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84 心配



 受付嬢さんの話に思わず「えっ」という声が漏れた。


「本当なんですか?」


「ええ本当です。チーム『薔薇乙女』の皆様はまだ帰ってきていません」


 珍しいな。エルバニアを出発してから6日は経つのに、まだ帰ってきていないなんて。そんな時間が掛かる程に難しい依頼だったのかな。


 ギルドの仕事で受ける依頼は基本3日以内で終わるはず。Sランクの依頼はもっと時間が掛かるって聞いたことがあるけど、ミレイユ達が受けたのはBランクの依頼。6日経っても帰って来ないなんて、何かトラブルに巻き込まれてなきゃいいんだけど。


「あの、ミレイユ達が受けた仕事の依頼書を見ることって出来ますか?」


「可能ですよ。少々お待ちください」


 受付嬢さんがどこかへ行って依頼書を持って来てくれた。


「依頼書はこちらになります」


「ありがとうございます」


 やっぱりBランク。場所はフォレスディア。

 内容はモリモリイノシシ20体の討伐、もしくは捕獲。


 特に難しい内容とは思えない。ミレイユとバンライだけじゃ苦戦するだろうけど、マヤさんもテリーヌさんも一緒なんだし問題ないはず。1日で帰って来てもおかしくない。


「おーいバニア、何かあったのか?」


 あ、カオスとタキガワさんと持ちドラ達が近づいて来る。

 質問するだけにしては遅いから心配させちゃったか。


「実はミレイユ達がまだ帰ってないらしいの。受けた依頼がこれだよ」


「モリモリイノシシ20体の討伐か捕獲? ふーん、楽勝だな。モリモリイノシシっていやあすっげえ旨かった記憶があるぞ。脂身が旨いんだよ」


「そんなことどうでもいいでしょ。心配ね、ミレイユちゃん達。こんなに遅いとなると、トラブルがあったのかもしれないわ」


 トラブル……か。私達もミズハやガネシアの件があったし、仕事先で何が起こっても不思議じゃない。もし、命の危険があることに巻き込まれていたら、ミレイユ達は……。


「私、様子を見に行こうかな。心配だしさ」


「そうね。誰も死なせるわけにはいかない。死ぬのは、本人も残された人も辛いから」


「まだ命が危なくなるトラブルだと決まったわけじゃねーだろ。モリモリイノシシ食ってて遅くなってんのかもしれねーぜ」


 前半は同意するけど後半は否定させてもらおう。絶対にない。


「行こっか、フォレスディア」


 何が起こっているのか確かめないと落ち着かない。

 困っているなら手伝ってあげるからね、ミレイユ、バンライ。だから待ってて。




 * * *



 水の都スイリュウから北西に位置する森にフォレスディアはあると聞いた。

 今回は仕事じゃないけどゆっくりはしていられない。

 クリスタに出来るだけ飛ばすように頼んだ結果、半日で森に着いた。


 広いなこの森。上から見た時の印象だとエルバニア王都よりも広い気がする。

 受付嬢さんは森の中にフォレスディアがあるって言っていたけど本当にあるのかな。上から見た時は木々しか見えなかったんだよね。こんな森の中に町があるっていうのはちょっと、目で見てみないと信じられないや。


「2人はフォレスディアに行ったことあるの?」


「いや、オレはねえよ。特に行きたくなるイベントもなかったし」


「うわアンタ勿体なー。羨望(せんぼう)の泉に行ったことないんだ」


 さすが『ぷれいやー』だ、知識がある。


「タキガワさんは行ったことあるんだね。どんなところ?」


「特徴はやっぱり静かなことね。人口は少ないし、観光する場所も殆どない。スイリュウやゴールドスとは全然違うわ」


 なるほど。つまり人が少なく、活気がなく、行って面白い場所でもないと言っているんだな。確かに今まで行った町とは違う。エルバニアは人口世界一と言われるくらい活気ある場所だし、ザンカコウも賑やかな場所だった。スイリュウにはみんな楽しく遊べる巨大プール施設がある。ゴールドスにはカジノがある。そういった、行った方がいい場所ってのがないと余所からは人が来ないと思う。どんどん寂れていくだけだ。フォレスディアもたぶん衰退している町の一つなんだろうな。


「さっき言ってた羨望の泉ってのは?」


「本当に知らないんだ。いい? 羨望の泉っていうのは簡単に言うと、アイテムのランダム交換所みたいなものよ。例えばポーションを泉に入れたらハイポーションになった、なんてこともあるの。原理は説明されていないけどね。要らないアイテムの在庫処分が出来るうえ、欲しいアイテムが手に入る可能性まであるんだから凄いのよ」


「マジかよすげーじゃん!」


 な、なんじゃそりゃ……。世の中って不思議なことがあるもんだねえ。

 アイテムを別のアイテムに替えられるってことはもしかして、その辺の石とか入れても別の物が出て来たりするのかな。クリスタのご飯、煌めく水晶を買うのはかなりの出費だし、タダで手に入るならすっごく嬉しい。


「まあ殆どは普通の石が出て来るんだけどねー。レアアイテムの排出確率2パーセント以下だし」


「「期待して損した」」


 でも面白いからフォレスディアに着いたら試してみよう。

 ……試せるような状況なら、の話だけどね。

 フォレスディアに行く理由はその羨望の泉とやらでも観光でもないんだ。

 ミレイユ達の様子を見に行くのが一番の目的なんだから。


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