中々貯まらない
何故なのか
実夢は頭を抱えていた。それはアルバイトをしても中々お金が残らない。基本的に使うのは移動費がメインでそれ以外はなるべく使わないようにしている。だけど口座にあまり残っていない。
それならばアルバイトを増やせばいいだけだが、バレエ教室を休んで発表会に出ずにアルバイトをしようとまでは思えずにいた。
たまにアルバイトをするキッカケは何だったか。衣装やスグに買い替えなきゃいけないトウシューズ、移動費がかさむのはあるが元々お金を貯めて柚那にイタリアに会いに行くためってことを忘れそうになっていた。
イタリアに行かずとも柚那が来てくれたからいいかなという気持ちもありつつ、来てくれたからには今度自分が出向かなきゃいけないという使命感もあった。
だが今のペースでアルバイトをしていてはそれが叶うのがいつになるのやら。そもそも高校生の間にそれが出来るのか分からないレベルであった。
それでも接客や調理をすることは楽しいし、バレエが休みの日は何時間でも働きたいと思うくらいだが、働ける時間は決まっているし仮に出来たとしても働きすぎたら税金を払わなくてはならないし難しい。
久しぶりライン電話をかける。
「柚那、元気にしてる?オンライン通学してバレエで世界を駆け巡って大変だけど体調はどう?実夢はアルバイトでお金を貯めてイタリアに行きたいって思っているけど中々お金が貯まらなくてね。残材しているしているわけでもないのにさ」
その気持ちだけで嬉しいよと答えてくれる柚那。
実夢が日本でバレエを頑張っていると思うと柚那も頑張ろうって原動力になるよ。
電話で柚那の声を聞くとホントかわいくて和真君が好きになる理由が分かる。顔もかわいくて声もかわいくてその上優しいって非の打ち所が無さすぎて憧れるって言うのが烏滸がましいくらい。
久しぶりの電話でお互いに時差があることを忘れるくらい喋っていて元気をもらったよ、ありがとうと言っていた柚那。電話を終えていつも元気をもらってばかりなのに元気をもらったって言葉に少しは友達として役に立てていると思うと素直に嬉しかった。
それを聞いてバレエの発表会を観に来てくれている人たちに元気を与えられているだろうか、世界最高峰にいる柚那と比べてしまったらキリがないし、出来ることも限られている。
ならば柚那は柚那。実夢は実夢だと自分で割り切って自分に出来ることをしていくしかない。そのために動画サイトで色々なバレリーナの姿を見て勉強をして鏡越しで取り入れるかどうかを繰り返す。柚那や他の子たちもそうやっているだろう。
自分のレベルアップのためには年齢やプライドなど関係なく上手いと思った子には積極的に声をかけてどういう意識でやっているかなど聞こうと思っていた。




