第48話 【一方、その頃】③ ー楓ー
「おっす! 全国のカエデファンのおまえら、元気にしてたかー」
ウチ、探索者名カエデこと、早乙女颯は笑顔で金蔓共に挨拶した。
「今日はおまえらにビッグニュースだ! なんとこのウチが単独で配信チャンネルを始めるぞ~。とりあえず登録しとけな?」
ドローンに、ビッと親指を立ててみせる。
今日のウチは、鍛えあげたこの肉体を見せつけるために、セパレート型スポーツウェアを身に着けてる。
現代の男どもは弱い。
そして、弱い奴は強い奴に憧れる。
だから、ウチがこのチャンネルで強さを誇示すれば、登録者数はうなぎのぼりって寸法だ。
ウチは同接人数をちらりと確認した。
4人。
《素晴らしいチャンネルだと思います》
《この配信が楽しみで、夜も眠れませんでした》
《優良チャンネルなので、高評価させていただきます》
『と、とりあえず、サクラ……じゃなくて、視聴者を私の所属する会の会員から、3名ほど集めました』
ドローンから響いてきたのは、うちらのパーティ『救国戦隊☆リューショージャー』の支援者になった、儀膳寺というオッサンの声だ。
『……こ、これでよろしかったでしょうか?』
「いいじゃねえか! この調子でガンガン頼むぜ!」
『は、はい』
ウチはドローンに向き直ると、ファイティングポーズをとった。
「本日の目玉はこれだ!」
両手に嵌めた金ぴかのナックルを、ことさら見せびらかしてみせる。
「こいつはSSS級のレア装備でよぉ、どんなものでも砕いちまうって噂だぜ! しかも拳速が10倍になるんだとさ!」
『私が進呈させていただきました。当方のコレクションの中でも値段をつけられないほどの逸品ですが、女性探索者を支援するためには、出し惜しみはしません(キリッ)』
「おう! オッサンありがとな! 『これをやるからホ別5万で』とかわけわかんねえことを言ってきたから、全裸にして軽くボコしたのは、秘密にしておいてやるぜ!」
《《《『…………………………』》》》
ウチはその場で、軽く拳を繰り出した。
シュッシュッ――ボッ!
《おお!》
《はやい!》
ウチの拳闘士スキルとステータス補正が加わり、拳が音より速く空を切り裂く。
「これがあれば、よゆーでボクシングの世界チャンピオンになれるな!」
カカカカ、と大笑していると、リスナーからコメントが入る。
《あのぉ~》
「あん?」
《凶器を使ったら、普通にルール違反になるのでは》
「んなもん、グローブの下に嵌めときゃわかりゃしねーよw」
――勝負の世界は結果がすべて。勝つためには、どんな手段を使っても良し
それがジム経営者のウチの親父の教えだ。
実際、対戦相手の飲み物に下剤を混ぜたりして、親父は何人もチャンピオンを生み出してきたからな。
「ま、ウチは卑怯な手は使わないけど?」
《いや、あなた絶対やるでしょ……》
『こ、こら! 君たちは、サクラに徹しなさい!』
オッサンが指導(?)するのを他所に、ウチはキョロキョロ周囲を見回す。
なんかパンチの威力を試せるもんはないかな~。
ここはダンジョン上層階の通路だ。
突き当りのT字路の壁がなんだかやけに分厚そうに見えた。
お、ちょうどいい。
あれを思いっきり殴ってみよう。
ウチは壁の前に立つと、両手をギュッと握りしめた。
「おらおらおらおらおらおらおらおらおらおらおらおらおらおらおらおらおらおらおらおらおらおらおらおらおらっ!」
ウチのラッシュに、眼前の壁がみるみる削れてゆく。
予想通り威力もすげえ。
このナックル、さいこーじゃん!
――バコォ
ふいに、手ごたえがなくなった。
どうやら、壁を貫通して、向こうの部屋まで繋がってしまったらしい。
「おお、なんか隠し部屋みたいなところを発見したぞ?」
配信映えしそうな事態に、ウチはウキウキしながら、瓦礫を乗り越える。
がらんとした部屋の中央に、正方形のなにかが浮かんでいた。
「なんだあれ?」
それは魔法陣でできた六面体だった。
「この親にしてこの子あり」
「面白かった!」
「この先どうなる?」
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