事故
夢なのか、現実なのか
年が明けて結婚式当日を迎えるのを楽しみにしていた和真と柚那ちゃん。同じ家で過ごし、同じ部屋で眠る日々に幸せを感じていた。
最初は泣いていた柚那ちゃんを助けた和真。その子が隣の家に引越ししてきて幼馴染となって何年も一緒にいて恋人となった。
そしてその柚那ちゃんと結婚をして式を挙げられると思うと感慨深い気持ちでいた。何がなんでも守り抜こうと心に誓うと共に柚那ちゃんにも伝えていた。
手をつなぎながら話す柚那ちゃん。
「その気持ちが嬉しいよ。柚那も和真君に何かあったら助けるから遠慮せずに何でも言ってね。約束だよ。たとえ今日が人生の最期になっても後悔のないように生きるのがモットー」
冗談半分、本気半分で聞いていて自分もその気持ちでいなきゃなと考えさせられた和真だった。
そして結婚式前日を迎え、先に柚那ちゃんを見送ってしばらく経ってから和真も家を出て会社に向かう。この時までは何気ない日常が当然ではなく、ありがたいことだとは知る由もなかった。
和真が仕事が終わって家を開けようとすると鍵がかかっていた。ラインを確認をすると柚那ちゃんからは何も連絡がない。珍しいなと感じていた。
仕事の関係で和真と柚那ちゃん、どちらが先に帰ってくるかはその日によって違うものの仕事が終わったら何時の電車に帰るのを報告するように決め事としていたが、この日は家にいなければ連絡が来ない。心配して連絡をするが繋がらない。
スマホの充電が切れたから連絡が来なかっただろうと家に入ろうとしていた和真のスマホが鳴り、知らない番号から電話がかかってきた。最初は電話を出ずにいたが家の中でゆっくりしていたら再びその番号から電話がかかってくる。
「佐伯和真様のお電話で間違いないでしょうか?佐伯柚那様が病院にいるので来て欲しいので早急に来てください」
いまいち状況が読み込めず、家の呼鈴が鳴った。そこにいたのは実夢でスグに病院に行くよと山梨県から車で向かうみたい。
実夢にも何も情報が入っておらず、言われた病院に向かって走っていた。テレビのニュースで何か分かるかも知れないと付けていると事故について流れてきた。
よく聞くと今向かっている病院について話していた。
「午後9時頃、亀戸駅近くで青信号を渡っていた女性が飲酒運転をしていた車に跳ねられて病院に搬送。容態については分かっていない模様で入り次第お伝えする予定」
この時、和真と実夢の頭には同じことが過ぎっていた。これが柚那ちゃんでありませんようにと願いつつアクセルを踏む実夢。
病院に着いて走って柚那ちゃんのいる部屋に向かう。とにかく無事であってくれ、その言葉を呟きながら病室に早歩きで向かっていた。
先生からは今は昏睡状態でこの先のことは何とも言えない、本人の意識が回復をするのを待つしかないという返答だった。
先生に怒りをぶつけても仕方ないと分かりつつもどうにかしてくれと言う和真。その姿を見て宥めようとする実夢がいた。
和真は有給を使って柚那ちゃんの傍にいることを決め、実夢に帰ってもいいと伝えたが友達がこの様なことになっているのに帰れないとラインでしばらく休むことを伝えたと言っていた。
今の願いは目を覚まして何があったか、それを知りたいと思っていた和真と実夢だった。




