ついに
新機種
柚那ちゃんはあることで頭を悩ませていた。それは携帯の電源が入らず、充電も出来ないことに。携帯を持っていると言われるとスマホを持っていると思われるがそうではなくて数人しか登録出来ないキッズケータイだった。
何も出来ず、家族に相談をする柚那ちゃん。もう中学生になっていいことと悪いことの分別も付くからスマホを買ってもいいのではと両親が話し合った結果、新しくスマホを買うことを決めた。
その話を翌日、和真にする。
よかったね。これでいっぱい写真が撮れるし思い出を沢山残せるねと話をスクールバスの中でしている。すると思いがけない発言をする。
「せっかくなら和真君もスマホ買おうよ。柚那と色違いでさ。気になっているスマホがいくつかあって今、どれにするか悩んでいるの」
和真からしてみればまだスマホを買うと言っていないし、あるに越したことはないがどうしても必要かと言われたらそうでもない。
話を聞いている限り柚那ちゃんは家族と話し合って買う許可をもらっているかも知れないが、こっちはスマホおろか携帯を欲しいと家族にお願いをしていない。急に強請ると何を言っているのかと言われるのがオチだ。
そのことを柚那ちゃんに伝えた。
「そうだよね、急に何を言っているのかって思われても仕方ないよね。今日はバレエ教室休みだから久しぶりに和真君の家に遊びに行くね。そこでご両親に和真君がスマホを持つ必要性を説明するからね」
強情と言うべきなのか、頑固と言うべきなのか。あって損はないし、後は任せようと決めた。
授業後、帰りのスクールバスを降りるなり急ぐように和真の家に向かった。そんなに急がなくても家は隣なのになと心の中で思っていた。
着替えることもなく家に玄関に入って靴を揃えてリビングに向かう。有給で休みの父と母は久しぶりに見る柚那ちゃんにかわいいお姉さんになったねと話していた。
お茶とお菓子を出して本題に入る。
和真としては自分のスマホが買ってもらえるかどうかという場面になるが今すぐどうしても欲しいって訳ではないために柚那ちゃんがどのような切り口で話すのかに興味津々だった。
話を聞いていてこれで押し通すことが出来るのかと頭の中がハテナマークになっていた。
「和真君にはスマホが必要ですよ。だって柚那と恋人関係で柚那のかわいい制服姿、柚那のかわいい私服を着てのデート、柚那のかわいい晴着や浴衣姿、柚那の発表会のレオタードは誰が撮るのか、それは和真君しかいない」
この会話の中に果たして何度、柚那という言葉が出てきたのか、そしてスマホを必要とする理由が自分を撮ることと言うことにも驚いた。
これで押し通せるのかという顔をしていた。一体家族に何て言ってスマホが欲しいとお願いをしたのか聞いてみたい。同じだったらきっとダメと言われただろうと客観的に見ていた。
和真の父と母は顔を見あって頷いた。
「そういう理由ならいいよ、青春を大事にしないとね。それでスマホを買いに行くのは週末でいいかね?柚那ちゃんの両親にも聞いておいて」
まさかのオッケーサインに和真自身が驚く。こんな自分を撮って欲しいからスマホが必要だという理由で。そして勝手に話が進んで週末にスマホを買いに行くことも決まってしまった。




