は新騎が自分とは正反対な琉詩を気に入っていることを知って、考え込むように固まっていた。


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