オファー
努力の結晶
中学校に内部進学出来るのか、基準に達していないからダメです公立の中学校に行くことになるのか。中学校から何科に進むかにもよって通うキャンパスは変わるが内部進学するのか、受験するのかという岐路に立たされている。
そしてバレエと両立をしつつ受験勉強も視野に入れている柚那ちゃん。文化芸術科に進む予定の実夢姉が楽をしているかというと決してそうではない。学校の成績を下げることなく、それに準ずるだけの成績をバレエで残さなくてはならない。
大小関係なくバレエの発表会があれば参加する精神でやっている柚那ちゃんと実夢姉。いつ見てもスゴいと思いつつ、全国に名が広まってしまえば全国の高校から特待生として来ないかと誘われるのではないかと危惧をしていた。
結果だけでなく、見る人が見れば磨けば光る原石だと思われたらそういった話もあるだろう。もしあったら素直に喜べるのだろうか。ずっと一緒に居たのに急にいなくなる寂しさは絶対にある。だけどそこは賜物と言えるだろう。
ある日の発表会後に柚那ちゃんと実夢姉は誰かに呼ばれている姿を目撃をする。これはきっとオファーが来たに違いないと悟った。ホントにそうならば素直に喜んで送り出してあげよう。
泣くのを堪えて外で待っていた。
しばらくして柚那ちゃんと実夢姉がやって来て話があると近くの公園に向かった。
ジャンケンで実夢姉、柚那ちゃんの順番に決まる。
「福岡県にある文化芸術科の学校から特待生として来て欲しいって声があって諸費用全てなしの条件を提示されたけど断った。嬉しかったし、見ている人がいて評価されていると実感したけれど実夢としては大分の地でバレエを盛り上げたい」
その話を聞いて好条件なのに断ってでも大分でバレエを盛り上げたいとのことで自分が同じ立場だったら同じことが出来るだろうかと考えていた。
清々しく答えていた実夢姉とは対対照的に複雑な表情を浮かべている柚那ちゃんがいた。言うかどうか迷いつつも口を開いた。
「柚那、通訳の人を介してバレエの発祥の地でもあるイタリアに来ないかって誘われた。行くべきか、行かざるべきか決められなくて……。ずっと一緒にいた実夢や和真君と別れて家族が一緒に行くのか、単身で行くのかまだ分からないことだらけ。嬉しい反面、怖い気持ちもあって……」
和真と実夢姉は目を合わせてイタリアってあのイタリア?長靴のような形をしてピザのだよね?
和真としては幼馴染、いや彼女がイタリアに行ってしまうかどうかの出来事であったがスグに柚那ちゃんに伝えた。
「柚那ちゃんがイタリアに行くのは寂しいのが正直な気持ち。だけど話があったってことは少なからず来て欲しいってことだよね。それなら行くべきだし、今回断ったら同じようなチャンスがいつ訪れるか分からないよ」
自分の気持ちよりも柚那ちゃんの気持ちのことを考えるとそう答えるしか出来なかった。
実夢も同じ気持ちだよと伝える。
すると和真と実夢姉に抱きついて今まで思い出をありがとう。日本で公演があったら絶対に観に来てね。遠くに行っても忘れないで、時差があるけれど定期的に連絡を取り合おうと決めた。




