模擬受験
独自のシステム
修学旅行を終えた拓殖昭成付属小学校5年生と中学校2年生はついこの間まで笑顔にあふれていたのに今度は鬼のように勉強の毎日で悲壮感が漂っている。
テスト内容はあくまでもその学年までの範囲が出るから予習と復習をすれば出来ると思われがちだが、そう単純な問題ではない。
小学生もこのテストに合格が出来なければ自動的に公立の学校に通うことになり、他県から来てる人は地元に戻らなくてはならない。中学生も点数が足りなければ内部進学出来ず、受験をしなくてはならない。
私立の小学校受験や中学校受験と言えば合格すればそのままエスカレーター式に上に上がっていくイメージだが、拓殖昭成付属はそうではない。合格率を半分に設定してあるため、半分は別の進路に考えなくてはならない。そしてまた受験生を募集する。
半分が内部進学で半分が新入生と新陳代謝を図る目的がある。このテストには普通のテストとは違う所があり、各科目の名前欄の上にバーコードがある。
理由としてはそのバーコードを読み込めばテストの採点が数秒で終わる。なぜこのようにしているかというと教員のやることがとにかく多いため。
問題文と答えを作っておけば後は読み込むだけで済む。国語のテストだと作者の気持ちを書くようにと記述問題も少なからずあってこの答えだというものには対応していないようにも思える。
だが、そこは心配無用。その際にこの言葉を用いるようにと予め記載しておく。その事によって区分点がなされる。過去の先輩たちから苦情が来たり、改善して欲しいという声から生まれたもの。
勉強に対して苦手意識の持っていなかった柚那ちゃん。だが、和真は違っていた。今まで勉強したことがないくらい勉強をしてこの日に備えていた。ここでダメだと柚那ちゃんと学校に通えなくなる。その気持ちでやっていた。
よくよく考えれば家は隣だし、窓を開けて手を伸ばせば握手が出来そうな距離だったがそんなことを考えている時間もないくらい必死でやっていた。同時刻に行われたテストは全て終わった。
結果の詳細は構内の掲示板に内定者のみ番号が発表される。まさに受験そのものと言える。勘違いしてはならないのはこれで番号があってもあくまでも内部進学が内定ということだ。
後1年残されており、成績不振になれば今度はホントの受験をしなくてはならないことを忘れてはいけない。スクールバスで番号を確認する和真と柚那ちゃん。それぞれに貼られた番号を見る。
とりあえずひと安心とホッとする柚那ちゃんに対して嬉しさのあまりバンザイをする和真と対象的な感じで無事に内部進学内定を決めた。
この1年、マジで勉強しなくては中学校に通えないと思うと憂鬱になる気持ちになりつつも勉強は出来て損はないと何とかして自分を奮い立たせようとしている和真だった。




