遠足
天気による
色々あってスマホを手に入れることになった和真だった。最初はパステルグリーンのかわいいスマホを持つことに恥ずかしい気持ちもあったが、しばらくするとその気持ちも薄れていく。
スマホを持ってからというものの大変なことばかりで同じ機種で機関音痴な柚那ちゃん。ガラケーが皆無に近いからスマホを買うのは分かるが、使い方が分からずにいて写真を撮ろうとするといつもブレる。だからインカメラで撮るのは和真の役目だった。
近くに公園があれば誰かに撮ってもらったり、私服姿や髪型を変えるだけでなくかわいい制服だからと学校のない日でも持ち歩くほどだ。
何より驚くのはいつもスクールバスを降りてそのままバレエ教室に行っていたのだが、スマホを買ってもらってからというもの家にスマホを取りに帰る。
柚那ちゃんだけならともかく、和真にもスマホを持ってきてと伝えてそこからバレエ教室に向かう。柚那ちゃんがレモンイエローのスマホがかわいいと見せびらかすのは分かるが、なぜか和真もスマホを買ってパステルグリーンだと言う。
和真としては男なのにかわいいものが好きなのかとバカにされるかと思ったら実夢さんや他の子たちの反応は羨ましい、かわいいものが好きな男の子いいと思うよと頭を撫でる。
そしてそれが日常化したのか、和真のスマホについて言う人は誰もいなくなっていた。あとをおうようにスマホを買った女の子たちと連絡を交換もしていた。
ある日、いつものように学校に行くと遠足のチラシが配られて晴れたら高崎山動物園、雨が降れば大分マリーンパレス水族館、通称うみたまごに行くと決まった。当日の天気は曇りになっている。
当日の天気は雨。傘を持ちながらスクールバスに乗りこむ和真と柚那ちゃん。水族館に行くの初めてだから楽しみとテンションが上がっていた柚那ちゃんだった。
スクールバスで学校に着いて今度は観光バスに乗り込む。小学生と中学生全員を乗せた数台のバスがうみたまごに向かって走っていく。
和真と柚那ちゃんは同じことを思っていた。遠足じゃなくて水族館デートならスマホを使えたのにと。現地に着いてすることはまずインスタントカメラを買うことから始まる。
インスタントカメラを売店で買って和真と柚那ちゃんは一緒に回る。手を繋いで歩きたい柚那ちゃんに対して揶揄われるのがイヤな和真だったが、全校生徒に知られれば問題ないとよく分からない理屈で手を繋ぐことになった。
案の定色々言われつつもフル無視してお客さんにペンギンやアザラシ、カワウソ、イルカ、ペリカンとかわいい動物たちとインスタントカメラで撮影をする。スマホを持って改めて気づいたことがある。
インスタントカメラだったらすぐに写真が見れるわけではなく、現像をして初めて確認することが出来るからそれもそれで楽しみだねとニコリと笑っていた。
ひと通り見終わってお土産コーナーで柚那ちゃんはピンクイルカのかわいいぬいぐるみとゴマフアザラシのキーホルダーをお揃いで買って出る。
再び観光バスに乗り込み、学校に戻って来る。
そして観光バスからスクールバスに乗って帰る時に今度また水族館デートしようねと柚那ちゃんは囁いた。




