お客さんとして
別の姿
自分のバレエ教室で使う衣装やトウシューズ、そして遠征の移動費を稼ぐために働くことにした実夢。夢は大きく柚那がイタリアで待っているとスクールバスでその話を聞いていてスゴいなと感じていた。
その話を聞いて実夢の作ったものを食べに行きたいからいつから働くのか。初日に行きたいと懇願をした。だが、初日はまだ決まっていないし慣れてなくてあたふたするのが目に見えてるから頃合いを見てまた伝えるという返事だった。
外食は基本的に友達と出かける時くらいで1人でご飯を食べに行くことをした事がなかった和真。自分にとっても新たな挑戦。って言っては大袈裟だが友達と食べる時とは違う光景が見れるのかなと楽しみにしていた。
アルバイトのシフトが決まり、他人の名前を編集で見えなくした上でラインで送られてきた。今月はあまり出勤出来ないから来月行こうかなと追いラインの形で送られてきた。
家からアルバイト先まではさほど遠くない。だが、アルバイトを終わってから宿題や予習に課題に追われる日々で基本的にスクールバスの中では寝かせてあげるようにはしていた。
この上でバレエも週に何回も通っていると考えると頭が上がらない。高校になればテストで平均点以下になると赤点になると聞いたことがある。
そうなるアルバイトやバレエを優先することが出来ないけど、大丈夫なのかと不安視していた和真。そこまでアルバイトのシフトが入っていなかったからなのか、高校入学初の定期テストではクラストップにいたと聞いた。
たとえアルバイトのシフトが少なかったとはいえど、バレエ教室と並行してやっているのにそれでトップの成績はスゴいという言葉でしか表現が出来ずにいた。
バレエ教室で実夢と同じクラスメイトに話を聞いてみると、実夢は丁寧にノートを取っているだけでなくて復習と予習までしているから自分が何しているのかって思うくらいだよと言っていた。
以前、実夢が柚那ちゃんと比べて追いつき追い越せの気持ちでやっていたのが今度は比べられる対象になっている事に友達と誇らしいと感じていた。そのことを実夢に伝えた。
するとこう答えた。
「そんなこと言ってたの?嬉しいけど照れくさいな。今はホント中学校時代の復習に少し手を加えたような感じだからね。大変なのはここから」
そう謙虚に話しているが、決して勉強が得意ではない和真からしてみれば瞬間でもトップの頂きに立ったのスゴイことだし、自慢してもいいのに。
テストが終わってアルバイトとバレエの日々。オーバーワークで倒れないように、ケガをしなように。無理は禁物だよと耳にタコが出来るくらい何度も実夢には口酸っぱく言っていた。




