人とは違う形で
アブノーマル
家に帰ってきてニヤニヤしている実夢。それが法事から帰ってきた日だけでなく、数日間続いているから何か嬉しいことがあったのか聞いてみた。
「この前、隣の朝比奈実夢さんと将来的に結婚したいって言ってれたのが嬉しい。先に言っておくけど普通のプロポーズじゃあ面白くないし、ありきたりなのはイヤだからね。楽しみにしているよ」
柚那ちゃんに似せようと髪の毛を伸ばしたり、服装をそれとなくしていても人の性格まで似せることは出来ない。
海の夕焼けならばいいかなと実夢に提案をする。
「他の人もやってそうだし、実夢があっと驚くような誰もやっていないプロポーズがされたいな。これからはこれでいいかを実夢に確認しないでね」
中々難しい難題を突きつけられた和真。同じ夕焼けでも大晦日なら夕焼けならばいいのではないかと思いつつもと頭を悩ませる。
黄昏の対義語の東雲ならどうかと考えた。
その候補地として東雲の東京湾アクアラインに浮かぶ海ほたるパーキングエリアの展望台でプロポーズをするか、日本で最初に日の出を迎えると言われている千葉県銚子市にある犬吠埼で初日の出のタイミングでプロポーズをするかと考えていた。
距離と時間、どちらが混むかをそれぞれ調べた。
犬吠埼に行くとした場合、前夜から出ないと混雑をして交通規制で車が入れなくなる。そうした場合、向かっても駐車場に停められないどころか交通規制で入れない可能性もあると頭をよぎった。
ならば最初から海ほたるの展望台にしようと決め、プロポーズをしようと考えている人はそうはいないものの初日の出は海ほたるで見ようと考えている人がいるたろうと早めに出ようかなと考えていた。
後は実夢に渡す婚約指輪を買いに行こうと提案をするがその答えに和真としては驚いていた。
「婚約指輪?買いに行く必要ないよ。柚那が付けていたあのかわいい婚約指輪が欲しい。新しいのを買うお金あるなら結婚式の資金や他に使いたい」
今回の場合は特殊なケースとはいえ、我儘というかグイグイ提案してくることに嬉しさと驚きと困惑をしていた。
大晦日に家を出る和真と実夢。運転免許も取ったから運転するよと実夢に言いつつもプロポーズすることに集中して欲しいから助手席にいてとよく分からないことを言っている。
高速道路に乗って海ほたるに着いて日没30分前まで車中泊することにした。この間に年を明けたがここでは恒例のあけましておめでとうと言わず、プロポーズのタイミングで伝えて。
文豪の宮沢賢治の作品、「注文の多い料理店」ではないがあれやこれやと注文が多いなと感じつつ眠る。
しばらくしてアラームが鳴って和真と実夢は展望台に向かう。
陽が明ける東雲に新年の挨拶をしていると太陽が顔を出した。
このタイミングだと和真は覚悟を決めた。
「自分が体調不良で何も出来なかった時に献身的にサポートしてくれてありがとう。結婚してください」
柚那ちゃんに渡した婚約指輪が今度は実夢の元に渡った。本人が望んでいたからいいが、この形でいいのかなと感じていた。




